1980年代

橘いずみ「1982年の缶コーラ」13歳の少女の焦りと苛立ちの夏

「橘いずみがトレンドに上がっている」と、嫁が言った。

何事かと思ったら、夫(映画監督)が話題になった余波らしい。

映画監督はまったく知らない人だったので、なんのこっちゃという感じ(笑)

橘いずみはショートカット女子だった

まあ、エロい夫のことはさておいて、橘いずみは、1990年代の前半、僕の中で最も大切なミュージシャンの一人だった女性だ。

懐かしすぎる~。

<女・尾崎豊>橘いずみがデビューしたのは、1992年のことだ。

何かのテレビ番組で、彼女のライブ映像を観たことが、きっかけだったような気がする。

「失格」「バニラ」「ハムレット」、、、

早速、彼女のCDを買ってきたのは、橘いずみがショートカット女子だったから(笑)

当時の橘いずみはショートカット女子だった当時の橘いずみはショートカット女子だった

最初はビジュアルに惹かれた橘いずみだったけれど、彼女の歌はストレートに僕の心に響いた。

内省的で感傷的な歌詞をエキセントリックに叫ぶ彼女は、まったくもって尾崎豊のようだったしね。

1994年の夏と「1982年の缶コーラ」

1994年、橘いずみは3枚目のアルバム『太陽が見ているから』を発表。

その1曲目の「1982年の缶コーラ」は、僕にとって、その夏最大のフェバリットソングとなった。

橘いずみは1968年12月生まれだから、1982年の夏、彼女は13歳だった。

「1982年の缶コーラ」は、彼女の13歳の夏を歌った<夏歌>だ。

君の車はエアコンがきいてる
だけどスピードが出ない
マリンブルーで外国製で
だけど定員はたったの二人
渋滞の高速で立往生
君は汗をかいて いらついてる

地下鉄の階段を駆け下りて
閉まるドアをこじ開けて
押し出され 薄い酸素分け合い
空を探して焦ってる
急ぐ用事もないのに慌てて
人の背中を憎んで歩く

悪いのは君のせいじゃない
悪いのは君のせいじゃない

暑くてとてもやり切れないから
赤い缶コーラ盗んで
一息に飲み干して笑ってる
仲間たちと顔見合わせた
喉元に突き上がる苦しさを
ずっと我慢してた十三の夏

悪いのは君のせいじゃない
悪いのは君のせいじゃない

右から見た自分が好きだから
いつも左側に立ち
余裕などひとつもないのに ただ
与えることだけ考え
好かれたい愛されたい そのために
人を傷つけ うなだれてばかり

悪いのは君のせいじゃない
悪いのは君のせいじゃない

橘いずみ「1982年の缶コーラ」

「♪暑くてとてもやりきれないから赤い缶コーラ盗んで、一息で飲み干して笑ってる仲間
たちと顔見合わせた~」というフレーズは、ほとんど尾崎豊の世界だ

盗んだバイクで走り出した尾崎に比べれば、缶コーラくらいかわいいものだけど、なにしろ、尾崎は15歳、橘いずみは13歳だったんだから仕方ない(まして、橘いずみは<13歳の少女>だった)。

「悪いのは君のせいじゃない」と叫ぶ純潔性

「1982年の缶コーラ」というタイトルは、村上春樹みたいで文学的。

歌詞も隅々まで洗練されていて、思春期の女の子の焦りや苛立ちを、具体的な言葉で再現している。

右から見た自分が好きだからいつも左側に立ち」なんて、きっと尾崎には書けなかっただろう、女性らしいフレーズ。

「好かれたい愛されたいそのために人を傷つけうなだれてばかり」あたりになると、いかにも<女尾崎>の本領発揮といったところだけど、若い女性が歌うからこそ、尾崎とは異なるメッセージが届くような気もした。

「1982年の缶コーラ」の歌詞カード「1982年の缶コーラ」の歌詞カード

まあ、この曲の最大のポイントは、何と言っても「悪いのは君のせいじゃない」という短いフレーズに尽きるのだけれど。

自分が悪いと分かっているからこそ、「悪いのは君のせいじゃない」と叫ぶ純潔性。

あの頃、僕は、橘いずみが本当に好きだったんだ。

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kels
ちょっと懐かしい本や雑誌、CDの感想を書いています。好きな言葉は「広く浅く」。ブックオフが憩いの場所です。