2000年代の写真ブームを支えたトイカメラブーム。
当時は、トイカメラを専門に使う<トイカメラマン>なる職業も登場しました。
今回は、そんなトイカメラマンが作った写真集をご紹介します。
トイカメラブームとは何か?
ゼロ年代の写真ブームを語る時に、忘れてはならないキーワードが二つあります。
ひとつは「フィルム写真」、もうひとつは「トイカメラ」です。
フィルム写真は、新しい写真の世界を切り開くツールとして、特に若い世代に積極的に支持されて、当時の写真ブームを牽引する大きな原動力となりました。
フィルム写真を撮影するフィルムカメラには、大きく二つの種類があります。
それは、「普通のカメラ」と「トイカメラ」です。
「普通のカメラ」は、カメラメーカーが製造する一般的なカメラのことで、単にフィルムカメラと言えば、この普通のカメラのことを意味します。
一方の「トイカメラ」は「おもちゃカメラ」という名前のとおり、機能的には「普通のカメラ」よりもずっと劣る、簡易的なカメラでした。
しかし、トイカメラで撮影した写真には、独特の味わいがあるため、フィルム写真を好む人の中にも、あえてトイカメラを選んで使う愛好家が増えていきます。
ゼロ年代の写真ブームは、本格的な一眼レフカメラで撮った写真と、おもちゃのようなトイカメラで撮った写真とが同列で語られる、新しい時代の写真ブームでした。
トイカメラの魅力とは何か?
トイカメラの魅力は、普通のカメラでは撮ることのできない、味わいのある写真を撮影することができることです。
その味わいというのは、ピントがうまく合わなくて何となくボンヤリとしていたりとか、写真の隅の部分が何となく暗くなってしまったりとかいうものでした。
本来、これはカメラの機能が十分ではないために生じる不具合なのですが、トイカメラ愛好家の人たちは、この不具合を味わいと受けとめ、よりトイカメラらしい写真を撮ることに夢中になったのです。
かつて、写真は、できるだけ上等の(高級な)機材を使うことが推奨されたカルチャーですが、トイカメラは、雑貨程度の値段で入手できるものも多くありました。
お小遣いで気軽に始めることができたことも、トイカメラが若い人たちに支持された、大きな理由のひとつだったと思います。
もちろん、トイカメラの中には、ロシア産のLOMO LC-Aのように、普通のカメラと同じような価格で販売されているものもありましたけどね。
気軽に始められるということで、SNSやブログなどを通じて、同じ趣味を持つ人たちと交流できることも、ゼロ年代のトイカメラブームを支える一因になっていたような気がします。
世代的にトイカメラ愛好家の多くがネットユーザーでもあったことから、トイカメラで撮った写真は、お手軽に共感を得ることのできるアイテムとなっていたんですね。
こうして盛り上がったトイカメラブームは、やがて、プロフェッショナルのトイカメラマンを輩出するまでになります。
日本でも特に著名なトイカメラマンの一人が、今回ご紹介する<雨樹一期>さんでした。
トイカメラマン・雨樹一期って誰?
雨樹一期(あまきいちご)さんは、日本のトイカメラマンです。
1977年5月14日生まれのAB型で大阪出身。
デザイン科在学中に「国際学生照明デザインコンペ」入賞するも、卒業後はデザインの道に進まず、プロラボに勤務。
傍らで詩や写真を独学で学び、LOMO LC-Aを中心とするトイカメラで、日常スナップを撮り始めます。
2008年にはトイカメラの写真集『しあわせの観覧車』を発表。
おそらく、日本では最も初期から活躍している、プロのトイカメラマンの一人だと思われます。
今回は、管理人の手元にある二冊の写真集『しあわせの観覧車』と『一期一会』をご紹介したいと思います。
『しあわせの観覧車』とは?
『しあわせの観覧車』は、トイカメラマン・雨樹一期さんの写真集です。
正確には、雨樹一期さんの写真に、コトバ家の吉井春樹さんが詩を寄せている、写真詩集のようなものですが。
本書は、2008年9月、創英社から出版されました。
(2022/05/18 01:22:54時点 楽天市場調べ-詳細)
『一期一会』とは?
『一期一会』は、トイカメラマン・雨樹一期さんの写真集です。
『しあわせの観覧車』と同様に、雨樹一期さんの写真に、コトバ家の吉井春樹さんが詩を寄せています。
本書は、2009年9月、創英社から出版されました。
(2022/05/18 01:22:54時点 楽天市場調べ-詳細)
トイカメラ写真集の魅力とは何か?
トイカメラ写真集『しあわせの観覧車』や『一期一会』を眺めていると、心がとても落ち着いてきます。
癒しを与えるということは、トイカメラ写真集の持つ、大きな効能だったような気がします。
トイカメラで撮影された写真は、どれもみなノスタルジックな写真ばかり。
初めて見るはずの風景さえも懐かしく、心の奥深いところに染み込んでくるような、淡い感動がありました。
それは「映える」という言葉も「エモい」という言葉も、現在のようにはまだ浸透していなかった時代。
心を刺激するエモい写真が、トイカメラ写真集の中にはたくさんありました。
『しあわせの観覧車』の表紙にもなっていますが、トイカメラで人気の被写体となったのが、観覧車とコスモスの花です。
どちらも青空をバックに撮ることで、トイカメラの魅力を最大限に発揮することができたからです。
日本中のトイカメラ愛好家が、観覧車とコスモスの写真を撮りに出かけていきました。
もうひとつ、トイカメラの被写体として人気のあったものに鉄塔がありました。
当時は、観覧車や鉄塔のような人工物と一緒に、空や雲、草花などの自然を撮ることで、よりエモい写真を撮ろうと、みんな夢中だったんですね。
ブームは過ぎてしまったけれど、トイカメラの持つ魅力は、何ひとつ変わっていないと思います。
エモい写真を撮りたいと思っている方に、おすすめの写真集ですよ。
まとめ
ということで、以上、今回は、プロのトイカメラマン・雨樹一期さんの写真集についてご紹介しました。
トイカメラは、当たり前の日常を気軽に非日常へと変換してくれる、魔法のツールです。
懐かしい感じの写真を撮りたいと思っている方は、まずは、トイカメラの写真集で、トイカメラの世界に触れてみてはいかがでしょうか。