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古谷三敏さん追悼記念「BAR レモンハート」コミックス全巻レビュー(1980年代編)

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漫画家の古谷三敏さんが、12月8日、がんのため東京都内の病院で逝去されました。

85歳でした。

古谷さんの代表作と言えば、1970年代に大ヒットした「ダメおやじ」ですが、僕は、1985年から現在まで連載が続いている「BAR レモンハート」が大好きで、当時からコミックスを買い続けています。

今回は、古谷三敏さん追悼記念の気持ちを込めて、1980年代の「BAR レモンハート」コミックス全巻レビューをしてみたいと思います。

「BAR レモンハート」とは!?

「BAR レモンハート」は、古谷三敏さんの代表作品のひとつです。

コミックスの表紙には「気持ちがすごくあったかい!!」「酒コミック」と記されています。

「酒コミック」とあるように、本作のテーマは「お酒」で、お酒にまつわる人間模様を描いた作品で、うるさすぎないうんちく(お酒情報)がちょうどよい感じ。

主人公は「マスター」ですが、常連客「松田さん(松ちゃん)」を中心としたストーリー展開が多いようです。

同じく常連客の「メガネさん」を加えた中年男性3人組がレギュラーメンバーで、ここに、毎回いろいろな人たちが登場して物語を楽しく進めていく構成となっています。

ちなみに、「BAR レモンハート」は、港にある、ほとんど廃墟と思しき古い倉庫ビルの片隅で営業しています。

古い倉庫ビルの片隅にある「BAR レモンハート」古い倉庫ビルの片隅にある「BAR レモンハート」

BAR レモンハート 1巻(1986年)

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「BAR レモンハート」コミックスの記念すべき第1巻は、1986年2月に発売されました。

第1話「幻の銘酒」(PART1)は、二人のサラリーマンが「BAR レモンハート」を探して回る物語で、ラストシーンで初登場のメガネさんがシーバースの薄い水割りを飲んでいます。

レギュラーメンバー「松ちゃん」の初登場は、第3話「松田さん」(PART3)。

マスターが「松田さん、いつものウイスキーの水割りでいいのかな」と話しかけますが、松ちゃんはブランデーをオーダー。

松ちゃんの酒オンチぶりが見事に披露されていますが、マスター、松ちゃん、メガネさんという、3人の中年男性を中心とするストーリー構成は、ここから始まりました。

お勧めは、第9話「私たちの結論」(PART9)。

福岡へ転勤の決まった夫と、東京に残って仕事を続けたい妻とが、一緒に引越しするか離婚するかで喧嘩をしてしまう話で、二人は初めてのデートで訪れたことのある「BAR レモンハート」を訪ねます。

大人の男女関係がクールに描かれていて、こういう人間ドラマものは、「BAR レモンハート」の中でも、特に大好きな作品です。

『BAR レモンハート』より「私たちの結論」『BAR レモンハート』より「私たちの結論」

大人の恋愛模様を描いた物語ということでは、PART12「待つ女」もいいですね。

フランスで暮らす夫が好きだった「モンタン」を妻がオーダーする、ちょっとミステリアスな作品です。

BAR レモンハート 2巻(1986年)

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「BAR レモンハート」コミックス第2巻は、1986年11月に発売されました。

嫌味なサラリーマン2人組がドライ・マティーニをオーダーしながらマスターをからかうものの、見事に逆襲されてしまうという「マスターのレシピ」(PART16)、アル中で入院しながら最後までジョニ黒を飲んで死んでいった男性を描いた「真冬の夜の夢」(PART17)、若ぶってバドワイザーを飲んでいるけれど、実は日本酒が好きだった「部長の本音」(PART19)など、良い作品がたくさん収録されています。

やっぱり「BAR レモンハート」は、サラリーマンが登場する話が良いみたいです。

お勧めは、超ハードボイルドな「一夜の出来事」(PART24)。

冷えていないシルヴァラードを飲んで出かけていったメガネさんが、港で格闘をして女性を助けた後で、「BAR レモンハート」に戻って来ます。

血だらけのメガネさんが最後につぶやく「今夜のオレにはブラッディ・マリーが似合っている」という言葉が印象的でした。

『BAR レモンハート』より「一夜の出来事」『BAR レモンハート』より「一夜の出来事」

BAR レモンハート 3巻(1987年)

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「BAR レモンハート」コミックス第3巻は、1987年8月に発売されました。

PART30「一夜の酔狂」は、時代劇のコスプレをして、みんなでバカ騒ぎをする物語、最後にメガネさんもヤクザものの恰好で登場。

「BAR レモンハート」の店名の謎が明かされるのは、PART32「レモンハートの酔心地」。

店名の由来となった「レモンハート151」は、世界で一番強いお酒で、お酒に強くない松ちゃんはむせてしまいます。

沖縄出身の若い男女が「どなん」を飲んで元気になる「南の島から」(PART33)はお勧めの作品です。

ドラクエの話題で盛り上がる「ドラクエの仲間たち」(PART40)なんていうのは、いかにも世相を反映していますね。

『BAR レモンハート』より「ドラクエの仲間たち」『BAR レモンハート』より「ドラクエの仲間たち」

BAR レモンハート 4巻(1988年)

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「BAR レモンハート」コミックス第4巻は、1988年2月に発売されました。

強面の男性が実は泣き上戸だったという「I氏の憂鬱」(PART46)、幽霊がプラットバレーを飲みに来る「熱帯夜の客」(PART48)、ボージョレ・ヌーヴォーで自殺を思いとどまる「心残り」など、なかなか変化に富んだラインナップの作品が揃っています。

「BAR レモンハート」って、夏になると決まって怪談的な物語が登場していましたね。

PART51「七つのグラス」は、珍しく「BAR レモンハート」ではない場所が舞台になっています。

お勧め作品は「ロンドン・ニューヨーク 6,500キロ」。

ロンドンとニューヨークへの転勤が同時に決まってしまった夫婦が、別居を決意して「BAR レモンハート」を訪れるという物語で、二人が最後に飲んだお酒はジャック・ダニエルでした。

泣きたくなるくらいに切ない物語です。

BAR レモンハート 5巻(1988年)

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「BAR レモンハート」コミックス第5巻は、1988年(昭和63年)7月に発売されました。

いきなりのお勧めは、松ちゃん失恋シリーズ「北帰行」(PART59)。

ニッカのキングスランドをオーダーした女性と仲良くなった松ちゃんでしたが、不用意に彼女の故郷を訊ねてしまったために、彼女は故郷の北海道・余市町へと帰ってしまいます。

この女性は、レモンハート史上でもかなりの美女で、クリスマスを描いた物語としても、超絶にお勧めの作品です。

『BAR レモンハート』より「北帰行」『BAR レモンハート』より「北帰行」

ちなみに、松ちゃん失恋シリーズは「春のあらし」(PART57)でも読むことができます。

「酒オンチ」のほかに「もてない男」という松ちゃんのキャラクターは、この時期に確立されていたみたいですね。

「地上げ師有情」(PART63)は、バブル時代に活躍した「地上げ師」たちが、「BAR レモンハート」を地上げしようとするものの、「BAR レモンハート」の素晴らしさに気づいて地上げをあきらめてしまうという物語。

中年の地上げ師が「カストリ」を注文するという、なかなか珍しい作品ですが、「カストリ」を飲んだ男がつぶやく「これだ、この味だ」「復員服のままベースキャンプのまわりうろついて、進駐軍にへとばされて、パンパンにばかにされ、わずかばかりの金にぎってヤミ市の屋台で、飲んだ味と同じだ!!」「これ飲んで、わしはやるぞって決心したんだ。その時とおんなじ味だ!!」という台詞は、日本の戦後を象徴するものだと思います。

BAR レモンハート 6巻(1989年)

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「BAR レモンハート」コミックス第6巻は、1989年(平成元年)1月に発売されました。

ちなみに、元号が「昭和」から「平成」へと変わったのは「1月8日」のことで、「BAR レモンハート」コミックス5巻の発売は「1月16日」。

当時の僕は、新しい「平成」という時代に、このコミックスを読んでいたということになりますね。

さて、収録作品の方ですが、小学校の同窓会で約束した友だちと再会できなかった松ちゃんが「しょうがない、あと10年待つか」とつぶやく「約束の酒」(PART71)は、松ちゃんの人柄を語る良い作品です。

ちなみに、松ちゃんの小学校の同窓会は「昭和43年度卒」でした。

定年退職となる父へ「オーシャン・ホワイト」を贈る「おとーさん乾杯!」(PART72)は、ほのぼのと温かみのある家族ドラマ。

かわいい女の子が登場する作品としては、PART74「梅雨明けの笑顔」があります。

レモンハートのカンバンにも、雨は降りそそいでいた」で始まる、まるでハードボイルド小説のような滑り出しもカッコいいです。

PART76「カウチポテトの恋」は、レンタルビデオの映画を通して仲良くなった男女の恋愛ストーリーですが、母の急病で彼女は帰郷してしまい、男性はひとり東京に残されてしまいます。

恋人同士になりかけたところで彼女が去ってしまうという、切ない物語です。

『BAR レモンハート』より「カウチポテトの恋」『BAR レモンハート』より「カウチポテトの恋」

まとめ

ということで、以上、今回は、古谷三敏さんの代表作のひとつである「BAR レモンハート」コミックス全巻レビュー(1980年代編)をお送りいたしました。

こうして振り返ってみると、我ながら「BAR レモンハート」のちょっとクールで切ない物語が好きなんだっていうことが、よく分かりました。

どおりで、30年以上も読み続けているはずです。

皆さんも、初期の「BAR レモンハート」を、ぜひ読んでみてくださいね。

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1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。