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立原あゆみ「BOYS BE 夏くん!!」 15歳の少年の恋愛と性欲

夏になったら必ず読みたくなる漫画ってありますよね。

立原あゆみさんの『BOYS BE 夏くん!!』は、僕にとっては、そんな、夏に読みたい定番コミックのひとつです。

だって、「青春=夏」という世界観を体現した漫画が、この『BOYS BE 夏くん!!』なんですから。

夏に読まなくてどうする?って感じです(笑)

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概要

『BOYS BE 夏くん!!』は、立原あゆみさんによる日本の漫画作品です。

1980年代前半に集英社の「小説ジュニア」や「YOU」で連載され、集英社文庫(コバルトシリーズ)で文庫化(全4巻)されました。

当時「小説ジュニア男子」だった管理人が、小説ジュニアを読む目的のひとつに、この『BOYS BE 夏くん!!』があったような気がします。

当時は「立原あゆみ」という漫画家が、男性か女性かも知らなかったのですが、、、(まさかの男性でした笑)

ちなみに、管理人が全巻持っている立原あゆみ作品は「夏くん」の他に、「麦ちゃんのヰタ・セクスアリス」「本気!」「JINGI 仁義」「あばよ白書」などがありますが、この年齢になっても「夏くん」がいちばん好きです(笑)

タイトルの「夏くん」は、主人公の高校委一年生の男の子「和泉澤夏」の名前から。

「BOYS BE」とあるように、夏くんが新しい何かに挑戦しながら成長していく過程を描いた青春コミックです。

あらすじ

『BOYS BE 夏くん!!』は、集英社文庫の「コバルトシリーズ」から全4巻で刊行されています。

BOYS BE 夏くん!!(1巻)

ぼくのことなんだけどさ
和泉澤 夏 十五歳
ちいさなことでさ
前の学校 退学になっちゃってさ
この学校にひろわれたってわけ
通学には まあ 不可能ってわけでさ
寮生活してんだよね

『BOYS BE 夏くん!!』は、主人公・夏くんの、そんなモノローグから始まります。

遅刻しそうになって、色っぽい女の先生に嫌味を言われたり、禁止されている海水浴をしてお灸を据えられたりと、夏くんはなかなかのやんちゃ者。

ある日、寮生のF先輩が夢中になって制作しているハングライダーを見て、熱中することの楽しさに憧れを感じます。

「いま一番やりたいことはなんだ?」「あの、、、女の子とやりたいす」

青春真っ只中の夏くんは、年上の女性・昭子(18歳・美容師の見習い)と知り合い、彼女の自動車の中で、初めての体験のチャンスを得ますが、「彼女にさわられただけで、THE ENDだった」。

自己嫌悪でむしゃくしゃした夏くんは、F先輩のハングライダーを勝手に持ち出して、空高く舞い上がります。

ハングライダーの操縦方法も知らない夏くんの目に飛び込んできたのは、寮の外壁に大きく書かれた「BOYS BE」の文字。

自分のやりたいことはなんだろう?

「BOYS BE …」の後に続く言葉を探す、夏くんの、そんな青春が始まりました

BOYS BE 夏くん!!(2巻)

渚女子高校の二年生女子・麻子と初めての体験を済ませた夏くんは、アルバイト先の海の家の店長の姪っ子・実子と出会い、二人の女性の間で、気持ちはフラフラ。

精神的にちょっと不安定になっているところに、仲間の「黒」が暴走族「ブラックフィッシュ」に襲われて大怪我をします。

夏くんは「黒」の仕返しのために「ブラックフィッシュ」を闇討ちして、相手を病院送りにしますが、恋人の麻子が他の男の子とデートしている場面を見つけて、気分はかなりメランコリー。

そんなときに「ブラックフィッシュ」の復讐を受けて、今度は夏くんが大怪我をしてしまいます。

病院にお見舞いに来てくれた麻子に、夏くんが別れを告げた言葉は「おれには、麻子しかいなかったんだから、、、」

それは「夏くんらしくない」言葉だったけれど、とにかく「初めての人」「初めての夏」に別れを告げて、夏くんの青春は続いていきます、、、

BOYS BE 夏くん!!(3巻)

夏休みで故郷の街に帰った夏くんは、風の子「風子」に一目惚れ。

八千代台の空まで飛んで、風子に告白するために、夏くんは本格的にハングライダーの練習を始めました。

一方で、スタンダールの「恋愛論」を読みながら、男女の恋愛について本気で考えるようになるなど、夏くんの青春は、どんどんと深まっていきます。

ストリップ劇場の踊り子に恋をした「黒」、人妻と深い関係になってしまった「良介」。

寮生たちは、みな、それぞれの青春に悩み、苦しんでいました。

ある日、夏くんは、とうとう風子ちゃんに告白しますが、風子ちゃんのボーイフレンドになるための条件は、なんと「UFOを見たことがあること」

夏くんの青春は、UFOを探す日々へと進んでいきますが、そんなとき、年上の女性「平塚由美子さん」と、深い関係になってしまいます、、、

BOYS BE 夏くん!!(4巻)

担任のあやこ先生が、診療所の先生と結婚をすることになりました。

結婚式のスピーチをしながら、花嫁衣裳のあやこ先生の姿が恋人・由美子の姿と重なって見えた夏くんは、初めて人前で泣いてしまいます。

最初は肉体だけの関係と割り切っていたはずなのに、風子に後ろめたい気持ちを抱きながら、どんどん由美子に惹かれていく夏くん。

今度、風子に会ったら、必ず言おう。

「UFOなんていないんだよ。あれはガキのころの夢さ」

ところが、由美子との関係が、どんどんと深まっていた頃、真夜中のハングライダーに乗った夏くんは、とうとうUFOを目撃してしまいます。

そして、その話を聞いた由美子が切り出した話は「夏がUFOを見たら、さよならしようと思ってたんだ…」でした。

逆上する夏くんと、「BOYS BE…」の言葉。

大人と少年との間で揺れ動きながら、夏くんはラストシーンへ向かって疾走していきます。

そう、すべての少年が通る道を、夏くんも、また、走り始めていたのです。

読書感想と解説

『BOYS BE 夏くん!!』は、純情な男の子が、恋愛と性欲との間で悩みながら、少しずつ大人になっていく過程を描いた青春漫画です。

『BOYS BE 夏くん!!』のテーマは「性欲」!?

一言で言ってしまうと、この漫画のテーマは、おそらく「性欲」でしょう。

だけど、思春期から青春期にかけての男の子の性欲は、とっても複雑で難しい問題です。

心の中には大切にしたい女の子がいて、だけど、身体は処理しなければならない問題を抱えています。

夏くんは、好きな女の子(風子ちゃん)と体だけの関係の女性(由美子)とで割り切って考えようとしますが、身体だけの関係だったはずの由美子に、どんどん惹かれていきます。

既に、大人になっている由美子は、自分と夏との間に恋愛は成就しないと理解しているので、自分と由美子とのギャップに、非常に苦しむことになります。

「早く年を取りたい」と考える夏くんの思いは、きっと切実なものだったのではないでしょうか。

15歳という夏くんたちの年齢を考えると、性欲処理の相手は、必然的に年上の女性である必要があったのでしょうね。

風子ゃんを好きだという気持ちを持ちながら、別れた麻子ちゃんに誘われたときも、断り切れない夏くんは、男の子として正常な精神の持ち主だったわけですが、純情な年齢ゆえに、あっさりと割り切ることもできません。

健康な15歳の男の子の性欲と、正面から向き合った漫画が『BOYS BE 夏くん!!』なのかなと思いました。

思春期の少年が持つ不安定な精神状態

『BOYS BE 夏くん!!』で描かれていることとして、思春期の少年が持つ性欲の他に、不安定な心理ということがあります。

卑怯な同級生と喧嘩して、学校を退学になった日のこと、最後の日に恋人が挨拶もしれくれなかったこと、年上の女性との初体験に失敗したこと、、、抱えきれないモヤモヤを感じたとき、夏くんは、操縦方法も知らないハングライダーになって寮の屋根から飛び降ります。

溜まった性欲を処理する方法は知っていても、心の不安を処理する方法を知らなかったために、衝動的な行動に出る傾向が、夏くんにはあったようですが、これも純情で健康な男の子の一場面ということでしょう。

恋人が麻子ちゃんが、浮気している場面を目撃してモヤノヤしているときに、暴走族「ブラックフィッシュ」に襲われて大怪我をしてしまう場面も、夏くんの心理的な不安が爆発する様子を見たような気がします。

今の時代の言葉で言うと、ちょっと生きにくさを抱えた、難しい高校生ということになるのかもしれませんが、そのような心の不安定な部分というのは、思春期の多くの少年が抱えていたものだったのではないでしょうか。

その発散の方法が、夏くんの場合、直情的だったわけですが、、、

夏くんの初体験と「原子爆弾の落ちた日」

とは言え、後半になると、物語の方向性が軌道修正されていて、「BOYS BE」というタイトルの持つ意味が薄れていきます。

ジーンズショップの由美子さんとの出会いが、夏くんにとって、あれほどまでに大きな意味を持つことになるとは、その時は思いませんでした。

むしろ、初体験の相手で、ひとつ年上の麻子ちゃんとの関係の方が、ずっと長く続きそうな気がしたくらい。

夏くんが麻子ちゃんと初めての関係を持った日の話は、第1巻「原子爆弾の落ちた日」に出てきますが、初体験をした、その日の夜、広島の平和記念式典のテレビニュースを見ながら、夏くんはひとりで黙とうをします。

僕は『BOYS BE 夏くん!!』全体を通して、ここがいちばん好きな場面で、このシーンがあったからこそ、夏くんの物語が好きになったような気もします。

1983年、広島に原爆が投下されて、まだ、たったの38年。

夏くんが生きていた時代は、そんな時代だったんですよね。

『BOYS BE 夏くん!!』が、最も「夏」という季節らしい瞬間でした。

このとき、管理人は16歳。夏くんも、この年の10月に16歳になっているので、もしかすると同学年? 感情移入が進むはずです。

考えてみると、これは今から38年前の夏の漫画ですが、夏くんが黙とうをした夏は、広島の原爆投下から38年後の夏のことでした。

時代がいくつも通りすぎていくことを感じないではいられませんね。

まとめ

ということで、以上、今回は38年前の漫画、立原あゆみさんの『BOYS BE 夏くん!!』について、全力で語ってみました。

15歳の男の子にとって、恋愛と性欲との複雑な関係っていうのは、いつの時代も変わらないものなのではないでしょうか。

普遍的な物語として、読み継がれていってほしいなあ。

忘れられちゃうなんて、もったいない作品だと思いますよ。

書名:BOYS BE 夏くん!!
著者:立原あゆみ
発行年月日:1983/4/15(第1巻)
出版社:集英社文庫(コバルト文庫シリーズ)

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KONTA
1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。