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ブルックスブラザーズで初めてボタンダウンシャツを買った日のこと

初めてブルックス・ブラザースへ行った日のことを覚えている。気まぐれでも冷やかしでもなかった。その日、僕は白いボタンダウンシャツを買うためだけに、初めてのブルックスブラザースを訪れていた。

ブルックス・ブラザーズの白いボタンダウンシャツは、それが初めてではなかった。初めてのブルックス・ブラザーズは、30歳の誕生日の、嫁さんからの贈り物だった。美しい箱には心温まるリボンがかけられていた。

当時の僕にとって、ブルックス・ブラザーズはまさしく高値の花だった。長い歴史と伝統と誇りを感じさせるブルックス・ブラザーズの店舗は、簡単には入りにくい雰囲気を持っていた。おまけに当時の僕はオシャレなんかに全然構っていなくて、ブルックス・ブラザーズへ行くために着ていくような、きちんとした洋服を持っていなかった。

その頃、僕はいろいろな本や雑誌で見かける「ブルックス・ブラザーズ」というブランドに、まるで子どもみたいな憧れを抱いていた。そこは真の大人のための洋装品店で、真に紳士と呼ばれるような大人でなければ、買い物をしてはいけない神聖な空間だった。そして、当時の僕はそのブルックス・ブラザーズで買い物を許されるだけの紳士として、決してふさわしくはないような気がしていた。

だから、30歳の誕生日に嫁さんがブルックス・ブラザーズの黒い手提げ袋を差し出したときは、本当に驚いた。黒い袋の中には黒い箱があり、黒い箱の中には白いシャツがあった。僕が初めて手に入れたブルックス・ブラザーズのボタンダウンシャツだった。

僕がブルックス・ブラザーズのシャツを欲しがっているということに、嫁さんは薄々感づいていたらしい。そして、ポイントカードを作ってもらったので、今度はお店に行ってみてはどうかと言ってくれた。嫁さんが訪れたブルックス・ブラザーズの店舗は、特別に敷居が高いとは感じられなかったという。

とにかく、僕は贈り物のボタンダウンシャツを実際に着てみて、そのシャツが本当に自分に向いているのかどうかを確認しようと思った。歴史と伝統ある上等のシャツという割に、縫製は意外と雑で、いかにもアメリカ的な匂いを漂わせていた。上品な優等生というよりはタフで誠実な男の子という感じのするシャツだった。

今にして思うと、ブルックス・ブラザーズのボタンダウンシャツは決して高級品ではなかった。ブルックス・ブラザーズのボタンダウンシャツよりも高価なシャツは、世の中にたくさんある。高級なシャツが欲しい人は、わざわざブルックス・ブラザーズへ行く必要もないのだ。

翌月、僕は同じシャツを買いたそうと思って、ブルックス・ブラザーズへ行った。それが、僕にとって初めてのブルックス・ブラザーズだった。初めての店なのに、そこは最初からまるで通い慣れた空間であるかのように温かかった。

僕は、先月買ったのと同じシャツをくださいと言った。若い女性スタッフは僕のポイントカードを受け取ると、過去の購入履歴を確認した。それから、この間嫁さんが買ったものとまったく同じシャツを一枚用意してくれた。

あれから長い年数が経つ。いつの間にか僕はブルックス・ブラザーズの常連客となり、ボタンダウンシャツ以外にもいろいろな買い物をした。そして、どれだけ買い物をしても、ブルックス・ブラザーズは相変わらず憧れのブランドのままだ。

店員が特別なわけじゃない。店で見かける顧客も普通のおじさんばかりだった。それでもブルックス・ブラザーズという名前には、ある種の特別な重みがある。

羊のマークと一緒に僕たちは、何を手に入れようとしているのだろうか。

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1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。