ブルータス「特集 村上春樹(上)」読了。
今号の「ブルータス」は村上春樹特集(上)。
今年の秋は、早稲田大の村上春樹ライブラリーが開設したりと、何かと村上春樹の名前を目にすることが多い
「ブルータス」と村上春樹とは、実は付き合いが長いらしくて、「ニューヨーク炭鉱の悲劇」とか「三つのドイツ幻想」なんていう短篇は、ブルータスが初出だった。
確かに、村上さんの作品には、文学雑誌よりも「ブルータス」のような都市生活者向け情報誌の方が似合っているような気がする(もちろん良い意味で)。
ちなみに、今回の「ブルータス」には、「三つのドイツ幻想」が掲載された、1984/4/15 の「ブルータス」が復刻収録されているので貴重。
インタビューも興味深いが、今回の特集の目玉は、全28ページにも及ぶ寄稿「手放せない51冊の本について」だろう。
村上さんによる「私的読書案内」で、村上春樹の読書体験を追体験したい向きには最高の特集だと思う。
気になったところを順番に拾ってみる。
最初の一冊目はピエール・ガスカール『街の草』で、これは入手が難しそう。
2冊目のブローティガン『アメリカの鱒釣り』は永遠の定番。
5冊目に丸谷才一『樹影譚』が入っている。
6冊目はスティーブン・キングの『シャイニング』だけど、最近はもうフォローしていないそうです。
7冊目、ラッセル・バンクス『Rule of the Bone』は、たぶん国内未訳かと。
9冊目、片桐ユズルと中山容の訳による『ボブ・ディラン全302篇』みたいなのを見ると、村上さんらしい感じがしてうれしい。
コンラッド、ヴォネガットと続いて、14冊目に『木山捷平全詩集』が入っていたので、ちょっとびっくり。
「僕は何を隠そう(別に隠すこともないんだけど)木山捷平のファンで」というところが、非常に印象的だった。
16冊目、『ボーン・トゥ・ラン—ブルース・スプリングスティーン自伝』。
ミュージシャンの評伝には面白いものが多い。
17冊目の『くず屋の息子(カーク・ダグラス自伝)』も面白そう。
21冊目『安岡章太郎集1』は、第三の新人・安岡章太郎の初期の名作短篇が収録されている。
村上さんの場合、国内作家の中では、第三の新人世代の作家の名前を挙げることが多いようだ。
27冊目、ジャック・ロンドンの自伝的長編小説『マーティン・イーデン』。
ジャック・ロンドンの評伝は、26冊目『馬に乗った水夫—ジャック・ロンドン、創作と冒険と革命』も入っている。
29冊目、福永武彦訳の『今昔物語』。
ちなみに、この作品は、岩波少年文庫にも『今昔ものがたり』として入っている。
30冊目はウディ・アレンの短篇小説集『羽根むしられて』。
この辺りのチョイスは、いかにも村上さんらしくて、つい微笑んでしまった。
36冊目は盟友・安西水丸さんの『普通の人』。
やっぱり、水丸作品のチョイスはこれになるんですね。
37冊目、嵐山光三郎『チューサン階級ノトモ』。
39冊目、佐々木マキ『うみべのまち』。
水丸さん、嵐山さん、佐々木マキさんと、フレンズの名前が並んでいるところを見ると、ちょっと安心します。
45冊目は、第三の新人に戻って、小島信夫の初期の名作『アメリカン・スクール』。
さくっと並べただけで、随分たくさんの本の名前を書いてしまった。
気が付いたことと言えば、レイモンド・チャンドラーとかトルーマン・カポーティーとかはランクインしないんだなあ、ということくらい。
僕は、いわゆる「読書案内」が大好きなので、雑誌の特集の中に「読書案内」を見つけると、ついつい夢中になって読んでしまう。
(そして、欲しい本リストがどんどん膨れ上がっていく)。
これから本をたくさん読みたいという人には、絶対にお勧めの特集です。
書名:ブルータスNo.948「特集 村上春樹(上)」
発行:2021/10/15
出版社:マガジンハウス