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俳句甲子園の歴代優秀作品から4句だけを厳選して紹介してみた

8月は甲子園の季節である。と言っても、我々のような文化系の人間にとって「甲子園」は高校野球だけじゃない。

今回は毎年四国で開催されている「俳句甲子園」の歴代優秀作品の中から、僕の個人的に好きな作品を4つだけ選んで紹介してみたい。

俳句甲子園とは

俳句甲子園は、毎年8月に四国の愛媛県松山市で開催されている、高校生を対象とした俳句コンクールのこと。

高校野球と同様に、全国の地方大会(予選)を勝ち抜いてきた選抜チームによって全国大会が行われる。

正式名称は「全国高校俳句選手権大会」。

どうして松山市なのか

どうして、俳句甲子園の舞台が松山市なのか? それは愛媛県松山市が、日本の近代俳句の祖と言うべき正岡子規や、伝統俳句の後継者である高浜虚子を輩出した、日本の現代俳句の聖地とも呼ぶべき街だからだ。

巨匠としては、石田波郷や河東碧梧桐などもこの地域の出身。現代俳句の街である松山市で俳句甲子園が開催されるのは、ある意味必然的なことなのかもしれない。

俳句甲子園の歴史

俳句甲子園の歴史は意外と古くて、1998年(平成10年)に第1回大会が開催されている。このときは、地元の有志による松山の「町おこし」的な意味合いが強くて、名称に「甲子園」を冠しながらも近隣地域9校のみによる小さな大会だった(そのため、名称も「俳句甲子園松山大会」となっている)。

その後、「愛媛県大会」「全国大会」と対象規模を拡大し、現在は全国100校程度が参加する大文化イベントとして定着した。

俳句甲子園の選者

このような文化コンクールは選者によって、その質が問われるところがあるが、俳句甲子園では、第1回大会から坪内稔典(愛媛県出身)を選者として起用するなど、一定以上の水準を確保してきている。

また、1997年に俳句集団「いつき組」を結成したばかりの夏井いつき(愛媛県出身)も、第1回大会で選者を務めている。

これまで俳句甲子園では、中原道夫、稲畑丁子、正木ゆう子をはじめ、多くの俳人が選者を務めている。

歴代優秀作品

今回は、俳句甲子園で発表された歴代優秀作品の中から、僕が個人的に好きな作品を4つだけ厳選して紹介したい。

俳句甲子園の醍醐味は、高校生らしい若い感性と既成概念に縛られない自由な発想力だと僕は思っている。

素晴らしい指導を受けた高校生の作品の中には、プロへと昇華していく過程が感じられる作品もあるが、基本的にはいずれも現役高校生による即興の作品である。

山頂に流星触れたのだろうか

第10回大会(平成19年)の決勝戦における、愛知県立幸田高校の清家由香里さんの作品。

幸田高校は開成高校に敗れて準優勝という結果だったが、その決勝戦で幸田高校唯一の勝利が、清家さんのこの作品だった。

字足らずの散文的な作品だが、文字数以上に想像力を膨らませてくれている。できれば、こういう方の作品を、もっとたくさん読んでみたかった。

カンバスの余白八月十五日

第4回大会(平成13年)で優勝した松山東高校の神野紗希さんの作品で、この作品により神野さんはこの年の個人戦最優秀賞を獲得した。

松山東高校の生徒らしい非常に洗練された作品で、高校生という枠から既にはみ出してしまっているくらいに凄い。

おそらく歳時記の中で例句として取り上げられても良い完成度だと思う。神野さんは現在プロの俳人として活躍中。

夕立の一粒源氏物語

第5回大会(平成14年)で準優勝に輝いた松山東高校の佐藤文香さんの作品で、この作品により佐藤さんはこの年の個人戦最優秀賞を獲得した。前年の神野さんと同じように完成度の高いプロフェッショナルな匂いを感じたことを覚えている。

「夕立の一粒」に着目した観察眼と、そこに「源氏物語」というスケールの大きく異なるアイテムを大胆に対比した技術が、高校生らしくも、あるいは職人っぽくもある。佐藤さんも現在プロの俳人として活躍している。

風船は空の弔い

第5回大会(平成14年)で筆者が個人的に最も印象に残ったのは、この無季自由律の作品だった。弘前学院聖愛高校の佐々木美日さんの作品で、佐々木さんはこの作品で個人戦優秀賞を獲得している。

表現に幼さを感じさせながらも、固定観念にはない自由な発想で風船を詠み上げていて、若さがうらやましいと感じた。「空の弔い」は言えそうで言えない表現だと思う。

おわりに

好きな俳句を紹介するという行為は、実はおそろしい行為である。なぜなら、自分の好きな俳句をさらすことは、すなわち自分自身をさらけ出す行為でもあるからだ。

まして歴史的な評価のない高校生の(しかもコンクール大会で発表された)作品を選び抜くという行為は、大変におそろしい行為だと思う。

自分が選んだ作品は、自分自身の選ぶ力そのものであると思うと、うっかりと好きな俳句を口にすることもままならない。

と同時に、当時好きだと感じた作品が、何年か経た今も好きなままだということを確認したとき、僕は少しだけ自分自身に自信が持てるような気がする。今回紹介した4つの作品は、僕にとって俳句甲子園の永久定番となった。

ABOUT ME
KONTA
1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。