北海道文学の名作。ちくま文庫から出た森田たまの『石狩少女』を札幌のジュンク堂書店で買ってきた。

ちくま文庫から、森田たまの『石狩少女』が刊行された。

札幌の文学好きにとって、これは結構な大事件である。

なにしろ、この作品は、北海道出身者としては初めての女性作家・森田たまを代表する作品であるにもかかわらず、ほとんど入手することが困難な状態が続いていたからだ。

森田たまは、1894年(明治27年)、札幌市中央区南1条東4丁目に生まれた。

現在でも「随筆家・森田たま生誕地」の説明版が、現地にはある。

わざわざ「随筆家」と記されているように、森田たまは、女性随筆家として戦前から戦後にかけて、多くのファンを得た。

中公文庫からは、2008年(平成20年)に随筆選集『もめん随筆』が刊行されている。

「現代の清少納言」と呼ばれるくらい、森田たまは随筆家として有名になったわけだ。

戦後は参議院議員となり、政治活動に従事した。

北海道出身の女性作家としては、かなり派手な人生だったということができるだろう。

一方で、たまの小説は読み継がれることがなかった。

本作『石狩少女』(「いしかりおとめ」と読む)は、札幌の文学を紹介するときには、必ず登場する著名な作品であるにもかかわらず、書籍の入手はほぼ困難だった。

初版は、1940年(昭和15年)の實業之日本社で、1948年(昭和23年)に日本社から「代表名作讀物選5」として刊行されている。

「石狩少女」の単行本が出たのは、それが最後で(おそらく)、その後は『北海道文学全集』(立風書房)などの企画物で読むしかなかった。

その『石狩少女』が、なぜ、今になって文庫化されたのか?

ちくま文庫の帯には「少女小説の傑作」という文字がある。

また、堀越英美の巻末解説では「伝説的な少女小説として古本好きの間で語り継がれていた」とある。

ちなみに、「「海月書林」が牽引した2000年代初頭の女性向け古本ブーム」を補足すると、市川慎子『海月書林の古本案内』(2004)で、森田たまの代表作『もめん随筆』が紹介されている。

中公文庫の『もめん随筆』は、この流れで刊行されたものだった(ような気がする)。

だから、今回の『石狩少女』は、「北海道文学の再評価」というよりは、「伝説的な少女小説の復刊」という流れで文庫化された作品と考えた方が良いらしい。

文学作品というのは、いろいろな評価観点があるものだと、つくづく思うが、いずれにしても、『石狩少女』の文庫化は、札幌の文学好きにとって、ちょっとした大事件であることに間違いはない。

森田たまの地元・札幌のジュンク堂書店では、ちゃんと『石狩少女』をPRするポップが用意されていた。

「北海道を舞台にした少女小説の金字塔、初の文庫化」とか、そんなにすごい作品だったら、もっと早くに文庫化されていて良かったような気もする。

ちくま文庫では、獅子文六とか源氏鶏太とか、昭和文学復刊の流れがあるから、今回の『石狩少女』も、そんな流れに乗ったものなのかもしれないな。

ちなみに、内容は、森田たまの自伝的長編小説で、明治時代の女学生が主人公。

実際の札幌市内が描かれているので、文学散歩にもおすすめ。

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