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野田知佑「のんびり行こうぜ」自由に生きるライフスタイルを学びたい

1990年代のアウトドアブームの頃、野田知佑さんって、本当に人気がありましたね。

カヌー旅とか、真面目に憧れたものです。

ただ、僕は泳げなかったんですよねー(今もですが)。

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ビーパル連載だった「のんびり行こうぜ」

僕が野田知佑という名前を初めて知ったのは、アウトドア系の雑誌<ビーパル>を読んでいるときだったと思う。

ちなみに、月刊アウトドア雑誌「BE-PAL(ビーパル)」の創刊は1981年(昭和56年)。

その頃、野田さんはビーパルの中で「のんびり行こうぜ」というエッセイを連載していた。

1986年(昭和61年)に書籍化されて話題にもなっているから、知っている人も多いだろう。

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「のんびり行こうぜ」という連載タイトルが、いかにも野田さんらしくて良かった。

ビーパルにふさわしく、野田さんのアウトドアライフな日常を綴ったエッセイだったけれど、この中核になっているのが、カヌーで川を下る<カヌー旅>である。

野田さんは、こよなく孤独を愛する人で、たった一人で川下りの旅をすることを好んだ。

カナダからアラスカへと流れているユーコン川を旅するときは、何か月も一人きりだから、本当に孤独を愛する人でなければ、こんな旅はできないと思う。

当時、まだ十代だった僕は、しがらみの多い日本社会で、孤独であるということが、いかにも贅沢なことのように思え、それで野田さんに憧れていたのだろう。

旅をするなら一人旅がいいと、いつも考えていた。

ビーパルに連載されていた「のんびり行こうぜ」 ビーパルに連載されていた「のんびり行こうぜ」

野田さんの旅は、いつでも自由だ。

基本的に一人旅だから、誰かに気を使う必要なんかない。

漕ぎたいときに漕ぎ、食べたいときに食べ、釣りたいときに釣る。

うーん、本当になんて贅沢な生き方なんだろう。

計画に縛られたりしないから、長期旅行の計画も簡単に変えてしまう。

あちこちで道草を楽しむことを優先しているから、計画どおりの旅なんてできるわけがない。

なにしろ、計画どおりにゴールすることを目的としていないから、野田さんの旅は、本気で楽しむための旅なのだ。

雄大なユーコン川を楽しむのと同じ感覚で、野田さんは日本の川を旅することを楽しんだ。

自由である。

釣り人が「ニジマスだ!」「サケだ!」と騒いでいる横で、悠々とウグイを釣りあげてドヤ顔をして見せる。

野田さんの中に、魚の格なんてない。

あるのは、魚釣りを楽しむこと、ただそれだけだ。

キャッチ・アンド・リリースなんていう流行のカタカナを、野田さんはあまり好きじゃなかった。

キャッチ・アンド・塩焼き(「キャッチ・アンド・イート」ともいう)。

釣った魚を食べるところまで含めて、野田さんにとっては魚釣りだったのだ。

勘違いをしていることの多い、にわかな環境保護論者には厳しかったところも、野田さんらしいエピソードである。

今回撮影に使用した『ビーパル』No.47(1985年5月号)今回撮影に使用した『ビーパル』No.47(1985年5月号)

筆者プロフィール
のだ・ともすけ 昭和13年熊本県生まれ。早稲田大学英文科卒。旅行雑誌記者を経て、現在フリーのエッセイスト、そして必殺川遊び人。カヌーという、極めて人間的なフネを愛し、同時に日本の、そして世界の川を愛してやまない人である。最近急激に忙しくなり、活字媒体のみならず、電波にもたびたび登場している。

少年たちにも人気があった野田知佑とカヌー犬ガク

一方で、野田さんには仲間も多かった。

野田さんのもとには、いつでも仲間たちが集まり、そんな仲間たちに誘われて、野田さんは日本中の川下りを楽しんだ。

とりわけ、おもしろいと思ったのは、野田さんが少年たちを連れて、キャンプをしたり、魚釣りを楽しんだりする場面である。

少年たちの同じ目線で話をするから、野田さんは子どもたちに人気があった。

こんな大人を知ってしまったら、普通の大人は大変だろうなと、僕は思う。

多くの大人は、野田さんのように自由ではないし、信念を守り通していきることは難しいからだ。

リアルに自分を貫いて生きている野田さんだからこそ、子どもたちに伝わる言葉も多かっただろう。

野田さんと同じくらいに人気があったカヌー犬ガク 野田さんと同じくらいに人気があったカヌー犬ガク

野田さんとともに人気のあったのが、カヌー犬ガクである。

椎名誠の息子<岳(がく)>少年に由来するこのカヌー犬は、90年代、野田知佑と同じくらい人気があって、知名度も高かった。

野田さんの影響を受けて、犬をカヌーに乗せて旅をする人たちもいたらしい。

野田さんの書くエッセイは、ひとつの哲学書のようなものだと思う。

生きることの正解のひとつの形が、この連載の中にはあったのではないだろうか。

犬のガクについて、本書「のんびり行こうぜ」では「生後一ヵ月半の柴犬の雑種犬」「犬の名前はガク。コロコロして手足が太い少年とよく似ているので、彼の名をつけた」とある。

椎名誠『岳物語』(1985、集英社)の「ハゼ釣り」という話の中に「ガクというのは野田さんが最近飼いはじめたクマのように真黒な鼻面をしたスットンキョウな仔犬である。雄で生後一か月ぐらいという話だった」とある。野田さんは「椎名さんにはちょっと失礼なことかもしれないけれど、こいつを見たときあんまり岳にそっくりなんで、名前つけるんなら即座にガクしかないと思ったわけですよ」と、すこしすまなそうに笑いながら言ったそうである。

ちなみに、椎名誠『岳物語』の冒頭には「私の恩師であり私の息子岳の親友である野田知佑氏にと、野田さんへの献辞がある。

書籍情報
書名:のんびり行こうぜ
著者:野田知佑
発行:1986年7月
出版社:小学館
文庫:新潮文庫(1990)

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ちょっと懐かしい本や雑誌、CDの感想を書いています。好きな言葉は「広く浅く」。ブックオフが憩いの場所です。