ライフスタイル

パラブーツはキュッキュッと音を立てた。まるで靴が泣いているかのように。

男は茶色の靴を握りしめたままで唸り続けている。
真剣な表情の男の指が動くたびに、茶色の靴がキュッキュッと音を立てた。
「めっちゃ鳴りますね」

男は靴の修理職人であり、僕は靴を持ち込んだ彼の客だった。
古い商店街の片隅にある彼の店は、どこから見ても靴の修理屋にしか見えない。
そして明らかに彼は、僕よりも年下の靴職人だった。

「音は買ったときから鳴り続けているんです」と、僕は言った。
「パラブーツに持ち込んで修理をお願いしたけれど、音はますます大きくなって戻ってきました」
男は何もかも了解しているというように、静かに頷いた。

「音は難しい場合が多いのです」
男は僕のパラブーツを両手の指で揉みながら、慎重に音の原因を探っていった。
「この辺りが怪しい」

彼の話によると、音は靴と靴底との接着面の辺りから生じているらしい。
音の発生場所を突き止めた彼は、今では自由に音を鳴らすことができるようだった。
彼の指の動きに合わせて、僕のパラブーツはキュッキュッと音を立てた。

音の発生場所を突き止めてしまうと、彼の関心はそこで終了したらしい。
「革靴は非常に複雑な作りをしています」
ミステリー事件が最終局面を迎えたときみたいに、彼はゆっくりと言葉をつないだ。

「原因を突きとめることは極めて難しいものです」
彼は僕のパラブーツを見つめたままで話を続けた。
「そして、この音を修理することは、おそらく困難でしょう」

「もしも可能性があるとしたら」と、彼は言った。
「靴底を交換したときに、音が消える可能性はあります。ただし、確率は五分五分というところだと思いますが」

どうやらすべての結論は出たらしい。
僕のパラブーツが正常に戻る可能性は、つまりほとんどないということだ。
僕は絶望宣告を聞くためだけに、この店を訪れたに過ぎない客の一人だった。

「お力になれなくて申し訳ありません」
彼はいかにも無難に僕を送り出そうとしているらしかった。
お礼を言って、僕は修理を待つ靴が積み上げられた、その工房を出た。

どうやら運が悪かったということなのだろう。
靴職人は、これは製造時に生じたトラブルだろうと言った。
そして、両足の靴でこのようなトラブルが生じるのは、極めて珍しいということも。

結局、僕のパラブーツのトラブルは解消されることはなかった。
もちろん、だからと言って、僕がこのパラブーツを葬り去ってしまうというわけにもいかないことは明らかだった。
僕は自分の歩みに合わせて音を立てるパラブーツとともに歩き続けていくしかない。

まだ新しいパラブーツは、キュッキュッと音を立てた。
まるで靴が泣いているみたいに。

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KONTA
1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。