今回は、小山田いくの連載デビュー作『すくらっぷ・ブック』をご紹介します。
1980年代初頭の小中学生が夢中になった、熱血ほのぼのラブコメ漫画ですよ。
『すくらっぷ・ブック』とは?
『すくらっぷ・ブック』は、小山田いくの漫画作品です。
小山田いくにとっては、初めての連載作品で、1980年から1982年にかけて、秋田書店の『週刊少年チャンピオン』に連載されました。
80年代初頭のラブコメ全盛時にあって、当時の「チャンピオン」では貴重なラブコメ作品だったように思います。
思春期の中学生たちが主人公で、恋と友情のトラブルに悩みながら乗り越えていく成長ストーリー。
仲良しグループの輪が、どんどんクラス中に広がっていく展開が、いかにも理想的な中学校という感じがしました。
なお、『すくらっぷ・ブック』には数編の短編読切のプレストーリーがあります。
「12月の唯」はコミックス第1巻に、「春雨ミラージュ」は第2巻、「三角定規プラス1」は第3巻、「深雪の中の美幸」は第4巻に、それぞれ収録されています。
それから、これは作者・小山田いくの好みだと思いますが、美術部で絵を描いている晴ボンが「道化師のソネット」を口ずさんでいたり、雅一郎が「驛舎」を歌っていたりと、作中には、さだまさしの楽曲が頻繁に登場しました。
また、同時期に「チャンピオン」で連載を持っていた<とり・みき>と仲良しで、作中にもしばしば<とり・みき>が登場しています。
作者・小山田いくのプロフィール
1956年(昭和31年)6月10日生まれの双子座。
『すくらっぷ・ブック』連載開始時は24歳だった。
身長165cm、体重48kg、血液型A型。
乱視+近視で、めがねを外すと、ものが縦にみっつに並んで見える。
仕事用のヘアバンドがトレードマーク。
ベタとスクリーントーンをやってくれるのは、学生のゆきおくんとけーこさん。
欠点は、建物の後ろに山の見えるところでなければ暮らせないこと。
なお、作者・小山田いくのプロフィールについては、別記事「小山田いく「星のローカス」進路と恋愛が男子高校生のテーマだった」でも詳しくご紹介しています。

『すくらっぷ・ブック』のあらすじ
主人公の柏木晴(晴ボン)は、長野県にある小諸市立芦ノ原中学校2年7組に在籍する男の子です。
晴ボンの親友・市野清文(イチノ)には、青木理美(理美ちゃん)というかわいい恋人がいます。
かつて、晴ボンも理美ちゃんを好きだったことがありますが、現在は二人の親友。
ところが、柔道部の猛者・坂口光明が理美ちゃんに恋をして、新たな大騒動が発生。
イチノと理美ちゃんの結びつきの強さを知った坂口は、潔く理美ちゃんをあきらめ、このときから、晴ボンとイチノと坂口の三人組は、固い絆で結ばれる親友同士となったのです。
恋人のいない晴ボンの前に突如現われたのが、活発な女の子・迎麻紀(マッキー)。
晴ボンの優しさを恋愛感情と勘違いしたマッキーは、晴ボンにキスをしますが、自分の勘違いだと気づいて激しく傷つきます。
そんなマッキーをフォローしたのも、やっぱり晴ボンで、二人はゆっくりと恋人同士の道を歩み始めます。
ところが、晴ボンの誕生日に、謎の女の子がこっそりとプレゼントを置いて去っていくという事件が発生。
実は、この謎の女の子こそ、坂口の幼馴染だった日生香苗(カナちゃん)で、マッキーとカナちゃんの二人の間で、晴ボンは激しく悩みます。
いろいろなトラブルを解決してきた晴ボンたちが直面した最大のピンチが、ノーミンの失恋事件。
大きな傷を負った三人の少年たちは、夏の直江津へと旅に出かけます、、、
カップルいっぱい、思春期(グリーンエイジ)花ざかり。
失恋したり三角関係になったりしても、いつまでもうじうじしたりしない。
みんな、いつも一生懸命だから、どんな結果になっても満足だったんだ。
『すくらっぷ・ブック』の登場人物たち
トラブルを乗り越えるたびに、階段をひとつ上るように成長していくのが『すくらっぷ・ブック』という作品でした。
作品中では、クラスメートのトラブルをきっかけとして、仲良しの友人が増え、仲間たちの絆が強くなっていくという展開が繰り返されます。
連載開始時は、晴ボン、イチノ、坂口、理美ちゃんという四人が、主要な登場人物でしたが、晴ボンに恋をするマッキーとカナちゃんが加わり、カナちゃんに恋をする小宮雅一郎、雅一郎のイタズラ仲間の戸沢正賢(まさたか)と西尾佳典、坂口と気の合う桜井光代(みっちゃん)、坂口に恋をする五島かがり、実家が農家の稲玉和夫(ノーミン)、副ルーム長の土屋悦子(ばーちゃん)、寺尾聡みたいなクール男・友田和則、イチノの元カノ・葵多寿子(ターコ)、晴ボンが在籍する美術部の部長・香樫英司(香樫さん)、イチノのサッカーのライバル・宇木朝実(アサ)など、魅力的なキャラクターが次々と登場します。
個性的な登場人物による青春群像物語というところが、『すくらっぷ・ブック』最大の魅力でした。
ちなみに、晴ボンたちは、1966年(昭和41年)生まれ。管理人よりもひとつ年上です。
担任の正木先生や校長先生も、子どもたちの気持ちを理解してくれる、古き良き時代の教師像として描かれています。
晴ボンたちの溜まり場になっていたのが、画廊喫茶「妖精館(アルフヘイム)」。
マスターの猛は、かがりの実兄であり、正木教諭とも高校・大学時代からの古い友人だったので、晴ボンたちの兄貴分的存在となります。
『すくらっぷ・ブック』の名台詞
なあ理美、だれだって好きな人には好かれたいって思うけど、外見だけつくろったってしようがないよ。たとえそれで恋が実っても、今度は自分にも相手にも—ずっとウソついていかなきゃなんなくなる。(コミックス1巻「かわいらしくも麻紀らしく」)
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ボクだって坂口と同じように悩んだよ! でも、さびしくなんてなかったよ! 理美ちゃんは恋人にはなってくれなかったけど、とってもいい友達になってくれたもん!(コミックス1巻「クマと木もれ日」)
だったらよけい何かやるといいよ、思いっきり。ボクだって、つきあいはあんまり上手じゃないけど、夢中になって絵をかいて、夢中になってイチノと遊んでたら、いつの間にか友だちいっぱいできたもん。(コミックス2巻「ビフロストの橋」)
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ボクの絵は、あれ一枚だけじゃない。カナちゃんや雅一郎やマッキーや、、、みんなと夢中になっていろんなことしていくことが、ボクの「絵」だもん。ボクの青春そのものが、ボクのキャンバスだもん。(コミックス4巻「晴のキャンバス」)
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でも、だからって、みんな自分のことばっか考えてたら、わかりあえる可能性なんてなくなるよ。裏目に出ることもあるけど、、、思いやりってやつ、信じてみたいんだ、ボク、、、理美ちゃんも落ち着けばきっと、イチノの思いやりわかってくれるって、、、信じてみたいんだ。きたない所ばっかり見てあきらめちゃったら、何も解決できないよ!(コミックス6巻「わずか1パーセントの可能性」)
恋人になるより、本当にいい友達になるほうが、案外むずかしいかもしれないんだよ。恋人には話せないことでも親友、、、ううん、真友になら話せるでしょ? そんな友達になれれば、いつかはきっと、、、(コミックス7巻「真友志願」)
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どうしようもないことも多いけど、、、その時その時、必ずボクにできることがあるって、、、信じたい。(コミックス8巻「暁着3時31分」)
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ボクたちを忘れずに、、、って気持ちだけ、もらっておくよ、けーこ、かおる。だけど、ボクたちを目標なんかにしてたらダメだ! ボクたちが秋光展佳作だったら、みんなは入選ねらわなきゃ。ボクたちを目標にしたら、そこで成長はとまっちゃう。それじゃダメ! もっと大きくならなきゃダメ! それが後輩の先輩に対する義務じゃないか!(コミックス8巻「木の葉雨」)
『すくらっぷ・ブック』の魅力とは何か?
ひと言で言えば、『すくらっぷ・ブック』の魅力は、一生懸命に生きることの美しさだと思います。
いつでも全力だから、勝負に負けても後悔しない。
晴ボンたちの青春には、そんな清々しさがあります。
たくさんの男の子と女の子が、一緒に過ごす中学校生活だからこそ、恋愛や友情の問題で、彼らはいつも悩み、苦しみます。
だけど、一生懸命に恋をした彼らは、失恋しても、やがて立ち直り、新しい恋を探します。
傷付きながらも立ち上がる姿こそが、思春期という時代の美しさだったのではないでしょうか。
彼らは、他者の個性を大切にするし、相手の立場になって考えることを忘れたりしません。
多くのトラブルに直面しながらも、いつでも、どこまでもまっすぐに、彼らは互いに助け合いながら成長していきます。
トラブルから逃げることなく、ひたすらにまっすぐに。
そんな、彼らの姿から勇気をもらった少年は、きっと、僕だけではないでしょう。
まとめ
ということで、以上、今回は、小山田いくの名作『すくらっぷ・ブック』について、ご紹介しました。
今から40年も昔の古い漫画ですが、少年たちのまっすぐな生き方は、今の時代にこそ見習いたいものだと思います。
中学生時代が、きっと懐かしくなりますよ。
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