音楽

佐野元春「SOMEDAY」1980年代のセンチメンタルな青春たち

僕らの世代の人間にとって、共通体験と呼ぶことができる音楽のひとつが、佐野元春のアルバム『SOMEDAY』である。

この『SOMEDAY』は、1982年に発売された、佐野元春のサード・アルバムで、オリコンで4位を記録するなど、「佐野元春」という名前を一気にメジャーなものへと変えるきっかけとなった。

それまでも佐野元春には、「アンジェリーナ」や「ガラスのジェネレショーン」などといったヒット曲や「ナイアガラ・トライアングル」での活躍などもあったけれど、アーチストとしての元春の実力を知らしめたのは、やはり、この『SOMEDAY』というアルバムだったと思う。

当時、僕は15歳の中学3年生で、他のミュージシャンとは異なる、佐野元春のお洒落な音楽の世界にたちまち惹かれてしまったことを、今も忘れていない。

今考えると、ビートルズやオールディーズの影響が色濃いアルバムだったと思うのだけれど、当時は洋楽の知識なんてほとんどなく、まして、自分たちが生まれる前に流行した音楽のことなんて知る術さえなかった。

現在のようにネットやサブスクが普及している世の中だったら、あそこまで感動を覚えていたかどうか、分からないような気もする。

音楽を純粋に音楽として受け止めることができた時代の話だ。

佐野元春のサードアルバム「SOMEDAY」 佐野元春のサードアルバム「SOMEDAY」

収録曲について言うと、まずは、佐野元春の代名詞ともなっている人気曲「SOMEDAY」から始めなければならない。

「SOMEDAY」はアルバムからの先行シングルであり、白井貴子のカバーでもヒットをした。

佐野元春を代表する曲というよりも、1980年代の青春を代表する名曲と言っても過言ではないくらい、我々の世代の人間にとって大切な一曲である。

もっとも、あまりに聴きすぎたために食傷気味となり、カラオケでこの曲を聴かされると、「またかー」という気持ちになってしまうことも確か。

スケールの大きな曲だけに、自己陶酔しがちな傾向も強く、カラオケでこの曲を選ぶときは慎重を期すべきだと言われている。

一歩間違うと、我々の上の世代の方々が歌う「マイウェイ」のようになってしまいかねない(笑)

元春のライブで定番曲となっている「ロックンロール・ナイト」も、このアルバムに収録されている。

一曲目の「シュガータイム」から「ハッピーマン」へと続く流れもいい。

特に、アルバム最初の曲である「シュガータイム」は、そのイントロを聴くだけで、80年代の青春を思い出さずにはいられない、魔法の扉みたいな曲だ。

ある意味では、自分の80年代を代表する一曲であるとさえ言えるかもしれない。

当時、大好きだった曲が「ダウンタウンボーイ」。

先行シングルだったけれど、シングル版よりもアルバムバージョンの方で、繰り返し何度も聴いた。

吉川晃司や沢田研二も歌った「アイム・イン・ブルー」

個人的に思い入れの強い曲が、LPレコードではB面の一曲目に入っていた「アイム・イン・ブルー」。

大学生のときに付き合っていた彼女の部屋で、吉川晃司のアルバム(『パラシュートの夏』)を聴いていたとき、この曲が突然に流れてきてびっくりした。

さらに、その後で彼女が聴かせてくれたジュリー(沢田研二)のソロアルバムにも「アイム・イン・ブルー」が入っていて、二度びっくり。

吉川晃司や沢田研二を好きな女の子と付き合っていたということも、今考えてみると、なかなかの驚きなんだけれど(まあ、女子はみんな、吉川やジュリーが好きですが)。

その頃の僕は浜田省吾や尾崎豊なんかに陶酔していたから、音楽的趣味はあまり一致していたとは言い難いように思える。

歌詞カードには、佐野元春からのメッセージが添えられていた 歌詞カードには、佐野元春からのメッセージが添えられていた

さて、今回、久しぶりに、CDアルバムを取り出して歌詞カードを開いてみると、そこには1982年の佐野元春から発せられた短いメッセージが掲載されていた。

「ある夏の午後のことだ」という一文から始まっていて、まるで村上春樹の小説みたいにクールなメッセージ。

サブスク全盛の時代になって、音楽はますますお手軽なものになっているけれど、サブスクでは、こんなふうに歌詞カードと一緒に添えられていたメッセージを楽しむことはできない。

ますます便利な社会になって、いよいよ僕たちは大切な何かを失っているような気がした。

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kels
バブル世代のビジネスマン。読書と音楽鑑賞が趣味のインドア派です。お酒が飲めないコーヒー党。洋服はアーペーセーとマーガレット・ハウエルを愛用しています。