桑田佳祐「ただの歌詞じゃねえか、こんなもん」80年代サザンの魅力

特別に好きだったわけじゃないけど、懐かしい音楽がある。

ある世代にとって、それはひとつの共通体験だったかもしれない。

僕たちの世代にとって、それがサザンオールスターズという音楽でした。

『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』とは?

『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』は、サザンオールスターズの桑田佳祐が書いた本です。

1984年(昭和59年)に新潮文庫から刊行されました。

桑田佳祐『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』新潮文庫 桑田佳祐『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』新潮文庫

当時、新潮文庫には、人気シンガーソングライターの歌詞集シリーズみたいのがあって、桑田さんの本書も、その中の一冊でした。

シンガー・ソング・プロレスラーを自認するニューミュージック界の天才児が、腕によりをかけて料理した魔法のコトバたち—デビュー曲「勝手にシンドバット」から「東京シャッフル」までのLP・シングル全88曲と、桑田佳祐自らが自身の音楽体験やLP製作の舞台裏を語り下ろしたトーク・エッセイとで立体構成するオール・アバウト・サザンオールスターズ。カラー写真8ページ。

つまり、サザンオールスターズ全作品の歌詞と、桑田さんのエッセイとで構成された文庫本です。

当時、サザンオールスターズは6枚目のアルバム『綺麗』までを出していた頃でした。

まだ若かった頃のメンバーの写真も収録されていたりして、なかなか充実した文庫本です。

『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』の目次

『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』は、桑田佳祐のエッセイとサザンオールスターズの作品の歌詞とで構成されています。

あ、音楽誌なんかに掲載されたインタビュー記事の抜粋なんかも収録されています。

★プロローグ(桑田佳祐のエッセイ)
●熱い胸騒ぎ(歌詞)
★桑田佳祐のメンバー紹介
●10ナンバーズ・からっと(歌詞)
★桑田佳祐のスタジオ・クッキング#Ⅰ
●タイニイ・バブルス(歌詞)
●ステレオ太陽族(歌詞)
★桑田佳祐のスタジオ・クッキング#Ⅱ
●NUDE MAN(歌詞)
★桑田佳祐のカルチャー・カタログ#Ⅰ
●綺麗(歌詞)
★桑田佳祐のカルチャー・カタログ#Ⅱ
解説(村上龍)
ディスコグラフィー

解説が芥川賞受賞作家の村上龍だった、というのはすごいですね(笑)

まるでアイドルグループみたいなカラーグラビアも収録 まるでアイドルグループみたいなカラーグラビアも収録

『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』の内容

はじめに、プロローグでは、桑田佳祐の音楽体験が語られています。

クレージー・キャッツの植木等に憧れた小学生時代、シャボン玉ホリデーで観た日本語のアメリカンポップス(弘田三枝子、中尾ミエ、パラダイス・キング)、姉貴の好きなビートルズに対抗して聴き始めたローリング・ストーンズ、クールファイブの前川清に熱中した時代もあったそうです。

中学二年生のとき、友だちと一緒にビートルズにハマり、高校三年の文化祭で経験した初めてのバンド演奏(このとき、デタラメな歌詞で歌える自分を発見したそうです)。

そして、大学に入ってからオリジナル曲を作り始め、初めてできた曲が「茅ケ崎に背を向けて」でした。

音楽雑誌に掲載されたインタビュー記事なども再構成されている 音楽雑誌に掲載されたインタビュー記事なども再構成されている

デビュー曲「勝手にシンドバット」は、ザ・ピーナッツみたいな歌謡曲をやりたくて作ったという作品(ディレクターからは「胸さわぎの腰つき」という言葉は意味不明だと言われたそうですが)。

この頃、歌詞を書くときのテーマになったのが「女の話」。

一番ファンタスティックなのは、やっぱりスケベな話だ、と。やりたいよォ!って気持を歌にすることが、ボクにとっては最も生々しかった。要するに詞の内容はどうでもよかったってことだね。

三枚目のシングル「いとしのエリー」は、ビートルズの映画”Let It Be”を思い出して作った作品。

当時は、二枚目路線ではツイスト(世良公則)がいたから、三枚目路線のサザンオールスターズは、かなり欲求不満が溜まっていたようですね(それで「いとしのエリー」は、ちょっと二枚目路線に変更した)。

『10ナンバーズ・からっと』ってアルバム、実は一番きらいなんです。駄作と言うか、根性入ってないって言うか、だめですね。忙しかったんです、まだこの頃まで。

三枚目のアルバム「タイニイ・バブルス」を出す前に、サザンオールスターズは休養宣言をして、五か月間の休養に入ります。

その後、人前に出る段になって、淋しい話だけどやっぱり客が離れてしまってたもの。シンドバッドとエリーでついた客が、テレビのアイドルだったボク達を見限ったね。

1980年代のサザンオールスターズがいっぱい 1980年代のサザンオールスターズがいっぱい

サザンオールスターズがサウンド面で大きな成長を見せたのが、四枚目のアルバム「ステレオ太陽族」。

このアルバムは、今、聴いても名作だと思います。

個人的には、サザンオールスターズのアルバムの中でいちばん好きな作品かもしれません。

もっとも、歌詞がほとんど重要視されていない姿勢は、変わらなかったようですが。

唄うテーマって言えばマスターベーションかな。女とやってる時にこう動いてほしいなとか、もっと違った要求の仕方してくれないかなとかあるでしょ。そういうことだと思う。愛ではないと思う。歌の中に愛があるなんて信じられないんですよね。

そんな色もの路線から成長したいと考え始めたのが、五枚目のアルバム「NUDE MAN」の頃から。

大ヒットした「チャコの海岸物語」は、歌謡曲の世界を色ものとシャレで作った作品だったから、その反動が来ていたのかもしれませんね。

ちょうど芽ばえてたんですよ、もうそろそろ新しいことやろうって気持が。黒人音楽じゃなくてね。『プラスティック・スーパースター』みたいのをやってしまったことが恥ずかしくてしょうがない。ロックの常套手段を自分達も使っている。もう穴があったら入りたい、ってのが二~三曲入ってる。

桑田佳祐によるメンバー紹介もあります 桑田佳祐によるメンバー紹介もあります

そして、当時の最新アルバムとして登場するのが、六枚目の「綺麗」。

歌詞にも変化が見られ始めるのが、この頃からでした。

ジョン・レノンがね、「新聞の文字の中に物語を感じる」みたいな気持から『A Day In The Life』って曲を作った。そんなのをボクもやりたくて『かしの樹の下で』を作ったのね。中国残留孤児のことを、それなり、見た感じを書いてみた。一つの物語を作ろうと思ったわけ。

アルバム未収録のシングル曲も合わせて、計88曲の歌詞は、やっぱりボリュームがありますね。

サザンオールスターズの歌詞の世界を、すっかりと堪能してしまいました。

サザンオールスターズの魅力

巻末の解説の中で、村上龍が、こんなことを書いています。

サザンは日本に初めて現れたポップバンドだと思う。それほどサザンはすごいバンドなのだが、桑田佳祐自身はたぶん気付いていないかも知れない。サザンは無敵だ。桑田佳祐の才能に負うところが大きいが、今のところ、日本に敵はいない。

ニューミュージックの世界では、既に、吉田拓郎や井上陽水、オフコース、アリスなどのスーパースターがいましたが、彼らの魅力は、その素晴らしい歌詞によるところが大きいものでした。

日本のフォークとかニューミュージックって、やっぱり歌詞を聴いてもらうためのサウンドという面が強かったんですね。

サザンオールスターズの歌詞の世界を楽しもう サザンオールスターズの歌詞の世界を楽しもう

ところが、サザンオールスターズの歌詞には、ほとんど意味なんかなくて、でも、サザンがいいっていうのは、サザンのサウンドがいいってことになる。

つまり、サザンオールスターズっていうのは、歌詞を抜きにして聴かせることができる、初めてのロックバンドだったんじゃないかと思います。

英語の歌詞が分からなくても洋楽いいなって思うように、意味不明の歌詞でもサザンいいなって思えるというか。

でも、そんなサザンが歌うからこそ、心に響く歌詞っていうのも、やっぱり、あったような気がします。

今でもプレイリストに入れて聴いてる曲に「わすれじのレイド・バック」なんかがありますが、意外と歌詞が深いんです(笑)

「別れる時でもやさしいままでな、心じゃ泣いたって裸で無理を」とかね。

桑田佳祐の栞なんていうのもあった(講談社文庫) 桑田佳祐の栞なんていうのもあった(講談社文庫)

やっぱり、日本語の音楽は、歌詞とサウンドが揃っていないと難しいのかもしれませんね。

まあ、本書は、そんなことを考えながら、サザンオールスターズの言葉とがっちり向き合うことができる、そんなエッセイ&歌詞集です。

まとめ

ということで、今回は、サザンオールスターズの歌詞集と桑田佳祐のエッセイがセットになった文庫本『ただの歌詞じゃねえか、こんなもん』をご紹介しました。

桑田さんの歌詞って、本当に英語が多いですよね(しかも、意味不明なやつ)。

ロックのノリには英語が一番ということでしょうか。

1980年代前半までのサザンオールスターズに浸りたい人にお勧めです。

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kels
バブル世代のビジネスマン。読書と音楽鑑賞が趣味のインドア派です。お酒が飲めないコーヒー党。洋服はアーペーセーとマーガレット・ハウエルを愛用しています。