11年ぶりのニューアルバム「SOFTLY」発売に合わせて、「ブルータス」が山下達郎特集をやってくれました。
ちょっと感動するくらい充実の内容なので、ここでご紹介しておきたいと思います。
タツローファンでなくても読む価値あり!
山下達郎のプロフィール
山下達郎は、1953年生まれのミュージシャンで、同世代に甲斐よしひろや稲垣潤一などがいます。
1975年にシュガー・ベイブというバンドでデビュー。
1976年からはソロで活動していて、自身のヒット曲のみならず、多くの楽曲提供やCMソングなどに携わっていることでも有名。
代表曲に「クリスマス・イブ」「RIDE ON TIME」「僕らの夏の夢」など。
愛称として「ヤマタツ」「タツロー」。
妻は、ミュージシャンの竹内まりや。
TOKYO FMの「山下達郎のサンデー・ソングブック」は、1992年から続く長寿番組となっています。
山下達郎のBrutus Songbook
山下達郎は、つい数年前にも「ブルータス」に登場しています。
それが、2018年2月15日号(No.863)の「山下達郎のBrutus Songbook」です。
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先進的な都市生活者に向けた情報を提供してきた「ブルータス」と、日本のシティポップの発展に尽くしてきた山下達郎とは、いろいろな共通点がありそうですね。
ちなみに、僕は2冊持ってます(保存用と読書用)。
TATSURO’S MUSIC BOOK
さて、そんな「ブルータス」が再び組んだタツロー特集が、今回の「TATSURO’S MUSIC BOOK(山下達郎の音楽履歴書)」です(2022/7/1、No.964)。
6月22日に発売される11年ぶりのオリジナルアルバム『SOFTLY』に合わせて、「ブルータス」がやってくれました。
これは、永久保存版の超豪華特集です、間違いなく。
それは、今回の特集が、どんなふうにすごいのか、順番にご紹介していきましょう。
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山下達郎の音楽履歴書
今回の特集の目玉は、山下達郎が自身の50年のキャリアについて振り返った、合計8時間に及ぶ超ロングインタビュー。
聴き手はタレントのクリス・松村。
「音楽は勝ち負けである、喧嘩は勝ち負けではない。by 山下洋輔」。商業音楽は結局、競争なんですよ。常に闘争というか。だから、曲を書き、編曲もやったものには思い入れがあります。(山下達郎)
「コーラスから始まった音楽の仕事」「国内から海外まで、多岐にわたる楽曲提供の裏側」「作家、プロデューサーとして生んだ大ヒットたち」「変わっていくものと、変わらないもの」「そして新作の話。『SOFTLY』に見る、山下達郎の現在地」の順で語られるタツローのキャリアは、本当に圧巻ですね。
矢野顕子
今回の特集では、たくさんのミュージシャンが登場して、山下達郎の魅力を紹介しています。
黒木真由美『12のらくがき』(1975)以降、タツローとは旧い付き合いになる矢野顕子もそのひとり。
山下くんの中には「情けない男」的なところがあるんだと思うんです。(略)その情けなさを、山下くんは自分の歌詞で表現できる。そこがいいんです。(矢野顕子)
鈴木雅之
シャネルズやラッツ&スターで活動してきた鈴木雅之は、山下達郎の強い影響を受けたミュージシャン。
レコードのバーゲン会場で、タツローと一緒になったエピソードが楽しい。
二人は、特にドゥワップについて熱く語る仲みたいです。
アマチュアで活動を続けていた77年、スネークマンショーからお誘いいただき、クリスマス企画作品を作ることになった時のこと。プロデューサーから共演したい人を尋ねられたので「山下達郎さんを呼んでください!」と即答しました。(鈴木雅之)
大貫妙子
1973年のシュガー・ベイブ結成時からの盟友・大貫妙子。
荒井由実『ミスリム』(1974)でも、二人はコーラスで参加している。
最近、電話で話した時、タツローは「コロナ禍で、家に引きこもってレコードの整理ができるのでうれしくてしょうがない」と言ってたそうです(笑)
当時、私はギターを弾いて歌っていました。でも、ギターは3人いらないという話になり、山下さんに「あんたさ、ピアノ習ってたんだよね?」と言われて。「小学校のときは習ってたけど、ずっと弾いていないので無理」って答えたら「弾けるよ!」って。(大貫妙子)
林哲司
松原みき「真夜中のドア~stay with me」など、シティポップの名曲で知られる作曲家の林哲司。
2021年、竹内まりや&杏里「Peach&Apricot」で、初めて山下達郎と共演しました。
山下達郎というアーティストは、パフォーマーでありながら、クリエイターとしてのこだわりも併せ持っている。しかもそれらがバランスよく同居している。飽くことなく音の追求をしていることは、本当にリスペクトに値すべき点だと思います。(林哲司)
山下達郎のCMソングが心に残る理由
CMディレクターの中島信也が解説する、山下達郎のCMソング。
JAL沖縄キャンペーン「愛を描いて-LET’S KISS THE SUN」、日立マクセルUD「RIDE ON TIME」、サントリービール「LOVELAND,ISLAND」、ANA沖縄キャンペーン「高気圧ガール」「踊ろよ、フィッシュ」、ホンダ・インテグラ「風の回廊(コリドー)」、JR東海クリスマス・エクスプレス「クリスマス・イブ」、ミスタードーナツ「ドーナツ・ソング」、、、
タツローのCMソングは、本当にビッグな曲ばかりです。
やはり88年の『クリスマス・イブ』(JR東海クリスマス・エクスプレスCM曲)を作ったことですね。CM商品と映像、そして音楽が一体になっているだけでなく、そこにいろいろな出会いやタイミングが重なり、まさに響く声に神様が降りてきたかのように、CMというより何か日本の宝物となり、時代を超える作品が誕生した。そんなCMソングが存在するということが本当にすごいことです。(中島信也)
細野晴臣
『SPACY』(1977)など、山下達郎とは多くの共演がある細野晴臣ですが、意外と、ほとんど会話したことがないんだとか。
歌が上手な人は、自分とはレベルが違うんですよ。別格なんです。山下くんは完成された、メインストリームのミュージシャンだし、一方で僕や大瀧くんは趣味人だからね。(細野晴臣)
山下達郎の全仕事リスト、449曲。
山下達郎が自身の作品以外で制作に携わった楽曲を、タツローが作成したリストに基づいて整理されています。
コーラスが280曲、編曲が230曲、プロデュースが187曲、作曲が69曲。
斉藤哲夫「グッド・タイム・ミュージック」(1974)とか、荒井由実「12月の雨」(1974)とか、70年代の名曲のコーラスには山下達郎あり、という感じです。
日本に限らず、基本的にポップミュージックにとって最も重要なファクターというのは、実は編曲なんです。アレンジが70%くらいの生殺与奪を握っているというのが、僕の考え方。特に、ロックンロール以降のポップソングに関しては、リズムセクションがものすごく重要なんです。(山下達郎)
山下達郎のアートワークヒストリー
山下達郎の作品をアートワークから振り返っています。
パッと目を引くのは『FOR YOU』『高気圧ガール』『COME ALONG』など、アメリカの匂いのするイラスト。
鈴木英人といえば、山下達郎って感じでしょうか。
ただ打ち合わせといっても「『FOR YOU』というレコードで好きに描いてください」っていうだけ。それでパッとひらめいたレコードも扱っている西海岸の電器屋さんを描いて、店の横に彼を立たせたんです。本人はあまり出たがらないって後で聞いたのですが、描いちゃったから時すでに遅し(笑)(鈴木英人)
夕日をバックに、海へ入っている『RIDE ON TIME』もいいですね。
新作『SOFTLY』に見る、山下達郎の現在地
今回の特集の最大の関心ごとは、もちろん11年ぶりのニューアルバム『SOFTLY』。
このアルバムのために、今回のブルータスの特集があるといっても言いくらいです。
おかげさまで、この年になっても一応、生き残れていますけど、それは僕が常に主流を回避してきた結果だと思ってます。僕は昔から主流ではなく傍流だったし、これからもそう。わかりやすい音楽だけど、日本の保守本流に受容されるような音楽をやってきたつもりはなくて、かといってサブカルチャーからも縁遠い。自分のいる場所はこの国の音楽シーンにはないという意識でやってきましたから。(山下達郎)
『SOFTLY』は全部で4種類の発売があって、通常盤、初回生産限定盤(2枚組)、完全生産限定盤(アナログレコード・カセットテープ)と揃っています。
僕は、初回生産限定盤(2枚組)を予約しています!
15 Reviews of SOFTLY
15人のミュージシャンによる『SOFTLY』全曲レビュー。
音楽専門誌でも、ここまでやらないだろうという全曲レビューです。
参加ミュージシャンは、田島貴男(オリジナル・ラブ)、tofubeats、尾崎世界観(クリープハイプ)、Rei、角舘健悟(Yogee New Waves)、関口スグヤ、寺尾紗穂、鳥居真道(トリプルファイヤー)、横山剣(クレイジーケンバンド)、岸田繁(くるり)、澤部渡(スカート)、曽我部恵一、冨田ラボ(冨田恵一)、一十三十一、ヒャダイン。
でも私はリードギターを弾く達郎さんも大好きなんです。弦楽器なのに息つぎをしていたり、端々でしゃくり上げるニュアンスに歌心を感じます。(Rei)
竹内まりや
山下達郎を語るのに、決して欠かせない存在が、嫁であり、ミュージシャンの竹内まりや。
大学1年の時、渋谷の楽器屋で店頭ライブを観に行ったのが、山下達郎を観客として見た最初なんですが、なにしろ第一印象は「暗い人」でした。あんなにポップでおしゃれな音楽をやっているのに、ステージ上では表情も歌い方も妙に暗くて、のちのち本人に聞いたところによると、あの頃は世の中を恨んでたそうです(笑)(竹内まりや)
今回の特集、とにかく余すところなく、山下達郎というミュージシャンの仕事に切り込んでいます。
こういうのは、さすが「ブルータス」ですね。
買っておかないと、絶対に後悔すると思いますよ。
最後に、山下達郎さんの素晴らしい名言を引用しておきます。
みんな同じですよ、音楽なんて。音楽の良し悪しは何かといったら、テクニックとかカテゴライズじゃなくて、グルーヴがあるかないか。クラシックといえどもグルーヴがある。(山下達郎)
まとめ
ということで、以上、今回は、ブルータス「TATSURO’S MUSIC BOOK(山下達郎の音楽履歴書)」をご紹介しました。
新作『SOFTLY』発売まで、あと数日。
山下達郎の大きな波が来そうな予感がします!
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