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山田太一「ふぞろいの林檎たち」脚本はサザン抜きでもおもしろいか

1983年5月27日(金)22時、世の大学生たちをアッと言わせるテレビドラマがスタートしました。

それは、三流大学に通う落ちこぼれの大学生たちと愛と友情を描いた青春ドラマ。

サザンオールスターズのBGMを乗せて放送された、このドラマは瞬く間に大人気ドラマとなり、以後、シーズン4まで制作される超ヒット作品となりました。

そうです、そのドラマのタイトルは『ふぞろいの林檎たち』。

今回は新潮文庫版の脚本から、『ふぞろいの林檎たち』は作品として純粋におもしろかったのか、俳優陣が良かったのか、サザンのBGMが良かったのか、そんなことを検証してみたいと思います。

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概要

『ふぞろいの林檎たち』は、山田太一の原作・脚本によるテレビドラマで、TBS系列の「金曜ドラマ」枠(毎週金曜日22:00 – 22:54)で放送されました。

主題歌はサザンオールスターズ3作目のシングル「いとしのエリー」。

ちなみに、B面カップリング曲「アブダ・カ・ダブラ」は、日清食品「焼そばU.F.O.」のCMソングとして起用されました。デビュー曲「勝手にシンドバッド」、2作目「気分しだいで責めないで」と、当時のサザンにはコミックバンド的な三枚目路線のイメージが先行していたような気がします。当時の正統派二枚目バンドの代表は世良公則&ツイスト。

ドラマ内では挿入歌として、サザンオールスターズの曲がガンガンと流れていたのが印象的です。

このため『ふぞろいの林檎たち』とサザンオールスターズとは、僕たちの記憶の中で切っても切り離せない関係となっているんですよね。

ふぞろいな登場人物たち

『ふぞろいの林檎たち』の醍醐味のひとつは、多彩な登場人物たちのキャラクター。

「ふぞろいの林檎」という言葉には「できそこない」「落ちこぼれ」などの意味が込められているようですが、必ずしも「できそこない」とは言い切れない人間的な魅力の持ち主たちが、このドラマにはたくさん登場していました。

仲手川良雄(中井貴一)

『ふぞろいの林檎たち』の主人公で、中井貴一演じる仲手川良雄は酒屋の息子。

父を亡くした後は、母と兄夫婦の四人で暮らしています。

三流大学の国際工業大学の四年生。

二枚目ですが、内気で口下手の性格故か、なかなか彼女ができません。

誠実な人柄で女の子たちの気を惹きますが、どっちつかずの優柔不断な性格が、彼の行く手を阻んでいます(笑)

最近の中井貴一さんは、働くオトナは腹が減る!の「サラメシ」のイメージが強いですね。80年代にはシティポップを歌う歌手でもありました。

岩田健一(時任三郎)

良雄の親友の一人で、三人の中では一番男らしくて短気なキャラクターです。

京都出身で、父親は公立高校の校長先生、兄は京都大学を出て、建築事務所を持つために頑張っていて、妹は同志社大学の二年生。

一流の一家の中で、ただ一人落ちこぼれの存在だった健一は、逃げるように東京の大学へ進学してきていました。

一流を憎むなど、直情型で憎めないタイプの男子大学生です。

この後、時任三郎は「24時間タタカエマスカ」のキャッチコピーで有名な、三共「リゲイン」のTVCMで大活躍。バブル期の企業戦士を代表する存在となりました。

西寺実(柳沢慎吾)

良雄の親友の一人で、唯一の三枚目キャラ。

中学校時代、登校拒否になった経験があり、実家(ラーメン店「金華」)は決して裕福ではありませんが、両親は過保護なくらいに実を大切に育てています。

もっとも、両親の愛情には実にはなかなか伝わらず、甘やかされて育った実は、三人の中でもっともわがままな若者として描かれています。

雄弁で行動力もありますが、軽率な言動で、時には人を傷つけてしまうことも。

バブル期の人気番組「ねるとんね紅鮭団」芸能人編に登場した際、吉田美江に告白して「ごめんなさい」を受けた。立ち去る時に言い残した言葉が「あばよ」。

水野陽子(手塚理美)

都立看護学校の三年生。

良雄たちの企画したサークルに「津田塾大学の女子大生」と偽って参加、三人と出会います。

健一とデートを繰り返して、三人の中では唯一の両想いが成立。

ブレイク前に発売されたシングル「ボビーに片想い」(1979年)の作曲は松任谷由実。作詞も松本隆で、今や注目のシティポップです。

宮本晴江(石原真理子)

都立看護学校の三年生で、学生寮では陽子と同室。

良雄を好きになりかけていますが、良雄に気になる人がいることを知ってからは、少し距離を置いてみせようとします。

実から言い寄られても、まったく相手にしません。

1980年のデビュー映画「翔んだカップル」(柳沢きみおの大人気漫画)では、才媛才女の杉村秋美を演じました。ヒロインの山葉圭役は薬師丸ひろ子。

谷本綾子(中島唱子)

女性陣三人の中で唯一の三枚目キャラで、唯一の女子大生(東洋女子大)。

容姿にコンプレックスがあり、男性の気を惹くために、思わぬ行動を取ることがあります。

良雄に惹かれてサークルに入会しますが、なかなか良雄の心をつかむことができず、いつの間にか、実と仲良くなっていきます。

本作「ふぞろいの林檎たち」でデビュー。原田知世主演映画「早春物語」にも出演しています。

伊吹夏恵(高橋ひとみ)

個室マッサージでアルバイトしている女子大生。

良雄が本当に好きなのは、この夏恵ですが、夏恵には一緒に暮らしている恋人がいました。

個室マッサージでアルバイトしたり、パートナーに合わせて割り切った大人の関係を演じてみせたりしていますが、本当はちゃんとした恋愛がしたかった、という女性です。

1987年の映画「私をスキーに連れてって」では、布施博の恋人役として活躍しました。

本田修一(国廣富之)

夏恵と一緒に暮らしている、夏恵の恋人ですが、修一は互いに縛られない自由な関係を望んでいます。

恵まれない家庭で育ったために、愛情を信じられない人間に成長してしまったようです。

伊藤麻衣子主演のテレビドラマ「不良少女と呼ばれて」では、舞楽師役を熱演。最後には殺されてしまうという、すごいストーリーでしたが、、、

仲手川耕一(小林薫)

「ふぞろいの林檎たち」は、良雄たち若者世代の物語ですが、良雄の家庭内のトラブルも組み合わされて、物語を立体的に構成しています。

耕一は良雄の兄で、実家の酒屋を支える大黒柱。

病弱な嫁の幸子を心から愛しています。

村上春樹原作「風の歌を聴け」映画化の際に主役を務めました(1981年)。一言では語れない、伝説の映画です、、、

仲手川幸子(根岸季衣)

良雄の兄嫁。

心臓が悪くて子どもを産めないために、耕一の母親からは、離婚を迫られています。

それにしても、病弱で子ども産めないから嫁失格とか、すごい時代です(現代なら炎上案件ですね)。

1986年のテレビドラマ「痛快!OL通り」では、木崎さと子役で登場。80年代は楽しいドラマが多い時代でした。

仲手川愛子(佐々木すみ江)

良雄や耕一の母親。

耕一の将来を案じて、子どもを産めない幸子と別れて、健康な女性と再婚するよう、厳しく耕一に詰め寄ります。

早くに夫を亡くした寂しい女性としての一面もあります。

その他

ラーメン店を営む実の両親(石井均・吉行和子)や、愛子が見つけてきた耕一の再婚候補・島脇邦子(千野弘美)、大学の生意気な後輩・佐竹順治(水上功治)、一流企業の重役・土屋部長(中野誠也)など、多彩な登場人物たちが、良雄たちの青春を彩ります。

あらすじ

『ふぞろいの林檎たち』は、全10話の連続テレビドラマでした。

各回の名場面とともに振り返ってみましょう。

1 学校どこですか?

六本木のディスコで開かれていたスポーツ同好会のパーティーで、良雄は夏恵と出会いますが、関係者ではないことがバレて、店を追い出されてしまいます。

東京大学医学部、慶応大学医学部、東京医科歯科大学の学生たちで構成されている、そのサークルのメンバーが、良雄を店から追い出しながら言った言葉は「失礼だけど学校どこ?」「聞くなよ、そんなこと」

良雄の失敗話を聞いた健一の発案により、良雄たちは自分たちのサークル「ワンゲル愛好会オリーブ」を作って、女子大生を呼び込むことにしますが、やってきたのは「美しくない子の自意識や誇りやコンプレックスを身体中にみなぎらせた」綾子一人。

あきらめていたところに、陽子と晴江の二人が現れて、六人はレストランやディスコで楽しい時間を過ごしますが、彼女たちの名前や連絡先が嘘だったことが、後日判明します。

結局、「ワンゲル愛好会オリーブ」の最初の企画となった高尾山登山に集まったのは、良雄と綾子の二人だけで、帰りの電車の中で綾子の誘いを断った良雄は、そのまま歌舞伎町の個室マッサージの店へと向かいます。

そこで良雄の相手をした女性は、先日、医学部のパーティーで出会ったばかりの夏恵でしたが、夏恵の方は良雄を覚えているはずもなく、、、

2 恋人がいますか?

個室マッサージで夏恵の愛撫を受けながら、良雄は泣いてしまいます。

同じころ、偽名を使ってサークルに参加したはずの陽子と晴江からの連絡を受けて、健一と実は彼女たちと会います。

ちなみに、彼らの待ち合わせ場所となったのは、喫茶店「ガープ」。この店は、その後も、彼らの待ち合わせ場所として、頻繁に登場します。

「何故バカな嘘ついたかっていうと、よく頭に来ることがあるの」「看護学校の生徒だっていうと、四年制の大学行ってる女性より、二三段低いみたいに扱う奴がいるのよ」と語る陽子たちもまた、憂鬱なコンプレックスを抱えた「ふぞろいの林檎たち」でした。

「頭来るから、お茶の水とか、東京女子大とかいって、からかってやろうよって思ったの」「案の定、津田塾の人が来たってウハウハ喜ぶんで、面白くなかったわ」と突き放す陽子に、健一が言い放った名台詞がこちら。

いわして貰やあ、一流なんてもの、全然信用してないからね。一流の大学生がいい女は行きなってもんよ。一流会社の男が素敵だと思う女も、行っちゃいなってもんよ。こっちは、そんな飾りなくてね。一人の人間としてね、ちゃんと、一流になりゃあいいと思ってるし、そういう俺をね、評価してくれる女性とつき合えばいいと思ってる。(山田太一「ふぞろいの林檎たち」)

一方で、個室マッサージで泣いてしまった良雄は、夏恵の招待を受けて、夏恵と修一が暮らすマンションへと出かけます。

夏恵は「個室マッサージの仕事なんて、ただの事務的なものだ」と修一に諭されてアルバイトをしていたのですが、涙を流しながら「こんな仕事をやめてほしい」と懇願した良雄の誠意に心を動かされていました。

良雄と会わせた修一に向かって、夏恵はこう叫びます。

「教えてやってよ。この人に教えてやってよ。どうやったら、平気になれるか。どうやったら、女がなにしようと平気でいられるか、教えてやってよ!」

夏恵もまた、心に重荷を抱えた「ふぞろいの林檎」のひとつだったのです、、、

3 生き生きしてますか?

いつの間に、こっそりと連絡を取っていた健一は、陽子を誘ってドライブに出かけます。

実も思い切って春江を誘って出かけますが、二人は晴江の希望で良雄の実家である「仲屋酒店」へと向かいます。

ところが、ちょうど綾子も良雄を訪ねてきたところで、三人は見事にバッティングしますが、良雄は夏恵のマンションへと向かっていました。

その夜、警備員のアルバイトをしている健一は、警備先のビルで深夜に残っている土屋部長と知り合います。

ビルの窓ガラスが開いていることを不審に思った健一は、土屋部長の命を救うために声をかけたのでした、、、

4 なにを求めてますか?

仲屋酒店では、心臓の病気で入院していた兄嫁の幸子が無事に退院してきましたが、幸子は愛子を気遣って、無理をして働いています。

愛子は、幸子に無言のプレッシャーをかけて、幸子と耕一を離婚させたいと考えていたのです。

家庭内がゴタゴタしているところへ夏恵が現れて、「この頃、怖いの。どんどん鈍感になって、普通の感覚がなくなって行くような」などと、風俗で働く葛藤を語ります。

そして「なんか綺麗な、ドキドキするような、恋愛したい」と言いながら、良雄に抱きつきますが、その恋愛の相手は、良雄ではなく修一でした。

その頃、健一は、昨年アルバイトをした中小企業の社長から「自分の会社で働いてみないか」と声をかけられていて、一流企業に反発している健一は、自分の実力を認めてくれた中小企業へ入社することを決意します。

ところが、その直後に、一流企業の三友商事から呼び出しがあり、健一は土屋部長のコネによって、特別に三友商事への入社が決まってしまいます。

内定辞退の説明に訪れた社長が、健一にかけた最後の言葉は「そりゃあ、誰だって、ここよりはいいよ」でした。

一方、晴江と二人で会っていた良雄は、修一から「夏恵が手首を切った」という電話を受けて、二人で夏恵のマンションへと急いで駆けつけて行くことに、、、

5 親友は誰ですか?

自殺未遂をした夏恵は、看護学校で学ぶ晴江の手当を受けて大事には至らないが、修一は大きなショックを受けている。

「うまく行ってたんだ。亭主面したり女房面して、お互いにしばり合ってる関係より、どれだけいいか知れやしないって、彼女だっていってたんだ」

良雄は「対等だなんてことが、そんなに大事かな? 少しでも愛していたら、対等じゃなかろうとなんだろうと」を修一を諭しますが、「愛してたら、なんていうな」「その言葉は、虫ずが走る」と一蹴されます。

この後、修一は夏恵のマンションを出て行方不明になってしまい、良雄は夏恵のために修一を探すことになりますが、夏恵のために一生懸命になっている良雄の姿を見て、晴江はちょっと傷付いています。

一方、三友商事への入社が内定した健一は、土屋部長の指示に従って英会話の勉強を始めます。

実は、まるで人が変わってしまったような健一の行動変容を見て「こないだまで、一流なんてインチキだとかいってたのが、自分がはいれるとなると、ぽっぽっのぼせ上って、俺たちのこと今度はカス扱いよ」と、不満たらたらで、、、

6 キスしてますか?

修一を見つけた良雄は、夏恵のところへ戻るように説得しますが、「気持なんてことをいい出すと、ぐちゃぐちゃして来る」「ぐちゃぐちゃしたのは嫌いなんだ」「金も半分ずつ、セックスも対等、お互いの中へは立ち入らないっていう、そういうことでいいっていうから、一緒にいたんだ」「死のうとするなんて、ぶちこわしもいいとこだ」と、自殺を図った夏恵を非難します。

修一の母親は、夫の浮気によって夫婦の愛情が壊れた末に、すべての愛情を子どもに注ぎ、そんな母親の異常な執着愛で育てられた修一は、男女の愛情を嫌悪するようになっていたのでした。

良雄から事情を聞いた夏恵は、いろいろ心配してくれたから、そのお礼に一回だけ自分を抱いてもいいと、良雄に言いますが、良雄は「そんなの嫌なんだ。そんなこというなよ! バカにすんなよッ」と反発します。

一方で、英語の勉強のために陽子とのデートの時間さえ取れなくなっていた健一は、土屋部長から「女はやめとけ」「入社すりゃあ、いくらでもいいのがつかまる」「あせって、安っぽいのを、つかむことはない」と言われてしまい、反論することができません。

そんなとき、仲屋酒店では、愛子が見つけてきた邦子が、お手伝いとして働き始めます。

愛子は、邦子と一緒に暮らしているうちに、耕一の心が幸子から離れていくことを期待していたのです、、、

7 どんな夢見てますか?

夏恵は修一と暮らしていたマンションを出て、小さな木造アパートで暮らし始めます。

良雄は引越しを手伝ったりと夏恵の世話を焼きますが、夏恵は突然に泣き出したりして、気持ちが安定しません。

この回の見所は、実の父親がキレるシーン。

「中学高校と、お前の顔色ばっかり見て来たんだ。さからっちゃいけねえ、叱っちゃいけねえって、みんなでいろんなこといいやがって、お前はつけ上って、登校拒否だの暴力だの、いい気になって親おどかして、こっちはハラハラハラハラ」「もう沢山だ。今度は親の番だ。このせまいカウンターの中で、朝から晩まで働いて、面白えことなんかなにひとつありゃしねぇ。たまには暴れるぞ! たまには俺だって暴れるぞ!」と怒鳴りながら、実に物を投げつけます。

三流大学生の葛藤だけではなく、そんな彼らを子どもとして持つ親の葛藤もまた、『ふぞろいの林檎たち』では、しっかりと描かれているんですね。

一方、兄の耕一から就職活動について説教をされた良雄も「俺たちなんか、内定しようがないよ、話が来ないもの」「入りたいとこなんか、俺たちは入れないんだよ。いい会社はね、俺っち学校なんか声もかけて来ないよ」と逆切れ。

さらに、幸子と仲良くするように愛子に伝えると、愛子からも「お母ちゃんだって、いい姑でいたいよ」「だけど、それじゃ耕一は一生子供を抱けないだろ、この家はあとつぎなしになっちゃうだろ」「いつまでも幼稚園みたいなこといってるんじゃないよ。ほんと、頭わるいんだから。だから大学だって、ボロボロおっこちたのよッ」と、悪態をつかれてしまいます。

そして、ついに、幸子の姿が、仲屋酒店から消えてしまいました、、、

8 大きな声が出せますか?

幸子が失踪してから耕一は、愛子と口も利かない日が続きますが、愛子は「本当にお前、あの人出て行って、悲しいかい?」「ほんとうは、ほっとしてるとこあるんじゃないかい?」「お母ちゃんが追い出してくれて、ありがたいってとこあるんじゃないかい?」「心臓患って、子供産めない嫁が出て行って、正直なところは、よかったんじゃないの?」と、耕一を問い詰めます。

さらに、お手伝いの邦子からも「ほんとに、赤ちゃんうめない奥さんでいいんですか?」「私は、お母さん大事にするし、丈夫な、赤ちゃんもうめると思うし」と言い寄られて、耕一は幸子を選ぶか、邦子を選ぶかというところまで追い込まれていきます。

一方、健一のアパートに、突然、京都から母親がやって来ました。

母親は内定の決まった健一に「やっぱり男は仕事やねえ。一流企業に入ることになっただけで、こんなに人間が変るんやもん」「やっぱりあんたは、ええ学校へ入れんかったが、万事に影響しとったんやナ」と、喜びを隠しません。

そんなとき、健一は、実と綾子が、佐竹たちから暴力を受けて怪我をしたことに逆上、佐竹に復讐しようとしますが、仲間を連れた佐竹の返り討ちに遭ってしまいます、、、

9 ひとの心が見えますか?

喧嘩に負けて怪我をした健一の部屋を、土屋部長が訪ねてきました。

「すまん」「わが社への入社は、諦めてくれ」「失脚した」

社内で立場の悪くなった土屋部長に、健一を入社させる力は既になく、健一の就職活動も振り出しに戻ってしまいます。

困っているところに、今度は父親が突然上京してきて、健一から事情を聞いた父親は「世間というものはな、口先だけは調子のええこというもんや。それを真に受けて、たしかめもせんと」と、健一を突き放します。

実は、健一と父親との仲を取り持とうとしますが、「駄目だ。お前のいうことなんか聞かねえよ。俺の友だちだっていうだけでよ、ウヘッてなもんよ。国際工業大学の学生じゃ、ろくなもんじゃねえって、頭から相手にしてねえよ。これがな、東大だの京大だのっていってみろ。ほう、そりゃあえらいって、すぐ一目置きやがる。そういう奴なんだ」と相手にしません。

一方、良雄は、夏恵のことが気になりながらも、晴江と会って話をしますが「堅い人って、そうなのよ、そういう、同棲したりしてる、ひどい女にひかれたりするのよ」などと言われてしまいます。

そんなとき、耕一は幸子を探すために家を出てしまい、残った良雄が店を切り盛りしなければならなくなったため、仲間たちが仲屋酒店に集まってきました、、、

10 胸をはっていますか?

良雄と交替で店を手伝う健一と実は、女の子たちを集めてパーティーを開くことになりました。

陽子と晴江のところにも「ワンゲル同好会オリーブ」のコンパのご案内が届きます。

さらに、実は綾子にも声をかけるために、綾子を探して回り、良雄は修一と夏恵も招いて、二人の仲を修復させることに決めます。

その夜、仲屋酒店の茶の間は大宴会で、交替で店番をしながら盛り上がります。

耕一が幸子を連れて戻ってきたのは、修一と夏恵の二人が店番をしているときでした。

愛子は幸子に向かって「別れる決心してくれたんでしょう」「だったら、その決心通して頂戴」と冷たく言い放ち、耕一にも「世間には、いっくらだって、女の人いるんだよ」「どうでも、幸子さんじゃなきゃなんて、そんな甘いこと、この頃は若いもんだっていわないよ」「もうちょっと、あとさき考えて、さき行き不幸にならないような相手を選ぶもんだよ」「認めてんだよ、幸子さんは。自分で、嫁の資格ないこと認めてるんだよ」と詰め寄りますが、「もうよせ、お母ちゃん」と、耕一は遮ります。

若いもんが、どうだか知らねえが、世間がどうだか知らねえが、俺は、幸子じゃなきゃ嫌なんだ。そんなこと信じられねえかもしれねえが、そうなんだから、仕様がねぇ。こいつが、いいんだから仕様がねぇ。可笑しきゃ笑ってくれ。甘っちょろくても、こいつと暮したいんだ。仲良くやってくれよ。俺たちも、お母ちゃん、大事にするから。(山田太一「ふぞろいの林檎たち」)

耕一の言葉に、若い男女もみんな胸を打たれて、夏恵は「そういう、そういう恋愛したい」と泣き出してしまいます。

やがて、良雄は健一や実と一緒に、企業訪問を始めますが、会社説明会では大学別に控室が分けられていて、東京大学や一橋大学や慶応大学の学生はソファ付きの部屋へと移動していきます。

不満たらたらの実に向かって、健一は「胸はってりゃあいいんだ」と言います。

「問題は、生き方よ」

同じころ、陽子や晴江も、病院で一生懸命に働いていました。

まとめ

ということで、以上、今回は、大人気テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』の脚本について全力で語ってみました。

結論として、山田太一さんの『ふぞろいの林檎たち』は、脚本で読んでも、やっぱりおもしろい作品です。

サザンのBGMがなくても、ちゃんと感動できる作品として完成されているんですね。

最終回の耕一の長い台詞、「俺は、幸子じゃなきゃ嫌なんだ。そんなこと信じられねえかもしれねえが、そうなんだから、仕様がねぇ。こいつが、いいんだから仕様がねぇ」の場面は、読みながら涙が出てきました。

耕一のすごいところは「仲良くやってくれよ。俺たちも、お母ちゃん、大事にするから」と、ちゃんと母親に対する愛情も大切にしているところ。

安易に親を捨てて駆け落ちしてしまうのではなく、最後まで母親を大切にしようとする姿勢が描かれているところが、山田太一さんらしい演出だと思いました。

結論として『ふぞろいの林檎たち』はサザン抜きでも素晴らしい作品でした。

もちろん、サザンの音楽をバックに、中井貴一や時任三郎や手塚理美や石原真理子や高橋ひとみの演技を見るのは絶対的に素晴らしいことだけれど、純粋に作品だけを味わってみても、『ふぞろいの林檎たち』は素晴らしかったということです。

興味のある方は、ぜひ、脚本版の『ふぞろいの林檎たち』を読んでみてください。

当時の放送を知らない、若い世代の方々にもお薦めです。

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KONTA
1967年生まれのバブル世代。80年代カルチャーしか勝たん。推しは仙道敦子。匂いガラスが欲しい。