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小山田いく「星のローカス」進路と恋愛が男子高校生のテーマだった

1980年代。

それは、世の中の中高生が、恋愛の教科書といえばラブコメ漫画のことだと思っていた時代。

リアルにあり得ないような青春ドラマに胸をときめかせて、いつか自分もそんな恋愛体験をするんだと、真剣に信じていた時代。

今にして思うと浅はかではありますが、80年代のラブコメ漫画には、夢がありましたよね、実際(妄想という名の夢が)。

ということで、今回は、80年代ラブコメ漫画の中から、小山田いくの「星のローカス」をご紹介したいと思います。

なかなかシリアスな青春ファンタジーですよ。

漫画家・小山田いくのプロフィール

はじめに、作者の小山田いくさんについて。

漫画家の小山田いく(本名:田上勝久)さんは、1956年(昭和31年)、長野県小諸市生まれ。

長野工業高等専門学校の機械工学科を卒業後、1979年、本名の<田上勝久>名義で描いた「五百羅漢」(『別冊ビッグコミック』12月1日号)で漫画家デビュー。

同年、筆名を<小山田いく>に変更して「12月の唯」(『週刊少年チャンピオン』)で本格デビューを果たします。

「12月の唯」は、第13回「週刊少年チャンピオン新人まんが賞」佳作を受賞、その後も週刊少年チャンピオンで読切短編を発表しますが、1980年、青春ラブコメディ「すくらっぷ・ブック」を連載開始。

故郷の小諸市を舞台に中学生の青春群像を描いたこの作品はヒットし(コミックスは全11巻)、小山田いくは一躍人気漫画家となります。

その後も『少年チャンピオン』を中心に、多くの人気作品を発表しますが、2016年3月、小諸市の自宅で死んでいるところを発見されました。

享年59歳、肝硬変だったと言われています。

ちなみに、「軽井沢シンドローム」や「NERVOUS BREAKDOWN」などの作品で知られる漫画家<たがみよしひさ>さんは、小山田いくさんの実弟です。

『月刊少年チャンピオン』連載の「星のローカス」

さて、そんな小山田いくさんが、初めて月刊誌に連載した作品が、今回ご紹介する「星のローカス」です。

この「星のローカス」は、1981年から1984年までの3年間に渡って、『月刊少年チャンピオン』に連載されました。

当時、小山田さんは『週刊少年チャンピオン』に「すくらっぷ・ブック」や「ぶるうピーター」などの作品を連載中で、小山田いくファンとしては、2つの連載作品を同時進行で読めるので、非常にうれしかったことを覚えています。

ちなみに、「星のローカス」の連載が始まった1981年、管理人は14才で、中学2年生になったばかりです。主人公の二木聡は16才、管理人より2つ年上なので、1965年(昭和40年)生まれということになりますね。尾崎豊と同い年だ!

「星のローカス」の主人公(二木聡)は高校1年生になったばかりの男の子で、将来の進路のことや女の子との恋愛のことで、いつも思い悩んでいます。

青春って、こんなに苦しかったのか?と思うほど、苦悩の日々が続くというストーリーですが、実際には、幼馴染の女の子(阿見志保里)と仲良しだったり、下宿の仲間(長尾友幸)と親友だったりと、意外とリア充。

ある程度、恵まれている中での苦悩というところが、この「星のローカス」という作品なのかもしれませんね。

連載は、主人公の男の子の、高校入学から卒業までの3年間を描いて完結します。

この漫画の特徴は、すべての物語が、星と神話になぞらえる形で綴られていること

下宿仲間の親友・長尾友幸の趣味が天体観測で、神話にも詳しいことから、高校生活のいろいろな出来事が、ギリシア神話になぞらえて描かれるという設定なんですね。

いわゆるラブコメではありますが、ギリシア神話の話なんかが入ったりすると、ファンタジーの要素も強めかなあという感じになります。

コミックスは全5巻。

単行本には「青春ロマンコミックス」と書かれていました(なるほど~)。

深夜ドラマ「ハイポジ」と「星のローカス」

つい最近、テレビ番組の中で「星のローカス」を発見しました。

それは、テレビ大阪の真夜中ドラマ「ハイポジ 1986年、二度目の青春。」です。

テレビ大阪の真夜中ドラマ「ハイポジ 1986年、二度目の青春。」テレビ大阪の真夜中ドラマ「ハイポジ 1986年、二度目の青春。」

46才の中年男性が、16才の自分の中へタイムスリップしてしまうという設定の物語ですが、主人公がタイムスリップした高校1年生の自分の部屋の本棚に並んでいた漫画が、『タッチ』(あだち充)と『星のローカス』

主人公は、リストラされたときも、会社の机の引き出しの中から『タッチ』を片付けて去っていきますが、『星のローカス』は、本棚に並んでいるシーンが映し出されるだけ。

誰か解説してやってくださいよ~(笑)

ていうか、『タッチ』完結は1986年だから、ドラマの設定的にも分かるんですが、1984年完結の『星のローカス』が、なぜ『タッチ』と一緒に並んでいるのか?

おそらく、中学時代の主人公(天野光彦)は、小山田いくの作品にハマっていたに違いない。

『すくらっぷ・ブック』とか『ぶるうピーター』とか、読んでいたに違いない。

そして、リアルな高校生になって、再び読み返しているのが、高校生が主人公の『星のローカス』だった、というのが、管理人の推測です。

はっきり言って深読みしすぎですが、『タッチ』と違って浮上することの少ない名作『星のローカス』がドラマに登場したときはうれしかったです(笑)

ということで、今回は、コミックスの巻数に沿って、サブタイトルと簡単なあらすじをご紹介しながら、管理人の個人的な観想を綴っていきたいと思います。

星のローカス(第1巻)あらすじと感想

「星のローカス」第1巻は、昭和57年1月、秋田書店から刊行されました。

LOCUS・1 雪のシリウス
LOCUS・2 白い乙女・スピカ
LOCUS・3 アリアドネーの北のかんむり
LOCUS・4 コル・スコルピオ
LOCUS・5 ふり向いたオルフェウス
LOCUS・6 セレーネのため息
LOCUS・7 ペガサスは空へ

主人公の二木聡は、星恵高校機械科の1年生。

絵を描くのが好きで、本当は普通科の高校から美術大学への進学を志望していたのですが、町工場(セレス製作)を経営している父の意向に従って、機械科へ進学したばかり。

聡の苦悩は、そんな高校生活のスタートから始まっています。

小山田いく「星のローカス」第1巻小山田いく「星のローカス」第1巻

一方、幼馴染の阿見志保里は、女だてらにメカ好きで、聡の父親と共同経営している町工場を継ぐために、聡と同じ星恵高校の機械科へ入学していました。

さらに、もう一人、一人暮らしを認めてもらった聡と同じ下宿で暮らしているのが、同じく星恵高校の機械科1年の長尾友幸。

志保里は幼馴染の聡に恋愛感情を持っていますが、聡は志保里から自由になりたいという気持ちで、いろいろな女の子に恋をします。

一方、志保里に思いを寄せる長尾は、聡の恋愛を様々な形で支援しますが、聡に一途な志保里は、なかなか長尾になびいてくれません。

そんな三角関係の中に割り込んできたのが、大人っぽい女の子の祖父江夕子。

聡は夕子とキスをする仲となりますが、恋人関係にまでは発展せず、以後、この4人を中心として、「星のローカス」の物語は進んでいきます。

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星のローカス(第2巻)あらすじと感想

「星のローカス」第2巻は、昭和57年8月、秋田書店から刊行されました。

LOCUS・8 沈みゆくひとつ星
LOCUS・9 暗黒星雲
LOCUS・10 コーヌ・コピア
LOCUS・11 赤い目の従者
LOCUS・12 セント・エルモの火
LOCUS・13 うみへびという名のヒドラ
LOCUS・14 つみほろ星
LOCUS・15 涙落とすか蛍火の神

美人部長(小城あい子)の好意から、美術部の部室を使えるようになった聡は、あきらめかけていたイラストを再開しますが、志保里の激しいジェラシーから、平穏な暮らしは再び大騒動に。

小山田いく「星のローカス」第2巻小山田いく「星のローカス」第2巻

長尾の誘いで直江津まで旅行に出かけますが、「天輪荘」の娘(大日向五色)と、ちょっといい雰囲気になります。

そして、2年生に進学した聡の前に現われたのは、美術部の新入生(三戸田明日音)でした(この女の子がかわいかった!)、、、

次から次へとかわいい女の子が現れては、聡とちょっといい雰囲気になりますが、最後に聡が戻っていく場所は必ず志保里のもと。

まるで、志保里との愛を育むために、他の女の子の方を向いているのではないかと思えるくらい、二人は「雨降って地固まる」を繰り返していきます(笑)

聡の恋愛問題と並行する形で現れてきたのが、正体不明な親友・長尾友幸の謎。

聡と志保里は、高校に入ってから、長尾と知り合ったのですが、やがて二人は、実は長尾は、かつての幼馴染(渡瀬良一)ではないかと考えるようになります。

星のローカス(第3巻)あらすじと感想

「星のローカス」第3巻は、昭和58年6月、秋田書店から刊行されました。

LOCUS・16 水浴のカシオペア
LOCUS・17 五色の短冊
LOCUS・18 日輪車
LOCUS・19 北十字星
LOCUS・20 埋ず火の星
LOCUS・21 足の下の栄光
LOCUS・22 行方知れずのプレヤード
LOCUS・23 冬の赤いバラ

プールで水泳の練習をしている三戸田明日音の美しさに見とれた聡は、女性生徒から痴漢だと非難されますが、明日音によって誤解を解くことができました。

この事件をきっかけに、聡は正式に美術部に入部しますが、地区展に落選して落ち込んだりと、至難の道は続きます(自己嫌悪癖があるんです、この男の子は)。

小山田いく「星のローカス」第3巻小山田いく「星のローカス」第3巻

聡の周辺では、長尾といい雰囲気だった夕子が、まじめ人間(橋詰)と付き合ったり、美術部の先輩・小城あい子が同学年の男性(樋口)と接近したり、かつてデートした女の子(瀬ヶ崎美鈴)が再び登場したりと、新たな人物が次々と登場してきて、青春群像のエピソードが満載。

小山田いくの漫画は、登場人物が多い方がおもしろいと思います。

周辺キャラクターのエピソードをしっかりと織り込むことで、メインキャラクターの物語が明確に浮き上がってくるし、そもそも、青春って誰もが主人公なんだから、いろいろなストーリーが同時進行的に折り重なっているはずなんですよね。

それにしても、大人っぽい先輩・小城さんからはセミヌードを見せつけられたり、かわいい後輩・明日音ちゃんからは、正式に美術部へ入部するよう真剣に迫られたり、聡ってすっごいモテ男くんなんです。

旅行すれば旅館の娘の五色さんといい仲になってしまうし、幼馴染の志保里ちゃんは相変わらず聡一途だし。

今読み返してみると、ちょっとやりすぎという感じがしないでもないですね(笑)

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星のローカス(第4巻)あらすじと感想

「星のローカス」第4巻は、昭和59年1月、秋田書店から刊行されました。

LOCUS・24 泣き笑いの日々の証に
LOCUS・25 スパイカのスパンカー
LOCUS・26 宇宙ののぞき窓
LOCUS・27 時の蜃気楼
LOCUS・28 わたしはプシュケ
LOCUS・29 ポラリスは消えず
LOCUS・30 舞い上がる星の精霊
LOCUS・31 西の南斗

陸上部の大会のアナウンス役を頼まれた志保里は、世話役の後輩(武内)と怪しい関係になりますが、最後はやっぱり聡の元へと戻ってきます。

なんだかんだ仲良しの二人ですが、いよいよ高校3年生を迎えて、聡は真剣に進路のことで思い悩みます。

父親の反対を押し切って、デザインスクールへの進学を決意する聡ですが、一緒にデザインスクールへ進学するものだと考えていた仲間(根上)が高校を中退してしまったりと、なかなか人生はスムーズには進みません。

最後は、正体不明の謎の男・長尾友幸が、聡の父親と直談判をして説得しますが、、、

小山田いく「星のローカス」第4巻小山田いく「星のローカス」第4巻

女の子にはモテるけれど、自分の作品の欠点を指摘されたりすると、すぐに落ち込んでしまう、気弱な男子高生・聡。

ま、そんなところも、女の子にモテる要素なのかもしれませんね。

傷付いたり、立ち直ったり。

聡の高校生活は、幼馴染の志保里と謎の親友・長尾に支えられて、いよいよ卒業の時を迎えます、、、

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星のローカス(第5巻)あらすじと感想

「星のローカス」第5巻は、昭和59年5月、秋田書店から刊行されました。

LOCUS・32 逃げた牧神
LOCUS・33 M40幻想
LOCUS・34 トラペジウム
LOCUS・35 新星座起源
(読切短編)ヘスペリス・ブルー
(読切短編)ドリュアス エン
(読切短編)雪のッポックル

最終巻(第5巻)、「星のローカス」は4編収録で、その他に読切短編が3作品収録されています。

聡の進学問題が決着したものの、聡の世話役だった長尾友幸の進路は不明のまま。

そこに、長尾の中学時代を知っている女の子(立明葉)が登場して、正体不明だった長尾の謎が、いよいよ明らかになっていきます、、、

小山田いく「星のローカス」第5巻小山田いく「星のローカス」第5巻

全編読み終えて感じたことは、この漫画の登場人物は、一人一人が星座を構成する星のような存在だったんだなということです。

すべての星座には、星座を構成する星があって、すべての星座には神話に基づく物語があります。

同じように、すべての高校生には物語があって、様々な友人や恋人たちと、新しい星座を作り続けているのです。

夜空に浮かぶ星座と違うのは、それが永遠ではないことで、僕らの星座は、年を取りながら少しずつ、あるいは急激に変わっていきます。

いつか変わってしまう星座だからこそ、今を大切にしたい。

「星のローカス」には、そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。

現在の若い方にも読んでほしい、そんな青春ファンタジーです。

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まとめ

ということで、以上、今回は、小山田いくの「星のローカス」をご紹介しました。

最初から最後まで違和感があったのは、彼らは高校生なのに、やたらと酒盛りをする場面が描かれていること。

もう高校生なんだから、お酒くらい当然だよねっていう感じで、とにかく、毎晩飲んだくれています(笑)

そもそも、高校生の溜まり場がスナック「赴嶺夜(フレイヤ)」だったとか、夕子ちゃんなんか、女子高生なのに「お酒はもうやめたわ」とか、高校生同士で「イケる口なんだろ?」とか、かなりオッサン化の著しい漫画です。

一方で、性的な描写は抑え気味で、セックスシーンはおろか、女性の裸さえ登場しません。

せいぜい、美術部の先輩・小城さんが下着姿になったりするくらいで(しかも上半身だけ)、その辺りは高校生向けの漫画だなあという感じがしますが、飲酒とのギャップが激しすぎる(笑)

昭和の日本って、高校生の飲酒がスタンダードなくらい、お酒天国だったってことでしょうか。

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