音楽

浜田省吾「J.BOY」サブスクでは聴けない80年代名作のオリジナル音源

久しぶりに浜田省吾を聴いた。

浜省のCDは全部持っているけれど、今はサブスクで手軽に聴ける。

超絶有名なアルバム『J.BOY』の中の「八月の歌」は、毎年8月になると聴きたくなる名曲だ。

雷鳴、夕立、そして、イントロへと、、、いや、ちょっと待てよ。

「八月の歌」のイントロ部分に、こんな小芝居みたいな効果音が入っていたっけ???

高鳴るサックスの後に、懐かしい浜田省吾の声が流れ出す。

砂浜で戯れてる焼けた肌の女の子たち
俺は修理車を工場へ運んで渋滞の中
テレビじゃこの国豊かだと悩んでる
だけど俺の暮らしは何も変わらない、、、

歌詞カードなんか見なくたって、今でも歌える。

なんたって、あの頃、『J.BOY』は、プレイヤーの針が擦り切れるくらいに、何度も何度も繰り返し聴いたレコードだったのだから。

1986年、『J.BOY』の秋

1986年の春、札幌市内の大学に進学して、一人暮らしを始めた。

その年の9月に、浜田省吾のオリジナルアルバムとしては初めての2枚組となるアルバム『J.BOY』が発売された。

CDプレイヤーを持っていない僕は、このアルバムをLPレコードで予約して買った。

その夏、アルバム『J.BOY』発売に先行して、12インチシングル「路地裏の少年」が発売されている。

1986年の夏、僕は発売されたばかりの新録「路地裏の少年」を繰り返し聴きながら、秋に出る新しいアルバムの発売を待ちわびていたのだ。

だから、1986年の秋は、僕にとって当たり前のように『J.BOY』の秋となった。

1986年9月に発売された浜田省吾『J.BOY』 1986年9月に発売された浜田省吾『J.BOY』

幅広い浜田省吾の世界

現代的な戦争を歌った社会派ロック「A NEW STYLE WAR」。

1985年のシングル曲「BIG BOY BLUES」。

名曲「いつかもうすぐ」の流れを汲むフォークロック「AMERICA」。

僕は今でも脳内で、レコードに針を落とした瞬間からのサウンドの流れを克明に再現できる。

B面のファースト・トラックは、骨太なロックンロール・サウンド「勝利への道」。

バブル時代の到来を予感させる「A RICH MAN’S GIRL」もあったりと、このアルバムは、実に幅広い浜田省吾の世界を再現していた。

2枚目C面は、その最たるもので、若き日の浜田省吾が作ったという「19のままさ」「遠くへ」「路地裏の少年」が収録されている。

「路地裏の少年」は先行12インチシングルとは、さらに別バージョンという手の込みよう。

たった3曲しかないのに、このC面は、浜田省吾というアーチストの魅力を、より味わい深いものにしていたと思う。

そして、レコード盤を引っ繰り返してD面の一曲目に登場するのが「八月の歌」だった。

戦争加害者としての日本を歌った「八月の歌」

八月になるたびに
“広島—ヒロシマ”の名のもとに
平和を唱えるこの国
アジアに何を償ってきた
俺たちが組み立てた車が
アジアのどこかの街角で
焼かれるニュースを見た、、、

戦争被害者としての日本ではなく、戦争加害者としての日本を歌う、このヘヴィな曲は、2曲のラブソングを挟んで、タイトル・トラック「J.BOY」へと繋がっていく。

1986年当時、ここまでストレートに戦争を(しかも、具体的に太平洋戦争を)歌うロックシンガーは、少なくとも日本のメジャーシーンでは他にいなかったはずだ。

「A NEW STYLE WAR」と「八月の歌」、そして、<頼りなく豊かなこの国>を歌った「J.Boy」—

19才だった大学一年生の僕は、『J.BOY』というアルバムによって、社会的な立場を鮮明にする浜田省吾というアーチストに、すっかりと洗脳されてしまった。

そして、僕の周りには、同じように浜田省吾のタフな姿勢に影響を受けた少年たちが、少なからず存在していたのだ。

今も、このアルバムを聴くと、あの頃のことが鮮明に思い出される。

だからこそ、サブスクで「八月の歌」のイントロを聴いた瞬間は驚愕した。

てっきり違う曲だと思ったくらいだ。

いや、イントロだけじゃない。

「八月の歌」そのものが、当時とは異なる音源で収録されているのだ。

1986年、THE FUSEのメンバーもさすがに若い 1986年、THE FUSEのメンバーもさすがに若い

サブスクの『J.BOY』はリミックス・バージョン

調べてみると、どうやらサブスクで聴ける『J.BOY』は、サブスク用にリミックス、リマスターを施したバージョンらしい。

なるほどね。

サブスクって、そういうことがあるのか。

これはこれで悪くない。

まさか、今になって新しい「八月の歌」を聴くことができるとは思わなかったし、古いファンにとっては、これもひとつのサービスということなんだろうな。

すごい。

だけど、と僕は思う。

僕が聴きたかった「八月の歌」は、この「八月の歌」じゃない。

僕が聴きたいと考えている「八月の歌」は、あの1986年の秋に聴いた「八月の歌」だったのだ。

サブスクで手軽に懐かしい音楽を聴くことができるようになったことはうれしいけれど、音源がさりげなく当時とすり替えられているのは、どうにも釈然としない。

まあ、古いサウンドを聴きたい人は、当時のレコードなりCDなりを聴けばいいということなのかもしれないけどね。

浜田省吾の『J.BOY』は昔ながらのCDで聴きたい

満たされぬ思い
このからまわりの怒り
八月の朝はひどく悲しすぎる
No winner. No loser.
ゴールなき闘いに
疲れて あきらめて
やがて痛みも麻痺して
Mad love. Desire.
狂気が発火する
暑さのせいさ
暑さのせいさ、、、

結局、僕は古いCDを持ち出してきて、あの頃のままの『J.BOY』を聴くことにした。

ピアノから始まる「八月の歌」。

これだから、大人は融通が利かないんだ、と言われるだろうか。

ところで、サブスクで聴くことのできるシングルバージョンの「BIG BOY BLUES」も、この間まで、当時の音源とは別物だったけれど、さっき聴き返してみたら1985年版になっていて改めて驚いた。

あれはあれでレア音源だと思っていたけれど、今となっては既に聴くことができないらしい、、、

なんだか混乱しそうだぞ(笑)

いちいち驚いていてはキリがないので、浜田省吾の作品は、やはり昔ながらのCDで聴くのが一番らしい。

それが、昔ながらのファンの流儀というものなんだろうな。

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バブル世代のビジネスマン。読書と音楽鑑賞が趣味のインドア派です。お酒が飲めないコーヒー党。洋服はアーペーセーとマーガレット・ハウエルを愛用しています。