コロナ禍以降、密を避けることのできるキャンプが人気なんだとか(実際は屋外でも感染するようですが)。
今でこそ、定番レジャーとなったオートキャンプですが、日本でオートキャンプという言葉が定着したのは、1990年代前半のこと。
今回は、90年代のオートキャンプブームを牽引した雑誌『アウトドア』についてご紹介します。
日本のキャンプの歴史
90年代のオートキャンプの紹介の前に、日本のキャンプの歴史を簡単に振り返っておきたいと思います。
もともと、日本でキャンプといえば、山登りのときにテントを担いでいって山の中で宿泊するという山岳キャンプのことでした。
あるいは、渓流釣りの人たちが、テントを担いで沢を登り、山中で宿泊するキャンプもありましたが、長く日本では、キャンプと言えば「野営」という言葉がぴったりだったようです(古いキャンプ場は、未だに野営場と呼ばれている)。
1970年代、若者の間にバックパッキングが流行し、カニ族なる旅行者が登場する頃、全国的な秘境ブームもあって、キャンプは夏の人気レジャーとなりました。
若い男女のグループが、キャンプファイヤーの周りでフォークダンスを踊ったり、フォークソングを歌ったりしたのも、この時代のことです。
ちなみに、日本で初めて本格的なオートキャンプを紹介したのは、『ビバ・オートキャンプ』(技術書院、1971)ですが、自動車もキャンプ道具も充分ではない当時の日本人には早すぎる提案だったようです。
1980年代に入って、庶民のレジャーが多様化する中、和製オートキャンプが少しずつ動き始めますが、時代がバブル景気を迎える中、人々の興味関心は国内外のリゾート施設に集中。
そんなリゾートブームの陰で、キャンプグッズは着々と成熟を見せ、バブル崩壊後のレジャー界で一気に主役に躍り出たのが、このオートキャンプだったのです。
アウトドアライフ・マガジン『Outdoor』と田中律子
今回、ご紹介する『アウトドア』は、山と渓谷社が発行しているアウトドア専門雑誌です。
この雑誌、バックパッキングが人気だった1976年に創刊した『OUTDOOR SPORTS』(別冊山と渓谷)が発祥で、アウトド需要の変遷を経て、1990年代前半には、オートキャンプを全面に打ち出す総合アウトドア情報誌となっていました。
90年代『アウトドア』の表紙は、タレントで歌手の田中律子さん。
Wink、西田ひかる、高岡早紀などと同期で「ポスト杏里」として売り出されますが、なかなかメジャーになれない中、90年代初頭のアウトドアブームの中でブレイク。
自著『キャンプで逢いましょう』は映画化もされるほどの人気となりました。
90年代オートキャンパーの記憶に残る、元気いっぱいの女性タレントです。
山と渓谷社『アウトドア』月刊化
さて、そんなオートキャンプの時代に月刊雑誌として生まれ変わったのが、山と渓谷社のアウトドア・マガジン『アウトドア』です。
オートキャンプブームの盛り上がりと連動する形で、1993年5月、『アウトドア』は月刊第1号を刊行します。
特集は「オートキャンプの時間です。」。
当時は、本当にオートキャンプ推しがすごくて、アウトドア初心者の若者も、とにかくオートキャンプに関する情報を熱望している時代でした。
キャンプグッズの紹介やらキャンプのノウハウやらキャンプ場情報やら、とにかくアウトドアに関する様々な情報を、僕たちは、この雑誌から学んだものです。
それでは、当時の『アウトドア』では、どんな情報が紹介されていたのか、以下、詳しくご紹介していきたいと思います。
誌上テレビ「オートキャンプの時間です」
『アウトドア』月刊化第1号の特集は「オートキャンプの時間です」。
「本邦初! 誌上テレビ(?)」のキャッチコピーが付いていて、テレビ番組仕立てとなっているのが特徴でした。
雑誌のターゲットは、小さな子どもがいるファミリーが中心で、次に若い夫婦やカップルという感じだったような気がします。
1970年代にバックパッキングを提唱した『OUTDOOR SPORTS』とは、すっかり別の雑誌という感じですね。
ともかく、日本の多くの読者が、この雑誌でファミリー・キャンプを学んでいたのです。
報道スペシャル「オートキャンパーは、いま」
オートキャンプ場の様子を取材した「オートキャンパーは、いま」。
お仕事仲間キャンパー、お友達キャンパー、ヤンググループ・キャンパーなど、様々なカテゴリーのキャンパーが登場しています。
若い男女グループの夕食はパエリアにサラダと、なかなかオシャレ。
クイズ「キャンパー101人に聞きました」
これは、もちろん、関口宏の人気クイズ番組のパロディですね(笑)
「キャンプ好きの女の人101人に聞きました」の「キャンプでどんな遊びをやってみたいですか?」では、1位がなんと釣り。
ルアーフィッシングやフライフィッシングといったスタイリッシュな釣りが定着し始めて、女性にも支持されつつあった時代でした。
ドラマ・スペシャル「オートキャンプへ行こう」
大学で同じサークルに入っている3人組がオートキャンプへ出かけるという青春ドラマ。
というのは、もちろんネタで、ドラマ仕立てで、オートキャンプのノウハウを紹介しています。
当時の『アウトドア』は、こんなハウツー企画がお役立ちでした。
この青春ドラマ、キャンプファイヤーの写真がすごくいいです。
当時のオートキャンプには、ウイングタープが必需品だったんですよね。
Outdoor お茶の間ショッピング
テレビショッピング形式でお届けするキャンプグッズの紹介コーナー。
90年代初頭のキャンプグッズ事情が、とてもよく分かります。
ちなみに、イワタニ・プリムスのガス燃料を使ったツーバーナーは、当時、我が家で愛用していたアイテム。
コンパクトなのに火力が強くて機動性もありと、本当に重宝しました。
野田知佑 アウトドアよろず相談「本日順風」
『アウトドア』の人気連載企画だった野田さんの人生相談。
くだらない質問には「バカめ」と一喝する豪快さが特徴でした。
まあ、野田さんに相談するのがどうかと思いますが、、、
ちなみに『週刊プロレス』でも藤原喜明の人生相談みたいなコーナーがありましたね(笑)
リトル・バックパッカー君「カナディアン・カヌーで遊ぶ」
アウトドアスポーツのハウツーを紹介する連載漫画「リトル・バックパッカー君」は、「カナディアン・カヌーで遊ぶ」。
「バックパッカー君」という名前が、オートキャンプの時代には、なかなか渋く感じられました。
『アウトドア』の源流がバックパッキングにあることを示す、貴重な証拠ですね。
NEW Jimny 誕生「大好きを、探しに行こう。」
最後に、裏表紙の広告は、スズキのジムニー。
街中も元気にスイスイと走れるオートマチックとパワステを新搭載。
ヘビーデューティーなジムニーにも注目が集まる、そんな時代でした。
バブルが崩壊したとはいえ、あちこちへ遊びに行こうというエネルギーに満ち溢れている。
こうして振り返ってみると、90年代初頭の日本って、すごく元気が良かったんですね。
まとめ
ということで、以上、今回は、90年代のオートキャンプブームを牽引した雑誌『アウトドア』月刊化第1号をご紹介しました。
あの頃のアウトドアブーム、本当にすごい熱気でしたね。
久しぶりにオートキャンプへ行きたくなりました!