釣りバカ日誌番外編「佐々木くん」昭和40年代・高度経済成長期の青春

北見けんいちの代表作「釣りバカ日誌」は、1980年代からずっと愛読している漫画だ。

本編ももちろん面白いけど、番外編というやつがいい。

僕が特に好きなのは、佐々木課長の新入社員時代を描いた「佐々木くん」。

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コミックスは1997年発行(釣りバカ日誌番外編5「佐々木くん」)になっているから、これさえも、随分と古い作品になってしまった。

最初のエピソードは、1966年(昭和41年)の夏、大学生・佐々木くんの就職活動から始まる。

学園紛争で盛り上がる中、友人たちは早くから就職活動を始めていたけれど、そんなことは露知らず。

佐々木くんは麻雀とパチンコに明け暮れる日々だった。

何とか鈴木建設に拾ってもらった佐々木くんが入社するのは、翌年の1967年(昭和43年)。

僕(当ブログの管理人)が生まれた年だ。

入社後の佐々木くんも、おっちょこちょいの失敗続きで、ダメな新入社員のユーモア奮闘記という形で、物語は進んでいく。

この漫画が楽しいのは、高度経済成長期を背景に鈴木建設が発展していく中で、新人・佐々木くんも一緒に成長していくというところにあるのではないだろうか。

テーマは新入社員かもしれないが、著者が描きたかったのは、明らかに昭和40年代の青春にあると思われるからだ。

新人投手の連勝記録を24年ぶりに記録した巨人の堀内投手。

世界一のタンカー「出光丸」の進水式(海運業に就職するのが憧れの時代だった)。

学園祭で森山良子が歌った「この広い野原いっぱい」。

赤塚不二夫の「天才バカボン」に夢中になって遅刻した入社式。

♪ドライブウェイに春が来りゃ、レナウン娘がワンサワンサ。

発売されたばかりの少年ジャンプと「ハレンチ学園」。

新宿西口の反戦デモ。

東京府中の三億円強奪事件。

高倉健主演のやくざ映画「緋牡丹博打」。

大阪万博の空中ビュッフェ。

昭和40年代を彩る様々な風物が登場しては、佐々木くんの日常生活と絡んでいく。

釣りバカ日誌番外編「佐々木くん」釣りバカ日誌番外編「佐々木くん」

「日本の未来は明るい」と誰もが信じて働いていた昭和40年代は、僕が生まれて育った時代だ。

高度経済成長期というと、歴史の中の言葉のようだけれど、そんな時代に自分が生きていたということが、何だか不思議な感じがする。

僕の両親が結婚したのは、僕が生まれる一年前の1966年(昭和41年)。

釣りバカ日誌の佐々木くんが大学四年生で、就職活動をしていた頃のことだ。

翌年に長男(つまり僕のことだ)が生まれて、昭和44年に次男が生まれた。

高度経済成長という時代の流れの中で、我が家の家計も、きっと成長していたんだろうな。

もちろん、就学前の幼児だった僕に、高度経済成長の記憶はない。

記憶の中の昭和40年代はモロクロームで、そして、十分に貧しい時代だった。

なにしろ、僕たちの世代は、もっと貧しかった時代を知らない世代なのだ。

とりあえず、物心がついたとき、家にテレビはあったし、自動車もあった(おそらく初代のホンダ・シビックだった)。

マイカーでのドライブに代表されるようなレジャーブームの中で、我が家は確かに高度経済成長の時代を満喫していたのかもしれない。

といっても、夏休みに日帰りで海水浴へ行くくらいが、我が家のせいぜいのレジャーだったけれど。

釣りバカ日誌番外編「佐々木くん」には、そんな時代の青春が、たっぷりと描かれている。

昭和レトロというと、なんとなく昭和30年代が主役のような印象があるけれど、昭和40年代には昭和40年代の美しさがあった。

「佐々木くん」を読みながら、僕は自分が生まれ育った時代を、改めて好きになったような気がする。

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kels
バブル世代のビジネスマン。読書と音楽鑑賞が趣味のインドア派です。お酒が飲めないコーヒー党。洋服はアーペーセーとマーガレット・ハウエルを愛用しています。