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読書感想文「大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた」

今さらですが、『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』という本を読んで爆笑したので、ここに感想を書いておきます。

分かる人には分かるし、ハマる人にはハマる、ネタの宝庫。

昭和カルチャーの勉強をしたい人にもお勧めです。

樋口毅宏って誰?

樋口毅宏は『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』という本を書いた人です。

本職は小説家で、『さらば雑司ヶ谷』『二十五の瞳』などの作品がありますが、『タモリ論』『さよなら小沢健二』など小説以外の著作の方が有名かもしれません。

1971年(昭和46年)生まれ。

ウィキペディア情報によると、『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』(2020年)が一番新しい著作のようです。

『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』って、どんな本なの?

『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』は、『散歩の達人』という雑誌に連載されたエッセイを書籍化したものらしいです。

「昭和40年代男子の思い出エッセイ」というキャッチコピーがあります。

書名の「大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた」は、収録エッセイのタイトルで、大江千里と渡辺美里以外の話もたくさんあります。

樋口毅宏『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』 樋口毅宏『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』

大江千里のファンとか渡辺美里のファンが読んでおもしろいかどうかは微妙。

著者も言っていますが、本書は「夜長に淡々と、お酒でもちょっと飲みながら、寝る前に読むための本です」。

「何年かに一度会う腐れ縁の友と、だらだらダベる感じで読んで下さい」。

「センチメンタルな自分語りが多くて恐縮です」→まさしく、そのとおりです。

真面目に読むとつまらないですが、暇つぶしのつもりで読むと、結構おもしろいです。

特に、昭和40年代生まれの男子。

胸にキュンと刺す痛みを覚えたりするような場面が、きっとあります。

現実逃避したい夜に、そっと読んでみてください。

『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』のあらすじ

『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』はエッセイ集なので、あらすじはありません。

著者の思い出話が延々と続きます。

昭和40年代生まれの思い出エッセイなので、登場するカルチャーは、1980年代が中心で、1990年代がそこに続きます。

まあ、1990年を中心とした前後数年間の物語と言っていいと思います。

佐野元春や大江千里、長州力など、懐かしい名前がいっぱい 佐野元春や大江千里、長州力など、懐かしい名前がいっぱい

武道館、BOØWY、村上春樹、佐野元春、久米宏、新日本プロレス、大江千里、尾崎豊、渡辺美里、エコーズ、タッチ(あだち充)、ジャッキー・チェン、サザンオールスターズ(桑田佳祐)、中島みゆき、長州力、松田聖子。

J.POPとプロレスを中心に繰り広げられる80年代の懐かしい日々。

どんなにつまらないことでも、その時代を生きた人にとっては、グッと胸にこみあげてくるものって、あるんですよね。

だけど、同世代の方ばかりではなく、当時を知らない若い世代の方にもお勧めしたい。

最近は「80年代ブーム」とか言うし。

誰も語らない「裏昭和史」みたいな感じで読んでみてもいいと思います。

1989年から先は「裏平成史」ですが。

以下、自分で「なるほどな~」と感心した部分を中心に、『大江千里って渡辺美里と』のポイントをメモっておきたいと思います(備忘録)。

BOØWY「NO.NEW YORK」はゲイの娼婦の歌

BOØWYの「NO.NEW YORK」がゲイの娼婦の歌だとは知りませんでした。

<80年代のニューヨーク、AIDSの脅威ピーク>って、言われてなるほどって感じ。

BOØWYの名前の由来はデヴィッド・ボウイから。

村上春樹『ノルウェイの森』の緑はエロカワだった

1980年代の大ベストセラーとなった、村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだ著者の感想。

童貞の僕にとって緑はエロカワだったし、登場人物の大半が自殺という設定に心地よい喪失感を得た。

もっとも、数年後に読み返したとき、いつもセックスの話ばかり振ってくる緑にげんなりしたそうです。

管理人も<緑>の下ネタには、ちょっと辟易しました。

っていうか、『ノルウェイの森』はセックスの話が多すぎ(『国境の南 太陽の西』よりはマシですが)。

高田馬場の交差点で村上春樹とすれ違ったときに、声をかけて握手してもらったという、著者の思い出が紹介されています。

詩人で神だった佐野元春

80年代のティーンエイジャーにとって、佐野元春って<神>だったんですよね。

「ヤングブラッズ」がスタイル・カウンシルの「シャウト・トゥ・ザ・トップ」の、「グッドタイムス&バットタイムス」のイントロがギルバート・オサリバンの「アローンアゲイン」の、まんまパクリとわかっても、眼鏡とスーツとネクタイがエルビス・コステロの意匠と気付いても、僕には何らノー・ダメージだった。

当時、佐野元春や浜田省吾が好きだっていうと、必ず洋楽ファンから激しいバッシングを受けたものです。

洋楽のオマージュとかサンプリングが多かったから(笑)

でも、この本を読みながら、ニューアルバム『或る秋の日』(2019年)を聴いてみたら、全然悪くありませんでした。

昨年(2021年)の「街空ハ高ク晴レテ」も好きだったし、老いた元春も悪くないと思います。

BOØWY、村上春樹、尾崎豊、、、80年代のアイコンが次々と登場 BOØWY、村上春樹、尾崎豊、、、80年代のアイコンが次々と登場

金曜夜8時は「ワールドプロレスリング」

昭和の男子を悩ませた「金曜夜8時問題」。

とにかく『太陽にほえろ!』と『3年B組金八先生』と『ワールドプロレスリング(新日本プロレス)』が視聴率を争っていたんだから、すごい時代です。

猪木信者だった中学生の僕は、もちろん『ワールドプロレスリング』派で、メインイベントの猪木戦の途中で中継(生放送)が終わるたびに、モヤモヤとしていたものです(そのくせ、スポンサーのテロップが流れる頃には、必ず猪木がリング上で勝利の雄叫びを上げていた)。

テレビ朝日チャンネルで、小学生の頃に熱狂していた試合の数々を、およそ30年ぶりに観たんですわ。びっくり。悪い意味で。ちっとも痛そうじゃない。技が当たってない。体を張ってない。グダグダで展開がなってない。これと同じような試合をやったらネットで叩かれまくること確実です。特に猪木。酷いわ。手抜きにも程がある。

まあ、そりゃあ、そうでしょうね。

「男ユーミン」と呼ばれていた大江千里

タイトルにもなっているくらいだから、著者は大江千里が大好きなんですね。

僕はちっとも好きじゃなかった。

当時、付き合っていた女の子が、大江千里のファンだったから。

何かというと、大江千里と比較されて、イライラしていたくらい。

だけど、この本を読みながら、当時の大江千里を聴いていたら、意外と悪くないってことが分かりました。

ちなみに、大江千里が「男ユーミン」と呼ばれていたことを、本書で初めて知ったのは、僕です。

尾崎豊が死んだ日

読みながら感じていました。

この本の著者は、尾崎豊には、あまり思い入れがないんだなって。

だけど、尾崎豊について書かなくてはならない。

そんな使命感に溢れたエッセイです。

渡辺美里の初期はすべてが名曲だった

世代が微妙にズレているせいか、僕は、渡辺美里にはあまり思い入れがないんですよね。

青春期の音楽というのは、4歳も違うと、結構変わってくるものなんですね。

いつしかシンガーソングライターやバンドマンはアーティストと呼ばれるようになった。はっきり書くと「既成のアイドルでは満足できない多感な子たちの受け口」になった(でも実はアイドルなんだけど)

共感できたのが、80年代の「アーティスト」たちについての、この記述。

納得です。

「エコーズが好きでした」と告白することは、、、

本書で一番笑ったのは、この「エコーズ回」です。

「胸を張って好きと公言できないものこそ、本当に好きなもの」であって、本書の著者にとって、それが「エコーズ」というロックバンドだったという話です。

すっごく、よく分かります、僕もエコーズファンだったので。

エコーズって、なぜか、ファンであることを公言するのが恥ずかしいロックバンドだったんですよね。

長渕剛のファンっていうのも恥ずかしいけど、長渕の場合は「長渕好きだけど何か?」って開き直れる余白がありました(それでも恥ずかしいけど)。

エコーズとか辻仁成の場合って、カミングアウトするのが、本当に難しかったですから。

原因は、やはり、辻仁成の「熱さ(暑さ)」なんですよね。

ハローハロー、ディス・イズ・パワーロックステーション! 真夜中のサンダーロード、今夜も抑え切れないエネルギーを探し続けているストリートのロックンロール・ライダー! 夜更けの硬い小さなベッドの上で愛を待ち続けているスウィート・リトル・シックスティーン。愛されたいと願っているパパも、融通のきかないママも、そして、今にもあきらめてしまいそうな君にも、今夜はとびっきりご機嫌なロックンロールミュージックを届けよう。アンテナを伸ばし、周波数を合わせ、システムの中に組み込まれてしまう前に、僕の送るホットなナンバーをキャッチしておくれ。愛を! 愛を! 愛を! 今夜もオールナイトニッポン!(辻仁成のオールナイトニッポン)

これは、辻仁成好きだなんて、口が裂けたって言えないでしょう、恥ずかしすぎて。

女の子に知られたら絶体絶命です、ダサすぎて。

だけど、僕たちは、こんな辻仁成が(そしてエコーズが)大好きだったんですよね。

ちなみに、エコーズがイマイチ売れなかったのは、別に尾崎豊のせいではないと思います。

そもそも客層は被っていなかったし。

尾崎のようにバイクを盗む勇気も、学校の窓ガラスを割る勇気も、高校を中退する勇気さえもなかった中途半端な連中こそが、エコーズのリスナーだったから(僕のように)。

で、エコーズで大爆笑した後は、特段のポイントもなく、なんとなくフェードアウトしていくみたいにして、静かに読了。

やはり、前半部分におもしろいネタが固められているようです、この手の本は。

読み返すかどうかは微妙だけれど、とにかく、楽しませてもらいました。

特に、辻仁成ネタで。

エコーズのファンだったという人にはお勧めですよ。

まとめ

ということで、以上、今回は『大江千里って渡辺美里と結婚するんだとばかり思ってた』を読んだ感想をレビューしてみました。

土曜日の真夜中の暇つぶしには最高だと思います。

あまりにおもしろくて眠れなくなっちゃうかも?

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kels
ちょっと懐かしい本や雑誌、CDの感想を書いています。好きな言葉は「広く浅く」。ブックオフが憩いの場所です。