美容室で髪を切りながら(切ってもらいながら)、雑誌「Fine(ファイン)」を読んでいたら、SIONの「12号室」という曲が紹介されていた。
お洒落なファッション雑誌で(懐かしい)SIONに遭遇。
ちょっとびっくりしますよ。
「心に響いた歌詞の世界」にTOSHI-LOWが登場
問題の記事は「ファイン」2022年3月号「どうしても履きたいスニーカーがある!」という号に掲載されている。
それは「心に響いた歌詞の世界」というコーナーで、人生の中で心に響いた歌詞についてゲストが語り尽す、という連載企画だ。
今号のゲストは、BRAHAMAN、OAUのTOSHI-LOW。
そのTOSHI-LOWが選んだ歌詞のひとつが、SIONの「12号室」という曲だった。
障害者施設の頃を歌った SION「12号室」
SIONは、幼い頃に小児麻痺で右手が動かなくなってしまい、8歳のとき、無理やり小学校から障害者の施設へ入れられた、という体験を持つ。
そこは動物園だった
みんな変な形をしていた
仲間ですよと紹介された
こんがらがって涙が出てきた
こんな変なやつらの仲間でも友だちでもないと
SION「12号室」
あまりの動揺で食事も食べられなくなったSION少年は、病室のベッドの中でふさぎこむ日々が続いていた。
そんなある日、誰かがベッドの中に手紙を突っ込んでいった。
それが「彼女」だった。
「彼女は美しかった」と、SIONは何度も何度も繰り返して歌う。
彼女は美しかった
真っ白な顔をしてた
きれいな髪をしてた
声もやわらかだった
彼女の室はいつも花の香りがした
いい香りがした
ものすごくあたたかだった
彼女はすべてを持ってた
白く長いはずの二本の足を除けば
SION「12号室」
「12号室にいた優しいお姉さんは、誰よりもきれいだったんだけどな、トシロウ」と、SIONが言った。
「足がねえんだよ」
つまり、この歌は、まるっきりの実話を歌っているということだ。
♪今日からまた仲間ですと、先生が俺を紹介した~
僕が、この歌を知ったのは、もう大学を卒業してからのことではなかっただろうか。
作品自体は、1990年2月21日発売の5枚目のアルバム『夜しか泳げない』に収録されているから、そのとき僕は大学四年生で、もうすぐ大学を卒業しようとしたときということになる。
『夜しか泳げない』というアルバムの中で、「12号室」は圧倒的に光っていた。
当時の日本のロックシーンの中で、ここまで正面から障害者について歌った作品があったのだろうか。
しかも、SIONは社会的な(第三者的な)立場からではなく、当事者としての立場から、障害者施設の中で生きる人々について歌っていた。
突然、小学校から障害者施設へ移される。
少年にとっては、そこは動物園だった。
「こんな変なやつらの仲間でも友だちでもない」
だけど、きれいなお姉さんとの交際をきっかけに、少年は施設で暮らす人々と仲良しになっていく。
友だちができて、仲間もできた。
そして、ある日突然に、少年は小学校へ移される。
来たときと同じように、それはまったく突然に。
あの頃、僕はこの曲の中で、「♪今日からまた仲間ですと、先生が俺を紹介した~」とSIONが歌うフレーズが切なくて仕方がなかった。
無力感の中をさまよっている少年の孤独が、ひしひしと伝わってくるからだ。
デビュー10周年記念のビデオ『sion 10 video』
美容室から帰って、久しぶりに僕はSIONを聴こうと思った。
CDが並んでいる棚の中に『sion 10 video』を見つけた。
オリジナルは、1994年に発売されたデビュー10周年記念の映像ビデオで、2004年になってDVD化されたものだ。
最近のライブ(と言っても1994年)と昔のライブが行ったり来たりしている。
その頃はSIONも、まさか自分が2022年まで現役で歌っているかどうかなんて、想像したことさえなかっただろう(笑)
まあ、それは僕自身も同じことだ。
20代の若者は誰だって、50代になった自分の姿を想像したりなんかしない。
問題の「12号室」は、8曲目に入っていた。
おまけ
ちなみに、僕の嫁は今もSIONのツイッターをフォローしていて、時々、僕にSIONの近況を報告してくれます。