毎日、朝と夜に血圧を測る。
食卓テーブルに腕を乗せて、ぼんやりカップボードを眺める時間。
若い頃に集めたアンティークが、ぎっしりと並んでいるのは、もう10年くらい変わらない光景だろうか。
当時は、10年経ったら、古いモノの値段も上がっているかもしれないと、漠然と考えていた。
別に、投資目的で買ったわけではないけれど、集めて無駄ではなかった、という証がほしい。
あれから10年経って、骨董品の値段は上昇したのか?
答えは「ノー」である。
上がるはずがないのだ、ガラクタの値段なんて。
四十代から五十代にかけて血圧の数値は上がったけれど、骨董品の値段は上がらなかった。
むしろ、下がってんじゃね?みたいな。
ま、定年退職して、骨董屋さんを始めるまで、放出する予定もないから、別に良いんだけどさ。
憧れのセカンドライフまで、あと10年か。
10年経ったら、ガラクタの値段も少しは上がっているだろうか。
たぶん、上がっていない。いや、絶対に。
古いモノは好きだから集めたのであって、相場の上がることを期待して集めたわけではない。
だからこそ、蒐集品の値段が上がっていなくても、むしろ下がっていたとしても、それほど大きなダメージを受けることはないのだ。
例えば、真紅のティーポットは、昭和初期の東洋陶器製(いわゆるオールド東陶)。
当時のオールド・ノリタケ人気に、何となく反発して、頑なに東洋陶器ばかり集めていた頃に入手したもので、ティーポットとシュガーポットとミルクポットの3点セットで、2万円くらいしたのではないだろうか。
なにしろ、未使用の美品で、この機会を逃したら二度と出会えないかもしれないという強迫観念で、衝動買いしたものだ(多くの衝動買いの理由が強迫観念)。
真紅のボディ、金ラインの入った白い把手。
なんて豪華で、なんて贅沢なんだろう。
丸いフォルムもモダンで、2万円なんて全然高くないと思った。
今だったら悩んじゃうけど。
スタバのクリスマス・オーナメントやマグカップなんかと並べても、意外と溶け込む現代性。
いや、これは単に雑然としているだけだった。
いつからか、嫁の集めるスタバ・グッズが、神聖なるアンティーク・コーナーを侵食しつつある。
もしかすると、スタバ・グッズの方が値上がりしているんじゃないだろうか、、、
いやいや、無欲のコレクション。
値段のことを言うのはやめよう。
とりあえず、憧れのセカンドライフを始める10年後までは。
あ、ちなみに血圧は薬飲み始めてから、順調に下がってます(笑)