今回の青春ベストバイは、anan増刊だった『クウネル vol.1』です。
2002年4月1日号。
特集タイトルは「ここから始まる私の生活」でした。
Contents
新築マンションに引っ越しをした春
2002年(平成14年)の春、新しいマンションに引っ越しをした。
子どもが小学校へ入学するタイミングに合わせて、思い切って新築マンションを買ったのだ。
当時の僕は35歳になる年で、長期ローンを組むには、そのくらいが限界だったように思う。
近くに公立図書館があって、このマンションも図書館通いをしている途中で見つけた。
モデルルームを訪ねたときには、ほとんどの部屋が完売しているような状況だったけれど、ちょうどキャンセルで空いた部屋が一部屋だけあって(住宅金融公庫の承認が降りなかったと聞いた)、不動産会社は、早く完売にしてしまいたかったらしい。
大幅な値引きを提示されたから、当初の予算額を上回っていたものの、何となく勢いで契約してしまった。
無茶といえば無茶だけれど、あれから20年、大きなトラブルもなく、それなりに快適な都市生活を送っているから、まあ、運が良かったのだろう。
途中で借り換えをして、住宅ローンは60歳の年までに完済の予定となっている。
マンション購入を機に、インテリアとか雑貨のことにも関心が出てきた。
それまでは、家にいる時間よりも、アウトドアへ出かけている時間の方が多いくらいで、インテリアになんか、ほとんど関心もなかったが、せっかく新しい家へ引っ越すのだから、もう少し家の中のことにも関心を持とうと思ったのかもしれない。
新しい家に骨董品を持ち込むようになったのも、やはり、この引っ越しがきっかけだった。
同じ頃、マガジンハウスから『an・an』の増刊号として『ku:nel(クウネル)』という雑誌が発売された。
今回の青春ベストバイは、クウネルの実質的な創刊号とも言える、anan増刊の『クウネル vol.1』である。
『クウネル』から始まった新しい暮らし
世の中全体として、ライフスタイルへの関心が高まりつつある時代だったらしい。
住環境が大きく変わった自分にも、この雑誌は大きな影響を与えてくれた。
ちなみに、スローライフという言葉が、一般に広まり始めたのは2000年(平成12年)前後からで、『クウネル』の創刊も、この流れの中にあったように思う。
2003年(平成15年)、正式に『クウネル』が創刊したときのコンセプトは「当たり前の日常を丁寧に暮らす」だった。
特別な暮らしではなく、普通の暮らしの中にある幸せを見つけようとする工夫が、この雑誌の中にはあったのだろう。
雑誌『クウネル』は、やがて、2000年代の自分のライフスタイルに、大きな影響を与えて
くれる存在となっていくことになる。
初登場の『クウネル』の表紙には「ここから始まる私の生活」と書かれていた。
引っ越しをしたばかりの自分に、この言葉が響かないはずがない。
インターネット上でも、この新しい雑誌は話題になっていて、感度の高い女性を中心に「丁寧な暮らし」は、まるでブームのように広がっていった。
もっとも、ライフスタイルには全然関心のないうちの奥さんは、「エコ」とか「丁寧な暮らし」とかいう言葉を毛嫌いしていたから、『クウネル』の愛読者も、我が家では僕一人という状況ではあったけれど。
あれから20年。
『クウネル』はコンセプトを大きく変えて(2016年、もう昔の話だ)、まるで新しい雑誌になってしまい、僕の奥さんは相変わらず「丁寧な暮らし」という言葉を毛嫌いし続けている。
そして、僕は今日も、当時の『クウネル』を読み返しながら、あの頃のことを懐かしく思い出していた。
今にして思うと『クウネル』の創刊は、新しい時代の到来を告げる鐘のようなものだったのかもしれない。
2003年(平成15年)には、ライバル誌『天然生活』が登場し、様々に形を変えながらも、スローライフの流れは、令和という時代にまでたどりついた。
その源流の時代に、僕のマンションライフは偶然始まったということになる。
「丁寧な暮らし」はなかなか完成しないけれど、『クウネル』のおかげで充実した2000年代があった。僕は今もそう信じている。