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浜田省吾「I am a father」父親になっても俺たちは「夢見る少年」のままでいたいんだ!

浜田省吾「I am a father」父親になっても俺たちは「夢見る少年」のままでいたいんだ!

2005年(平成17年)、浜田省吾の新曲「I am a father」を初めて聴いたとき、泣きそうになったのは、自分が父親だったからなのだろうか。

本作「I am a father」は、我々の歌である。

「Money」で少年時代の我々を歌ったように、「J.Boy」でもうすぐビジネスマンになるだろう我々を歌ったように(あのとき、僕たちは大学生だった)、「I am a father」で浜田省吾は父親である我々を歌った。

グッとくる。

なぜなら、浜田省吾はいつでも「我々の歌」を歌い続けてきたからだ。

疑う余地もないくらい、浜田省吾はいつでも「俺たちの兄貴」だった。

迷ってる暇なんか無い 選んだ道進む
ムービースターじゃない
ロックスターでもない
明日は今日よりも良い日になることを信じてる
I am a father.

(浜田省吾「I am a father」)

「♪迷ってる暇なんかない、選んだ道、進む~!」と、浜田省吾は歌った。

あの頃、我々は30代で、社会の(多くの場合は企業の)中核となり、そして、それぞれに自分の選んだ道で傷ついたり迷ったりしていた。

本当は傷ついたり迷ったりしていることにさえ、気づかないようにしていたのかもしれない。

我々を取り巻いていたのは、自分を直視するにはあまりにもヘヴィすぎる毎日だったのだから。

気づかないフリをしなければ生き延びることができないほど、我々は過酷な現実を生きていた(それが、ポスト・バブル時代を生きる我々に与えられた宿命だったのだ)。

ぶっ倒れそうな夜に、たった一人で浜田省吾の音楽を聴いた。

額が床に付くくらい頭を下げ毎日働いてる
家族の明日を案じて 子供達に未来を託して
傷ついている暇なんか無い 前だけ見て進む

(浜田省吾「I am a father」)

見たくはない現実。

しかし、浜田省吾はあえて「俺たちの(傷だらけの)毎日」に光を当てた。

我々はもう「街を出たい」と願う家出少年ではなかったし、ビッグマネーを求めて叫ぶヤンチャな若者でもなかった。

我々は、企業の歯車となって家族を支えるだけで精一杯の、平凡な父親だった。

大切なことは、この日本社会を(本当に)支えているのは、ムービースターでもロックスターでもない、平凡な我々(父親世代)だったということだ。

そして、浜田省吾は、日本を支える父親世代に向けて大きな声で歌った。

「子どもたちを支えろ!」と。

「子どもたちを守り続けろ!」と。

初めて、この曲を聴いて泣きそうになったときの、あの気持ちは、いったいどこから来たものだっただろうか。

最後に浜田省吾は歌っている。

かつて夢見る少年だった
このオレも今ではFather

(浜田省吾「I am a father」)

我々が泣きそうになった理由、それは「我々は既に少年ではない」という当たり前の事実を、改めて突きつけられたからではなかっただろうか。

あの頃、いつまでも「路地裏の少年」のまま生きていくんだと信じていた我々も、既に「夢見る少年」ではなかった。

時代を受け容れろと、浜田省吾は歌っていた(今はもう80年代じゃないんだ)。

そこに、僕たちの切なさがある。

それは、かつて「19のままさ」で「♪僕はほらネクタイしめて僕が僕じゃないみたい~」と歌っているのを聴いた、あのときの切なさと同じものだ。

我々はいつまでも少年のままでいることはできないし、むしろ、我々は次の世代の祈りを受け止め、成長をサポートする役割を担っている。

世代交代。

父親世代を励ましつつ、この作品は、父親世代の(未だ)捨てきれない青春への思いを歌った作品だったのだろう。

遠く過ぎ去った青春を思い出しながら、浜田省吾は「♪嘆いてる暇なんかない、命がけで守る~!」と歌った。

そのとおりだ!と、僕たちも拳を突き上げた。

それでも、と我々は思う。

やっぱり、俺たちはいつまでも少年のままでいたいんだよ、と。

我々は、ロックスターにもムービースターにもなることはできなかったかもしれない。

平凡なビジネスマンとして企業の歯車になっているだけかもしれない。

それでも、我々は父親であり、一人の少年である。

なぜなら、我々は、未だ夢を捨ててはいないし、人生をあきらめているわけでもなかったからだ。

我々にとって「I am a father」は、父親になった少年の歌である。

父親になっても少年は歌い続けているし、あの頃の夢を追いかけ続けている。

「♪迷ってる暇なんかない、選んだ道、進む~!」と、かつて浜田省吾は歌った。

そして、あれから20年経った今も、この歌は、我々の背中を励まし続けている。

迷ってる暇なんかないし、選んだ道は進むしかない。

それが俺たちの生き方だったんだと教えてくれたのは、やっぱり浜田省吾だった。

なんてすごい歌だったんだ、「I am a father」っていう歌は。

これからもきっと、我々は、少年のままで歌い続けていくことだろう。

「♪迷ってる暇なんかない、選んだ道、進む~!」と歌う、53歳だった浜田省吾の声に励まされながら。

あれから20年。

まさか、自分が53歳を超えることになるなんて、あの頃は想像さえもできなかったけどね。

作品名:I am a father
ミュージシャン:浜田省吾
アルバム:My First Love

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ABOUT ME
懐新堂主人
バブル世代の文化系ビジネスマン。札幌を拠点に、チープ&レトロなカルチャーライフを満喫しています。