ラブマシーンのデビューシングル「お前は夢の中」は、1981年(昭和56年)発売。
発売元は、日本最古のロック専門レーベル「BOURBON」(徳間音楽工業)だった。
ベストテンほっかいどうとラブマシーン「お前は夢の中」
その冬、赤平山スキー場ではラブマシーンの「お前は夢の中」という曲が流行っていた。
どうして赤平のスキー場でラブマシーンなのかというと、そのスキー場ではラジオ番組の『ベストテンほっかいどう』を場内放送で流していて、その冬『ベストテンほっかいどう』では、ラブマシーンの「お前は夢の中」という曲がヒット中だったのである。
ラブマシーンというのは九州のロックバンドで、「お前は夢の中」は1981年(昭和56年)に発売された彼らのデビューシングルだった。
ちなみに、メンバー構成は、ボーカル白川英司で、ギター論手修、ベース湯田治、ドラムス林智彦、キーボード藤原マコト。
九州のバンドのデビュー曲が、どうして『ベストテンほっかいどう』でヒットしていたのだろうか。
テレビの『ザ・ベストテン』を観ても、ラブマシーンのデビュー曲なんて、ちっともランキング入りしていなかったのに。
理由は謎だったけれど、とにかく、その冬、北海道では、ラブマシーンというロックバンドの「お前は夢の中」というデビュー曲が快進撃を続けていたのだ(夢でなければ)。
「お前は夢の中」は、簡単にいえば和製ディスコというやつで、Charの「哀愁トゥナイト」やサザンオールスターズの「匂艶 THE NIGHT CLUB」みたいに、当時ディスコで流行していた洋楽サウンドに、そのまま日本語を乗せたようなディスコ・ナンバーだった。
1981年(昭和56年)の冬と言えば、僕は田舎の中学一年生で、もちろん本物のディスコなんて知らなかったけれど、ラブマシーンのディスコ・ナンバーには強く惹かれた。
南郷通り沿いの文教堂書店で買った「お前は夢の中」
冬の北海道の夜は早くて、夕方16時を過ぎれば、もう真っ暗である(天候が悪いと15時を過ぎれば暗い)。
まして、山の上のスキー場では、ナイター照明の中で滑り続けるのだけれど、人の少ないスキー場に大音量で響き渡る「お前は夢の中」は、必要以上に哀愁を帯びて聞こえた。
もともとマイナー調の寂しいメロディなのだが、雪の降る夕闇の山の中で聴く「お前の夢の中」は、孤独な中学生の心に、一層の悲しみをもって伝わってきたのだろう(大抵ぼっちで滑っていたから)。
大学生のとき、僕は、札幌の南郷通り沿いにある文教堂書店という中古レコード屋で、このシングルレコードを見つけて買った。
「♪今日もにぎわうディスコの中で、俺の視線がお前をさがす、今日はのれないよ、お前のない音の中、まぼろしでかまわない、みごとに舞われ~」。
いくら叫んでみてもお前は夢の中、いくら叫んでみてもお前は夢の中──。
ターンテーブルの上で回り続けるドーナツ盤は、子どもの頃、スキー場で聴いたままの哀愁サウンドを見事に再現してくれた。
だから、九州のロックバンドのデビューシングルだったディスコ・ナンバーは、今も僕にとって、北海道のスキー場に流れる「ベストテンほっかいどう」の思い出と直結している。