直木賞は、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本に贈られる文学賞です。

1935年(昭和10年)、文藝春秋の創業者・菊池寛によって、友人だった作家・直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に創設されました。

年2回、7月と翌年1月に選考会が行われ、受賞作の一部が『オール讀物』に掲載されます。

芥川賞が新進作家による純文学の中・短編作品を対象とするのに対し、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本を対象としています。

この記事では、当ブログで紹介している直木賞受賞作を、あらすじと見どころつきで紹介します。

芥川賞と直木賞の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

芥川賞と直木賞の違いとは?選考基準・代表作でわかりやすく解説
芥川賞と直木賞の違いとは?選考基準・代表作でわかりやすく解説芥川賞は「純文学」、直木賞は「大衆文学」が対象。同じ日に生まれた2つの賞の違いを、選考基準・対象作家・代表作の受賞エピソードとともにわかりやすく解説します。...

①『英語屋さん・その他』源氏鶏太|第25回(1951年)

  • ジャンル:サラリーマン小説・ユーモア小説
  • 難易度:★★☆☆☆(読みやすい)
  • こんな人におすすめ:会社員生活のあるあるを軽妙に楽しみたい人

【あらすじ】
会社勤めのさまざまな哀歓を、ユーモラスに描いた作品群です。

【見どころ】
源氏鶏太は、会社員生活を題材にした「サラリーマン小説」の開拓者・第一人者として知られています。

源氏鶏太『英語屋さん』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです

②『終身未決囚』有馬頼義|第31回(1954年)

  • ジャンル:短編集・人間ドラマ
  • 難易度:★★★☆☆(読み応えあり)
  • こんな人におすすめ:作品の成立過程にもドラマを感じたい人

【あらすじ】
戦後の混乱の中で生きる人々を描いた作品集です。

【見どころ】
戦後に財産の大半を失った父・有馬頼寧が、残った土地を売って得た資金で自費出版したという異色の経緯を持ちます。この異色の経緯を経て、直木賞受賞へとつながりました。

有馬頼義『終身未決囚』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです


③『江分利満氏の優雅な生活』山口瞳|第48回(1962年)

  • ジャンル:サラリーマン小説・連作短編
  • 難易度:★★☆☆☆(読みやすい)
  • こんな人におすすめ:昭和サラリーマンの日常をコミカルに味わいたい人

【あらすじ】
昭和の元号と同じ歳を重ねる典型的サラリーマン・江分利満の日常を、コミカルに描く連作短編集です。

【見どころ】
山口瞳はこの受賞を機に文筆業に専念し、後年の長期連載コラム「男性自身」へとつながっていきます。

なお当ブログでは、山口瞳の『居酒屋兆治』も紹介しています。

山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです

④『アメリカひじき・火垂るの墓』野坂昭如|第58回(1967年)

  • ジャンル:戦争文学・短編集
  • 難易度:★★★☆☆(心に重く残る)
  • こんな人におすすめ:戦争と戦後社会を描いた文学を読みたい人

【あらすじ】
戦争・空襲・焼跡の体験を描いた「火垂るの墓」と、占領下のアメリカへのコンプレックスを描いた「アメリカひじき」の2作を収録しています。

【見どころ】
「アメリカひじき」と「火垂るの墓」の2作品によって直木賞を受賞しました。「火垂るの墓」は後にアニメ映画化され、広く知られる作品となりました。

野坂昭如『火垂るの墓』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです

⑤『浪曲師朝日丸の話』『ミミのこと』田中小実昌|第81回(1979年)

  • ジャンル:私小説・短編集
  • 難易度:★★★☆☆(とぼけた文体に独特の間がある)
  • こんな人におすすめ:飾らない語り口で人生の哀愁を味わいたい人

【あらすじ】
戦中・戦後の混乱期に生きた人々の姿を、著者自身の体験を交えながら描いた2つの短編です。

【見どころ】
東京大学文学部哲学科を中退後、さまざまな職業を経験し、ストリップ劇場などでも働いた田中小実昌ならではの、とぼけた軽妙な文体が魅力です。54歳での受賞は、当時としては遅咲きの部類に入ります。同年には『ポロポロ』で谷崎潤一郎賞も受賞しました。

田中小実昌『浪曲師朝日丸の話』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです

⑥『何者』朝井リョウ|第148回(2012年)

  • ジャンル:現代文学・青春小説
  • 難易度:★★☆☆☆(読みやすい)
  • こんな人におすすめ:SNS時代の自意識や焦りに共感したい人

【あらすじ】
就職活動に挑む学生たちの姿を通して、SNS時代の承認欲求と自意識を描きます。

【見どころ】
23歳で直木賞を受賞した朝井リョウは、当時としては戦後最年少(男性としては史上最年少)の受賞者となりました。現代を生きる若者のリアルな感情が刺さる一冊です。

朝井リョウ『何者』あらすじ・解説・詳しい考察はこちらです


まとめ|大衆文学の魅力を、受賞作から味わおう

直木賞は、源氏鶏太から朝井リョウまで、時代ごとのエンターテインメント文学の姿を映し出してきました。

物語性豊かなエンターテインメント作品を、ぜひ手に取ってみてください。

ちなみに、村山由佳『PRIZE(プライズ)』は、直木賞レースをテーマとした長編小説なので、直木賞に興味のある方におすすめです。

村山由佳『PRIZE(プライズ)』考察|なぜ作家は「直木賞」という承認欲求に抗えないのか?
【文芸考察】村山由佳『PRIZE(プライズ)』なぜ作家は直木賞という承認欲求に抗えないのか?村山由佳『PRIZE(プライズ)』を「承認欲求」の観点から深読み考察。なぜ作家は直木賞という権威を求めるのか?村上春樹が芥川賞を逃した背景や、太宰治の渇望、星新一の「歴史への勝利」と対比させながら、文学賞の持つ真の意義をブログ『時空標本』が紐解きます。...

なお、芥川賞と直木賞の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

▶ 芥川賞と直木賞の違いとは?選考基準・代表作でわかりやすく解説

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文芸コラム担当。感想以上、批評未満。深読み癖あり。感想はX(@jiku_hyohon)にてお待ちしています。