ルースターズ『unreleased(アンリリースド)』は、1987年(昭和62年)に発売された初期未発表作品集である。
初期ルースターズが好きな人には、涙が出るくらいに素晴らしい作品が並んでいる。
イノセントでポップなロックンロール・ナンバー
「SATURDAY NIGHT」を初めて聴いたとき、全身が震えるほど驚愕したものだ。
これがルースターズなのか?って。
なにしろ、この作品は、作詞:南浩二、作曲:東川元則という「人間バンド」時代の作品を、大江慎也のボーカルで録音したものだった。
みんなあの娘をねらってる Baby Baby
今夜はあの娘をうばう Last Chance
おどりつかれていすにすわるあの娘
なぜか気にしてこちらを見つめてる
ああ 今夜はいかした夜になりそう
そこまできている 土曜日の夜は
そうさ もうじき 俺のBaby
(ルースターズ「SATURDAY NIGHT」)
イノセントでポップなロックンロール・ナンバーは、「どうしようもない恋の唄」にも共通する、初期ルースターズの大切な要素だ。
ダサいっちゃダサいけど、こういうダサさも含めて、あの頃のルースターズの大きな魅力だったような気がする(だからこそ、自分は、初期ルースターズが好きなのかもしれない)。
「BYE BYE MY GIRL」は、一転して、ストーンズっぽくなる。
かわいいあの娘とねそべって
だまってたわごと聞いていたら
いきなり おいらをけとばして
がたがた文句をいいだして
人のことも考えてみて
(ルースターズ「BYE BYE MY GIRL」)
歌詞の世界観には、サンハウスの影響が色濃く感じられる。
「I’M TALKIN’ ABOUT YOU」「BYE BYE JOHNY」は、チャック・ベリーのカバーソング。
初期ルースターズは、ロックンロールの原点みたいなところのカバーが、すごく良かった。
エディ・コクランのカバー「HIPPY HIPPY SHAKE」も最高。
オールディーズのカバーなのに、どの曲も、ルースターズのサウンドに昇華されている。
「TELL ME YOUR NAME」には、ビートルズもカバーした「MONEY」の影響を読み取ることができる。
おしえておくれよ おいらに
夜が来るたびあらわれ
おいらの血に火をそそぐ
真赤な服に身をつつむ
おまえの名前を
(ルースターズ「TELL ME YOUR NAME」)
幻想的な歌詞は、ジム・モリソンの世界観か。
サンハウスやストーンズの影響を受けて
「LITTLE BY LITTLE」は、ストーンズのカバーソングだが、クレジットには「詞/曲 大江慎也」とある。
昨夜 お前の後をつけてみたら
いやなものを見ちまったぜ
少しずつ 分かってきたぜ
ほんの少しずつ
信じられなくなってきた
(ルースターズ「LITTLE BY LITTLE」)
「Under My Thumb」は、ストーンズの作品を英語詞のままカバーしている。
「BABY I LOVE YOU」も、ストーンズの影響たっぷりのロックンロール。
俺のあの娘は 金持ちで
赤い車とすてきなドレスを身にまとう
とてもおいらにはかなわない
おいら あの娘の半分だって
持っちゃいない
だけど あの娘は かわいくて
いつもおいらのまわりで
陽気に笑ってる
(ルースターズ「BABY I LOVE YOU」)
これも、やっぱり、サンハウスの延長線上にある曲なんだろうな。
そういう意味では「ONE MORE KISS」もサンハウスっぽい。
誰かあの娘を見つけたら
俺いらの所へ
連れもどしておくれ
こんな気分は もううんざり
涙がポロポロ止まらないぜ
(ルースターズ「ONE MORE KISS」)
「ミルク飲み人形」の世界観が、ここにはある。
最後の「恋をしようよ(LIVE)」は、人気曲のライブバージョン。
おまえがいくらめかしこんで
俺の前にやってきても
そんなことにはかまっちゃいねえ
俺はただおまえとやりたいだけ
今夜はとてもねむれない
おまえの体おもいだして
他のことにはかまっちゃいねえ
俺はただおまえとやりたいだけ
(ルースターズ「恋をしようよ(LIVE)」)
アルバム全体としては、サンハウスとローリング・ストーンズの影響が強くて、泥臭い作品集と言えるかもしれない。
爆発しそうなエネルギーが聴こえてきそうな、若さに満ちたロックンロール。
ルースターズの原点が、ここにある。