文学ブログ『時空標本』では、文学作品を読むだけではなく、文学作品にゆかりの地を訪れる「文学散歩」を推奨しています。
明治の開拓期以降、札幌は多くの文学者を輩出するとともに、様々な文学作品の舞台ともなってきました。
今回は、札幌を旅行するときにおすすめの文学散歩ポイントを、まとめてご紹介したいと思います。
聖地巡礼を旅行行程に組みこむと、旅が一気に文化的になりますよ。
札幌旅行の計画を組むときの参考にしていただけますと幸いです。
基本│文学散歩の楽しみ方
文学散歩には二つの楽しみ方があります。
①作家にゆかりの地を訪ねる
②文学作品にゆかりの地を訪ねる
①作家にゆかりの地を訪ねる
作家にゆかりの地を訪ねる場合にも、二つの視点があります。
一つは、札幌出身作家の「生誕地」などを訪ねる場合であり、もうひとつは、来道作家の「滞在の地」などを訪ねる場合です。
もしも、気になる作家がいる場合は、その作家と北海道との関係を事前に調べておくといいかもしれませんね。
②文学作品にゆかりの地を訪ねる
文学作品の舞台となった場所を訪れる「聖地巡礼」は、文学散歩の中でも人気のあるコースです。
有名な人気作品だけではなく、自分だけのお気に入りの作品を持っていると、誰にも真似のできないオリジナルの文学散歩を楽しむことができますよ。
札幌文学散歩の注意点
札幌市内は、地下鉄やバスなどの交通機関が整備されているので、移動手段に困る場合は、あまりないと思います。
ただし、場所によっては、移動が不便な場合も十分に考えられますので、文学散歩をする際には、移動ルートをあらかじめ確認しておきましょう。
【保存版】札幌文学散歩スポット早見表
手軽に札幌文学散歩を楽しむことのできる比較表を作成しました。
旅行の計画を立てる際の参考にしていただければと思います。
なお、各スポットの詳細は、下の各セクションで詳しく解説しています。
| カテゴリ | スポット名 | エリア | 主な関連作家 |
|---|---|---|---|
| 文学館 | 北海道立文学館 | 中島公園 | 氷室冴子・道内作家全般 |
| 文学館 | 渡辺淳一文学館 | 中島公園 | 渡辺淳一 |
| 歌碑・像 | 石川啄木像・歌碑 | 大通公園 | 石川啄木 |
| 旧邸 | 有島武郎旧邸 | 芸術の森 | 有島武郎 |
| 聖地 | 羊ヶ丘展望台 | 豊平区 | 三浦綾子(『ひつじが丘』) |
| 聖地 | いるかホテル? | 市内中心部 | 村上春樹(『羊をめぐる冒険』) |
| 音楽 | コーヒーハウス・ミルク | 北区 | 中島みゆき |
札幌市内の文学館を訪ねる
文化都市・札幌では、文学館や文学碑などの施設が整っています。
観光旅行の合間に、気軽に文学散歩を組みこんでもいいですね。
北海道立文学館│中島公園
札幌中心部・中島公園の中にある総合文学館です。北海道の文学散歩の入り口は、まずここから始めてはいかがですか?
札幌出身作家の特別展にあたったらラッキーですね。
▶ 道立文学館「氷室冴子の世界─ふくれっつらのヒロインたち」詳細記事を読む
【住所】札幌市中央区中島公園1番4号
【開館時間】9:30~17:00(展示室入場は16:30まで)
【休館日】月曜日
【公式サイト】https://www.h-bungaku.or.jp/
渡辺淳一文学館│中島公園
札幌出身の作家・渡辺淳一の個人文学館です。道立文学館と同じく中島公園の、ちょうど反対端にあります。
【住所】札幌市中央区南12条西6丁目414
【開館時間】9:30~18:00(冬季は17:30まで)
【休館日】月曜日
【公式サイト】https://watanabe-museum.com/
石川啄木ゆかりの地を訪ねる
札幌で文学散歩をするとき、中心になる人物が二人います。石川啄木と有島武郎です。いずれも北海道出身ではありませんが、札幌に大きな足跡を残しました。
石川啄木像・歌碑│大通公園
札幌市内には、石川啄木の歌碑が4つあります。その中でも最も有名なものが、大通公園三丁目にある「石川啄木像・歌碑」です。
しんとして幅廣き街の/秋の夜の/玉蜀黍(とうもろこし)の焼くるにほひよ
地下鉄・大通公園駅の真上にあり、いつでも観光客で賑わっています。
【住所】札幌市中央区大通西3丁目
石川啄木の下宿跡
札幌にやって来た石川啄木が滞在した下宿跡に、啄木の胸像と案内板があります。JR札幌駅・北口から歩いてすぐのビルの1階なので、移動前に立ち寄ることも可能ですね。
【住所】札幌市北区北7条西4丁目4-3 札幌クレストビル1階
石川啄木歌碑│偕楽園緑地
JR札幌駅の北口から西方向へ少し歩いたところにも、石川啄木の歌碑があります。
アカシアの街樾(なみき)にポプラに/秋の風/吹くがかなしと日記に残れり
札幌中心部にありますが、訪れる人も少なく、静かな文学散歩を楽しむことができますよ。
【住所】札幌市北区北7条西7丁目
石川啄木歌碑│札幌平岸林檎園記念歌碑
豊平区平岸の天神山緑地にある石川啄木の歌碑です。正式名称は「札幌平岸林檎園記念歌碑」ですが、啄木の歌が刻まれています。
石狩の都の外の/君が家/林檎の花の散りてやあらむ
ただし、この作品と平岸林檎園とはまったく関係がありません。林檎の花を詠んでいるという理由で、ここに採用されたものと思われます。
【住所】札幌市豊平区平岸1条18丁目
石川啄木歌碑│橘邸「林檎の碑」
先ほどの「林檎の花」の実際の舞台とされているのが、東区にある橘邸です。啄木の恋した女性教師・橘智恵子の実家は、ここにありました。
石狩の都の外の/君が家/林檎の花の散りてやあらむ
かつて林檎園だった庭には「林檎の碑」が設置されています(だから、正確には「石川啄木の歌碑」ではありません)。
「林檎の碑」は林檎の花に囲まれているので、林檎の花の咲く季節に行くと、白い花に囲まれた碑を見ることができます。
【住所】札幌市東区北11条東12丁目2-15
札幌周辺の石川啄木歌碑│小樽・岩見沢
北海道内には、非常に多くの石川啄木歌碑があります。
札幌の隣町・小樽市にも3つの啄木歌碑があるので、時間のある方は、ぜひ小樽まで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。
また、橘智恵子の嫁ぎ先である岩見沢市(旧・北村)にも、啄木の歌碑が設置されています。
レンタカーで札幌周辺をドライブするときには、ぜひ立ち寄ってみたいですね(ただし、すごく分かりにくい場所にあります)。
【住所】岩見沢市北村豊里(住所はこれだけ)
有島武郎ゆかりの地を訪ねる
札幌農学校(現在の北海道大学)の学生時代と教授時代。有島武郎には2回の札幌生活がありました。
有島武郎文学碑│大通公園
札幌中心部の大通公園にある文学碑です。代表作『小さき者へ』の一節が刻まれています。朝食前のひととき、大通公園散策をしながら文学散歩を楽しむこともできそうですね。
【住所】札幌市中央区大通西9丁目
有島武郎旧邸│札幌芸術の森
現在、札幌には、二つの有島武郎の自邸が保存されています。札幌芸術の森にある「有島武郎旧邸」では、有島武郎に関する資料展示も見ることができますよ。
建物も資料も楽しむことができる、ちょっとした有島武郎ミュージアムです。
【住所】札幌市南区芸術の森2丁目
【開館時間】9:45~17:00(夏季は17:30まで)
【休館日】冬季休業(夏季は無休)
【公式サイト】https://artpark.or.jp/shisetsu/arishimatakeo-kyutei/
有島武郎邸跡│北12西3
札幌芸術の森で保存されている「有島武郎旧邸」が建っていた場所には、案内板が設置されています。
地下鉄南北線「北12条駅」からすぐのところにあり、放置自転車に囲まれていることが多いです。
【住所】札幌市北区北12条西3丁目
有島武郎邸跡地│大学村の森
北12条西3丁目に建てられていた「有島武郎旧邸」は、有島武郎の退去後、一時期、北28条東3丁目へと移築され、北大の学生寮「有島寮」として使用されました。
跡地には案内板などは設置されていませんが、かつての「大学村」は「大学村の森」という公園として整備されています。
【住所】札幌市東区北28条東4丁目1-1
旧有島家住宅│北海道開拓の村
有島武郎もうひとつの自邸は、北海道開拓の村にあります。かつて白石区菊水にあったもので、芸術の森の自邸に比べると簡素な感じがしますね。
【住所】札幌市厚別区厚別町小野幌50-1
【開館時間】9:00〜17:00(冬季は16:30まで)
【休館日】月曜日
【公式サイト】https://www.kaitaku.or.jp/
有島武郎邸跡地│白石区菊水
北海道開拓の村に保存されている「旧有島家住宅」が建っていた場所には、現在も案内柱が設置されています。
豊平川の河岸からほど近く、当時の有島武郎がどんな生活を送っていたのか、偲ばれますね。
【住所】札幌市白石区菊水1条1丁目
有島武郎「お末の死」│豊平河畔
有島武郎の名作短篇「お末の死」は、貧民学校・札幌遠友夜学校で知り合った女生徒をモデルにしていると言われています。
「お末の死」の舞台となった豊平川を訪れるなら真夏がおすすめです。
古い作品ですが「お末の死」は電子書籍(kindle)で読むことができますよ。
札幌市内の文学碑を訪ねる
札幌市内の随所に、文学碑や案内板が設置されています。
文学館で基本情報を仕入れたら、ひとつ上級の文学散歩へ出かけてみましょう。
吉井勇歌碑│大通公園
大通公園にある吉井勇の歌碑です。ライラックの花を詠んだものなので、ライラックの季節に訪れたいですね。
「さっぽろライラックまつり」開催期間中は多くの来場者で混雑するので、文学散歩は早朝がおすすめです。
【住所】札幌市中央区大通西4丁目
随筆家・森田たま生誕地│創成川イースト
札幌出身の女流作家・森田たまの生誕地が、創成川イーストにあります。
当時の自宅は火事で焼失してしまいましたが、そのときのことは自伝的長編『石狩少女』に詳しく綴られています。
『石狩少女』(ちくま文庫)は電子書籍(kindle)でも読むことができます。
【住所】札幌市中央区南1条東4丁目7
小説家・船山馨生誕地│大通西8丁目
『北国物語』『石狩平野』『茜いろの坂』など、多くのヒット作で知られる船山馨の生誕地は、札幌中心部にあります。
住所は「大通西8丁目」ですが、案内板は大通公園の南側にあるビルの前に設置されています。
札幌市内で「文学」聖地巡礼
多くの物語の舞台となってきた近代都市・さっぽろ。
ここでは、おすすめの聖地巡礼ルートをご紹介します。
村上春樹『羊をめぐる冒険』│いるかホテル
村上春樹初期の名作『羊をめぐる冒険』と『ダンス・ダンス・ダンス』は、札幌が主な舞台として登場します。
果たして「いるかホテル(ドルフィン・ホテル)」はどこにあったのか?
そんなことを考えながら札幌散策を楽しむのもいいですね。
旅先で小説を読みたくなったときは、kindleが便利ですよ。
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渡辺淳一『阿寒に果つ』│札幌南高校
阿寒湖で自殺した天才少女画家・加清純子をモデルにした青春小説です。
当時、作者は札幌南高校に通う高校生で、作品では昭和20年代の札幌の様子が美しく描かれました。
小説を読みながら聖地巡礼するのがおすすめです。
渡辺淳一『リラ冷えの街』│北大植物園
「リラ冷え」という言葉を定着させたベストセラー小説『リラ冷えの街』も、札幌が舞台となっています。主人公は、北大植物園に勤務する研究者でした。
ライラックの季節におすすめの文学散歩です。
ちなみに「リラ冷え」という言葉を作ったのは渡辺淳一ではないって知ってました?
三浦綾子『ひつじが丘』│羊ヶ丘展望台
旭川出身の作家・三浦綾子のベストセラー小説『ひつじが丘』は、札幌が主要な舞台になっています。
主人公の出身高校のモデルは「北星女子高校」で、作品タイトル「ひつじが丘」は、ラストシーンに登場する「さっぽろ羊ヶ丘展望台」に由来しています。
ぜひ、小説の名場面の舞台を実際に訪れてみてください。
札幌市内で「音楽」聖地巡礼
札幌は、様々なヒット曲の舞台としても歌われてきました。
あの人気曲の舞台を聖地巡礼するのも楽しみですね。
中島みゆき「みるく32」│コーヒーハウス・ミルク
帯広出身の中島みゆきは、大学時代を札幌で過ごしました(藤女子大)。
初期の名曲「みるく32」のモデルとなった「コーヒーハウス・ミルク」の店主は、今も健在です。
▶ 中島みゆき「ミルク32」のモデル喫茶店「コーヒーハウス・ミルク」を読む
友部正人「りんご畑は永遠なのさ」│藻岩山麓
友部正人・鮎川誠・三宅伸治のユニット「3KINGS」のアルバム『王様のノイズ』に「りんご畑は永遠なのさ」が収録されています。
少年時代を札幌で過ごした友部正人らしい歌詞が泣けます。
▶「3KINGS「りんご畑は永遠なのさ」友部正人の札幌時代」を読む
まとめ│文学を現地で楽しむために
文学作品は「本」の中だけにあるのではありません。
作品の背景には、それを書いた作家の人生があり、物語の舞台となった街の歴史があります。
文学散歩は、そんな背景を含めて文学作品を理解するための重要な活動です。
本だけでは理解することが難しかったものが、きっと見つかりますよ。
皆さんも、今年の札幌旅行は、文学散歩で楽しんでみてはいかがでしょうか。





