「さっぽろ焼き芋テラス2025」は、時間に余裕を持って行くべきである。
なぜなら、焼き芋を買うための列に並んでから、実際に焼き芋を買うまで、それなりの時間を要するからだ。
並んででも買いたい焼き芋。
それが、さっぽろ焼き芋テラスの魅力である。
焼き芋以外のスイーツも充実
昨夜に続けて、中島公園の「焼き芋テラス」へ出かけた。
菖蒲池のライトアップは昨日観たので、今日は焼き芋に集中できる。
会場に入ると、左側に焼き芋のブース、右側にその他のブースが並ぶ。
向かって一番右側の混雑している店は、白石区の「WAYAWAYA CAFE」。
韓国で人気の「コグマボール」や「紫色チュロス」を買い求める人たちで賑わっていた。
「札幌村スイートポテト」は既に完売。
夕方近くに行ったので、スイートポテト狙いの人は、早めの到着がおすすめらしい。
焼き肉徳寿のスイーツブランド「パティスリーフレール」は、韓国発のスイーツ「クルンジ」が大人気。
クロワッサンを薄く焼き上げたカリカリ食感の「かぼちゃクルンジ」や「さつまいもクルンジ」など、食べ歩いている来場者が多かった。
ドリンクは、地元「Smooch Coffee Stand」の「Fresh Coffee」が出店。
油断していると、焼き芋にたどり着く前に、お腹が満たされてしまうかもしれない。
自宅から近い人は「さっぽろできるだけプロジェクト(八百屋)」で、新鮮な野菜を買って帰ることもできる。
我々も、大根やらカボチャやらを買って帰った。
この辺が、いかにも地元のイベントという感じがしていい。
焼き芋はファーストフードではない
焼き芋ブースでは、「京都芋屋 芋と野菜」が圧倒的な人気を見せつけていた。
1時間ごとに200本ずつ焼きあがるのを待つ長い行列に並んで、のんびりと順番待ちをする。
どの店にも「焼き芋スケジュール」が貼りだされていて、焼き上がりの目安が分かるようになっている。
人気の店では、並んでいるうちに、次の焼き上がり時間が来るかもしれない。
焼き芋は、ファーストフードではない。
ゆっくり、のんびりと、順番を待つゆとりが必要だ。
競って買い占めるような「必死さ」は、焼き芋とは無縁だと言っていい。
なんとなく、明治時代に夏目漱石が書いた文章を思い出す。
造兵へ出る辰さんが肌を抜いで酒を呑んでいると、御酒を呑んでてよと御母さんに話す。大工の源坊が手斧を磨いでいると、何か磨いでてよと御祖母さんに知らせる。そのほか喧嘩をしててよ、焼芋も食べててよなどと、見下した通りを報告する。すると、よしが大きな声を出して笑う。御母さんも、御祖母さんも面白そうに笑う。喜いちゃんは、こうして笑って貰うのが一番得意なのである。(夏目漱石「永日小品」)
焼き芋は、現代のスローフードだ。
気のせいか、焼き芋テラス会場では、時間がゆっくりと流れているような気がする。
などと考えているうちに、いつの間にか順番が回ってきて、「京都産あかねこまち(800円)」と「徳島産鳴門はるか(800円)」の両方を購入。
店によっては、全商品が準備中だったりして、てきぱきと買い物を済ませるというわけにはいかない。
南空知の由仁町と栗山町から来た「由栗(ゆっくり)いも~そらち南さつまいもクラブ~(ベジタボ)」にも、長い行列ができている。
「バターどら焼き」や「タルトケーキ」のような、さつまいもを使ったお菓子も多い。
ここは本命の「石焼きいも(500円)」を2本購入。
購入した焼き芋は、ビニールハウス内に設置されたフードコートで食べることができる。
ポータブルストーブが用意されているので、ビニールハウスの中は暖かい。
とはいえ、焼き芋購入の際には長時間並ぶことが予想されるので、防寒対策は必須。
ほとんどの来場者は、真冬に近い服装で「まかなって」いた(北海道弁で「厚着する」ということ)。
札幌焼き芋テラスの本質は、この「ゆっくりと並ぶ」というところにあるのではないだろうか。
「効率を求めて」とか「回転率を上げて」とか、そういうことを考え始めたら、既に焼き芋のアイデンティティーとそぐわないような気がする(そういう商業イベントが多い世の中だが)。
何もすることがない晩秋の一日、焼き芋が焼きあがるのをのんびりと待って、熱々の焼き芋をストーブのそばでゆっくりと食べる。
ゆっくりと時間を過ごすことの大切さを、「さっぽろ焼き芋テラス」はきっと教えてくれることだろう。









