三宅香帆『「好き」を言語化する技術(推しの素晴らしさを伝えたいのに「やばい!」しかでてこない)』読了。
本作『「好き」を言語化する技術』は、2024年(令和6年)7月にディスカヴァー・トゥエンティワンから刊行された解説書である。
この年、著者は30歳だった。
本書は、2023年(令和3年)にディスカヴァー・トゥエンティワンから刊行された『推しの素晴らしさを伝えたいのに「やばい!」しかでてこない』を改題・携書化したものである。
上手な読書感想文を書く方法
読書感想文を書くのが苦手だった。
どんなにたくさん本を読んでも、読書感想文が上達することはなかった。
そりゃそうだ。
難しい言葉を覚えたりとか、カッコイイ表現を身に付けたりとか、読書感想文のポイントは「そこ」じゃない。
上手な読書感想文を書くポイントは、ちょっとした「工夫」にある。
本書『「好き」を言語化する技術』は、「推しの素晴らしさを伝えるために(いわゆる布教)」書かれた本だ。
「好きを言語化する」とか「推しの素晴らしさを伝える」とか、それは、自分の感情(や思い)を言葉に変換して書きだす(アウトプットする)、ということでもある。
つまり、この本は、読書感想文を書くときにも応用できる、素晴らしい解説書なのだ。
大きなポイントは3つ。
中学生のときに、こんな本を読みたかったなあ。
1.感じたことを「細分化」する
読書感想文を書くときに、よくあるのが「何を書いていいかわからない」ということ。
まずは、本を読んだときに、自分の感じたことを「具体的」に書きだしてみる。
大切なことは、とにかく「細かく」「具体的に」書きだしてみる、ということだ(これを「細分化」という)。
細かく具体例を挙げることのなにがいいのか。それは、感想のオリジナリティは細かさに宿るからです。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
細かくて具体的な感想は、感想文を書くときの「切り口」になる(視点)。
例えば、フィクション作品(小説や漫画)を読むときの項目として、筆者が並べているのは、次のような項目だ。
・好きな/好きじゃないキャラクター
・印象に残ったセリフ
・なんかすごく心に残っている場面
・びっくりした展開
・結局最後までよくわからなかった心情
おもしろかったところ、つまらなかったところも含めて、とにかく自分の感じたことを、できるだけたくさん「具体的に」「細かく」書きだしていくこと。
この作業が、上手な読書感想文を書くときに一番大きなポイントとなる。
2.書きたいことを「1つだけ」に絞る
自分の思ったことや感じたことを「細かく」「具体的に」書きだしたら、次にその中から、読書感想文を書くための切り口(視点)を選ぶ。
大切なことは「全部」を書こうとはしない、ということだ。
枚数の限られている読書感想文で、感じたことをすべて書くのは無理がある。
思ったことをたくさん詰めこむほどに、一つ一つの感情はペラペラとなり、薄っぺらでまとまりのない読書感想ができあがる。
多くの読書感想文の失敗が、ここにある。
読書感想文の書くときのコツは「切り口」を一つに絞って、そのひとつの「切り口」を徹底的に深く掘り下げていく、ということにある。
伝えたいことが多いと、「結局なにが言いたい記事なのか?」がわからずに終わってしまう。初心者のうちは、一点のみを選びましょう。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
特に、長い物語(長篇小説)を読んだ後には、言いたいことや書きたいことがたくさんあるかもしれない。
そんなときでも、あえて、ストイックに論点をひとつに絞る。
こうすることで、とっちらかった感想文よりも、ずっとテーマの明確な読書感想文が生まれるはずだ。
3.妄想力で深掘りする
ひとつの「切り口」を深堀りしていくときに大切なものが「妄想力」である。
読書感想文に必要な「深掘り」とは、「考察」とか「検証」ではなく、どうしてそう感じたのか?を考える「妄想力」である。
でも、感想を書くうえで大切なのは、読解力でも観察力でもありません。なにが必要かといえば「妄想力」なのです。「妄想力」とはなにか? それは、自分の考えを膨らませる能力のことです。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
本を読んだときに、自分が良かったと思うところ、印象に残ったところ、感動したところを「どうしてそう感じたのか?」という点から妄想していく。
妄想だから、どこにも「正解」なんてない。
ここで大切なのは、私の考えていることが、ほぼほぼ妄想であること。つまり、その考えが正しいかどうかは定かではありません。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
読書感想文のゴールは「正解」の感想を書くことではない。
自分だけの「オリジナリティ」ある感想を書くことが、読書感想文のゴールなのだ。
「他人と同じ感想」よりは、むしろ、「自分だけの感想」を発見するところから、上手な読書感想文は生まれる。
ここを理解することで、読書感想文を書く力は飛躍的に向上するはずだ。
中学生のときに読んでおきたかったよ、この本、マジで。
まとめ
上手な読書感想文を書くポイント、それは「細分化する」「論点をひとつに絞る」「深く掘り下げる」の3つである。
ただ、本書『「好き」を言語化する技術』のすごいところは、こうした「テクニック」だけでは、筆者の「思想」がはっきり打ち出されていることだ。
例えば、ありきたりの表現方法(クリシェ)は、絶対に使わない。
ありきたりなシチュエーション。ありきたりな台詞。ありきたりな言葉。それらをフランス語で「クリシェ」と呼びます。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
具体的に、次のような言葉が挙げられている。
①泣ける
②やばい
③考えさせられた
ちなみに、ブログの最後に「いかがでしたか?」と入れるのもクリシェ笑(というか、まあ「定型文」ですが)。
いずれも「感想界のクリシェ=ありきたりな表現」で、こうした表現を使わずに、自分の気持ちを言語化することが、オリジナリティある「自分だけの感想」を生み出すことへとつながっていく。
この「自分だけの感想」にこだわる姿勢がいい。
自分だけの感情? 感じたままの、ありのままの感想を語るってこと? こんなふうに思われた人がいるかもしれませんが、それはちょっと違います。というのも、「自分だけの感想」とは、「他人や周囲が言っていることではなく、自分オリジナルの感想を言葉にする」ことなんです。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
SNS時代、ともすれば「自分オリジナルの感想」は避けられがちになりやすい。
たくさんの「いいね」を獲得するためには、他者に迎合する姿勢も必要だし、SNS界隈の同調圧力もある。
筆者の強さは「他者には流されまい」とする意志の強さだ。
それでは、自分の「好き」を言語化するうえで、一番重要なことを伝えましょう。ずばり、「他人の感想を見ないこと」です。(略)他人の言葉の影響から自分を守る方法は、「他人の言葉を見ない」か「他人の言葉を打ち消す自分の言葉を持つ」かの、どちらかだけ。(三宅香帆『「好き」を言語化する技術』)
本書『「好き」を言語化する技術』で筆者が一番伝えたかったこと、それは「他人の意見に流されず、自分自身を持て」ということだったのではないか。
「好きを言語化」するということは、つまり、「自分が自分である」ということでもある。
可愛い帯が柔らかい印象を与えているけれど、なかなか尖った本だった。
映画や音楽のレビューを書くときにも使えるので、汎用性は高い。
「言語化」の本は、もうこれ一冊で十分かもしれない。
書名:「好き」を言語化する技術(推しの素晴らしさを伝えたいのに「やばい!」しかでてこない)
著者:三宅香帆
発行:2024/07/31
出版社:ディスカヴァー携書


