肯定ペンギンなどいない。
自分を褒めてくれるのは、ただ自分自身のみ。
そんな寂しい夜に自分を慰めてくれるのが、SIONと福山雅治がコラボした「たまには自分を褒めてやろう」だ。
SIONは本当に「自己慰め」の上手なミュージシャンである。
きっと、若い頃から自分を慰め続ける毎日だったのだろう。
そんなSIONの歌に慰められて頑張ることのできた日が(この年まで)どれだけあったことか。
「たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう」と、SIONは歌っている。
お前もよくやってると
たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう
くさらず頑張ってると
たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう
(SIONと福山雅治「たまには自分を褒めてやろう」)
そもそも、世の中なんて、そんなに甘いもんじゃない。
誰も褒めてくれないからといって、それを嘆いていても仕方ないじゃないか。
誰も褒めてくれないからこそ、自分で自分を褒めてやる。
SIONの歌の凄いところは、その歌が本当に我々を慰めてくれる、ということだ。
うわべばかりのメッセージじゃないのは、SIONの自分自身に対する思いが投影されているからだ。
80年代から歌い続けて、とにかく、歌い続けるだけの毎日だった。
NHKの『トップランナー』に出演したときは「こんなビリッケツ・ランナーですんません」と頭を下げ、居留守を使って仕事をドタキャンしようとしたときは「(ドン、ドン、ドン!と部屋をノックする音)SIONさん! いるのは分かってるんですよ!」と、歴代のマネジャーから叱られ、それでもSIONは(とにかく)歌い続けてきた。
SIONは、そんな、まるでオレたちみたいなミュージシャンである。
誰も言ってくれないから、SIONは自分で自分を励まし続けた(「♪がんばれ、がんばれ~!」ってね)。
SIONの歴史は、自己慰めの歴史だったと言ってもいい。
そんなSIONが、国民的スター(福山雅治)とコラボした作品が「たまには自分を褒めてやろう」だ。
福山なんて、いつも褒められっぱなしだろう!って思っても、SIONと一緒に歌うときの福山は、やっぱりいい。
さすが「SORRY BABY」をカバーしただけのことはある。
なんと言っても、この二人は仲が良いのだ。
それでもあなたの一言で
俺はどこまでも行ける
そうさあなたの一言で
俺はどこまでも行ける
たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう
たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう
たまにゃ たまにゃ ちゃんと褒めてやろう
(SIONと福山雅治「たまには自分を褒めてやろう」)
この歌の一番素晴らしいところは、やっぱり、この歌がSIONの歌である、ということだろう。
普通のミュージシャンが歌ったら、ただの薄っぺらな応援ソングになってしまう。
SIONの歌は応援ソングなんかではない。
SIONの歌は、応援ソングである前に「自己慰め」の歌なのだ。
本気で自分を励ましているからこそ、SIONの歌は、我々の心の中にも自然な形ですっと溶けこむことができる。
いいじゃないか、自分で自分を慰めたって。
「全然、恥ずかしくないぜ、オレたち」っていう気持ちを、大スターの福山雅治が後押ししてくれる。
すごい組み合わせだよ、やっぱり。SIONと福山雅治って。
自分で自分を慰めなければ、生き延びることさえ難しかった、あの頃(「こう見えてもわりと繊細なんだぜ、ガラスほどもろくはないにしても」)。
SIONの歌に励まされた夜が、どれだけあったことだろうか。
そして、SIONは、今も僕たちを励ましてくれる。
たまにゃ自分をちゃんと褒めてやろう、ってね。
作品名:たまには自分を褒めてやろう
ミュージシャン:SIONと福山雅治
発表:2005/06/08(SIONデビュー20周年メモリアルニューシングル)
アルバム:東京ノクターン(SIONのソロバージョン)


