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文学散歩・聖地巡礼

【札幌文学散歩】大通公園の喧騒の果てに|有島武郎文学碑と『小さき者へ』

【札幌文学散歩】大通公園の喧騒の果てに|有島武郎文学碑と『小さき者へ』

札幌の大通公園は、既にビアガーデンの季節だった。

有島武郎文学碑は、大通公園の九丁目南側にある。

賑やかなビアガーデン会場から少し離れて、有島武郎文学碑はいつものように静かだった。

ビアガーデンの大通公園にある文学碑

真夏の大通公園はビアガーデンの会場となる。

西五丁目から東へ向かって、サントリー、アサヒ、キリン、サッポロと続くビアガーデンの会場を抜けると、ようやく九丁目。

そこに有島武郎の文学碑があった。

久し振りの真夏らしい青空と気温で、ビアガーデン会場は賑やかだったけれど、酔客の喧騒も九丁目までは届いてこない。

僕はゆっくりと有島武郎文学碑と向かい合った。

有島武郎の自伝的青春小説『星座』

東京・小石川生まれの有島武郎は、札幌の作家として知られている。

札幌農学校で新渡戸稲造に学び、東北帝国大学農科大学時代には母校の教壇にも立った。

未完の遺作『星座』は、札幌農学校時代を回想する自伝的青春小説である。

大通りまで出ると、園は始めて研究室の空気から解放されたような気持ちになった。そして自分が憚からねばならぬような人たちから遠ざかったような心安さで、一町にあまる広々とした防火道路を見渡した。(有島武郎「星座」)

明治30年代の札幌が、その小説の中には描かれている。

登場人物は、北海道の未来を担う若者たちだった。

有島武郎没後40年に設立された有島武郎文学会

そんな時代から100年以上が経過して、今、大通公園には有島武郎の文学碑が建っている。

この文学碑は、有島武郎の没後40年を記念して、1962年(昭和37年)9月22日、有島武郎文学会によって建立されたものだ。

不倫の果ての心中という不幸な最期に終わった有島武郎は、当時、決してメジャーな文学者としての扱いを受けていなかったという。

立派な文学碑の建立は、有島武郎の復活を象徴するものでもあったらしい。

札幌大通公園にある有島武郎文学碑札幌大通公園にある有島武郎文学碑

中心を担ったのは、昭和36年に設立された「有島武郎文学会」である。

翌年九月に大通公園に文学碑を建てること、有島青少年文学賞を設けること、記念会誌を出すこと、記念展覧会を開くことなどが決められた。(『北の話』129号/1985.10)

有島武郎文学会での活動には、札幌農学校で有島武郎と同期生だった半澤洵が参加している。

有島武郎と武者小路実篤

文学碑が建立された1962年(昭和37年)からでさえ、既に60年以上が経過した。

この文学碑は、高度経済成長期以降に生まれた札幌の子どもたちを見守ってきたのだ。

それは最初から大通り西九丁目の児童遊園の一角と内定していた。碑文の選定も、真崎晋吾氏が事務局の依頼を受けて、児童公園にふさわしく『小さき者へ』の中の一節から選び、書は武者小路実篤氏に依頼されていた。(『北の話』129号/1985.10)

文学碑建立の年に77歳となる武者小路実篤は、有島武郎とは文学雑誌『白樺』の同人仲間だった。

有島武郎『小さき者へ』の碑文

札幌大通公園にある有島武郎文学碑札幌大通公園にある有島武郎文学碑

今、有島武郎の文学碑は、大通公園の片隅でひっそりと、子どもたちの成長を見つめている。

小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ。(有島武郎「小さき者へ」)

「行け。勇んで。小さき者よ」と、有島武郎は呼びかけていた。

その言葉はきっと、札幌の子どもたちにも聴こえているはずだ。

たとえ、この文学碑の存在が、決して有名なものではなかったとしても。

まとめ│有島武郎文学碑のある街で

こうして有島武郎の文学碑と向き合っていると、ここが札幌で、ここが自分の暮らす街だという思いを強くする。

ここに観光客は集まってこない。

有島武郎は札幌の作家だったのだ。

ビアガーデンの喧騒を遠くに感じながら、僕はいつまでも有島武郎の文学碑と向き合っていた。

札幌発の文学ブログ『時空標本』では、札幌の文学スポットを紹介しています。

詳細は、別記事「【札幌】文学散歩ガイド|石川啄木・有島武郎ゆかりの地から村上春樹の聖地巡礼まで」をご覧ください。

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