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庄野潤三の紀行文学|『ガンビア滞在記』からロンドンの旅まで

庄野潤三の紀行文学|ガンビア滞在記からロンドンの旅まで

庄野潤三の仕事の中で見過ごされがちなものに旅行記(紀行小説)がある。

自分の体験を題材とする庄野潤三にとって、旅行記は重要なテーマのひとつだった。

ついでに云えば、現代の自分の文学が小説ばかり追い求めて、紀行文を忘れていることも私はかねがね不満に思っている。内容空疎な小説を読んでも、味気なくなるばかりだ。この文学界に活を入れるのは、すぐれた紀行文しかないと私は思っている。(庄野潤三「若き芥川賞作家たち房総へゆく」)

本記事では、海外旅行記(紀行小説)にフォーカスして、庄野文学の魅力について探っていきたい。

庄野潤三のアメリカ旅行

庄野潤三最大の旅行は、1957年(昭和32年)から1958年(昭和33年)にかけて、一年間ガンビアに滞在したアメリカ旅行だろう。

妻を伴って渡米した庄野潤三は、遠い異国で、まるで日本で暮らしているのと同じような、普通の生活を送った。

一年間のアメリカ滞在は、多くの作品となって残されている。

『ガンビア滞在記』 中央公論社/1959

一年間のアメリカ滞在は『ガンビア滞在記』という名作として結実した。

東京に比べて、よほど住民の少ない大学村で、庄野夫妻は様々な国籍の人たちと交流する。

英文学者・福原麟太郎との交流も、この『ガンビア滞在記』がきっかけだった。

本作『ガンビア滞在記』については、次の記事で詳しく解説しています。

【偏愛解説】庄野潤三「ガンビア滞在記」小さな大学村の暮らしと隣人たちとの交流

『シェリー酒と楓の葉』 文藝春秋/1978

ガンビア時代の生活を綴った紀行小説。

『ガンビア滞在記』がダイジェスト版だとすると、本作『シェリー酒と楓の葉』では、当時の日記をほぼそのまま小説化している。

渡米から大晦日までの出来事が、細かく書きこまれた日記文学的な旅行記である。

本作『シェリー酒と楓の葉』については、次の記事で詳しく解説しています。

【偏愛解説】庄野潤三「シェリー酒と楓の葉」秋からクリスマスにかけてのガンビア交流記

『懐しきオハイオ』 文藝春秋/1991

『シェリー酒と楓の葉』の続編。

現地で出会った人たちとの交流が、つぶさに記録されている。

日本に残してきた三人の子どもたちが、随所に登場しているのもいい。

本作『懐しきオハイオ』については、次の記事で詳しく解説しています。

【偏愛解説】庄野潤三『懐しきオハイオ』アメリカの暮らしと日本に残した子どもたちの成長

「アメリカ長距離バスの旅」三部作

アメリカ滞在での体験は、上記長編小説のほか、多くの短編小説として発表された。

特にアメリカ国内での旅行体験は、短編小説として作品化されている。

長距離バスに乗ってメンフィスまで旅をしたときの記録は、「南部の旅」「静かな町」「湖上の橋」という3本の短編小説となっている。

この「アメリカ長距離バスの旅」三部作については、次の記事で詳しく解説しています。

庄野潤三「南部の旅」長距離バスでメンフィスへ向かう夫婦のロード小説

庄野潤三「静かな町」ミシシッピー州ナチェッツで出会った人々の思い出

庄野潤三「湖上の橋」~「アメリカ長距離バスの旅」三部作の完結編

その他の短編小説(アメリカ旅行関係)

・二つの家族(『道』)
・ケリーズ島(『道』)
・マッキー農園(『道』)
・ニューイングランドびいき(『旅人の喜び』)
・父母の国(『絵合せ』 )
・写真家スナイダー氏(『絵合せ』 )
・グランド・キャニオン(『絵合せ』 )
・花(『休みのあくる日』)
・話し方研究会(『休みのあくる日』)
・モヒカン州立公園(『屋上』)
・メイフラワー日和(『葦切り』)
・ガンビア停車場(『葦切り』)

『ガンビアの春』 河出書房新社/1980

懐かしいガンビアを20年ぶりに訪問した庄野夫妻。

たった一年間の滞在だったのに、庄野夫妻にとって、そこはまるで故郷のような場所だったのかもしれない。

庄野さんが在籍したケニオン大学の歴史についても、非常に丁寧にまとめられている。

庄野潤三のイギリス旅行

1980年(昭和55年)5月、庄野夫妻はイギリスのロンドンを旅している。

旅の目的は、イギリスのエッセイスト、チャールズ・ラムの足跡をたどるためだった。

このときの体験をまとめた作品が『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』である。

『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』 文藝春秋/1984

英文学を愛する庄野潤三にとって、チャールズ・ラムの『エリア随筆』は特別な存在だった。

敬愛する福原麟太郎が『チャールズ・ラム伝』の著者であったということも、庄野さんにとっては特別な意味を持つことだったに違いない。

庄野さんのイギリス旅行は、チャールズ・ラムと福原麟太郎、二人に対するリスペクトの旅でもあったのだ。

本作『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』については、次の記事で詳しく解説しています。

【偏愛解説】庄野潤三「陽気なクラウン・オフィス・ロウ」チャールズ・ラムの世界を巡るロンドン日記

まとめ│庄野潤三と旅行記(紀行小説)

本記事では、庄野潤三のアメリカ旅行とイギリス旅行の作品を紹介したが、このほか、庄野さんには学生時代の満州旅行の記録を綴った作品(「嚝野」「秋の日」)がある。

国内旅行の記録としても「山高帽子」「石垣いちご」「蓮の花」などの作品があるし、「三河大島」のように、ちょっとした海水浴の記録もある。

日常を描く庄野さんにとって、旅もまた大切な日常のひとつだったのだろう。

庄野潤三の旅行記(紀行小説)のファンとしては、そんな観点からまとめられた作品集が出ることを、こっそりと楽しみにしているのだけれど。

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文学ブログ『時空標本』では、庄野潤三の紹介に力を入れています。

詳細は、次の記事をご覧ください。

▶ 庄野潤三とは|芥川賞を”超えた”作家の魅力と代表作10選を徹底解説

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モグラのジェン
文芸コラム担当。感想以上、批評未満。深読み癖あり。感想はX(@jiku_hyohon)にてお待ちしています。