庄野潤三のおすすめ代表作10選│あらすじと魅力を解説
昭和30年に『プールサイド小景』で芥川賞を受賞しながら、芥川賞を超えるキャリアを形成したため「芥川賞作家」とさえ呼ばれることが少ない作家・庄野潤三。
この記事では「これから庄野潤三を読みたい」と考えている方のために、庄野潤三のおすすめ代表作を紹介していきます。
庄野潤三「代表作おすすめランキング」ベスト10
昭和30年代から平成まで長いキャリアを持つ庄野潤三の作品世界は、非常に幅広いものtとなっています。
第1位『夕べの雲』
作者本人が「自分の代表作」と認めていた作品。五人家族の日常を描いた作品は、庄野潤三的家族小説の原点ともなりました。東京都内の石神井公園から神奈川県の生田へ転居した頃の庄野家がモデルとなっています。
1966年(昭和41年)、読売文学賞小説賞を受賞。
第2位『静物』
妻の自殺未遂を乗り越えて、家族を支えていく父親の視点から描かれています。村上春樹は『若い読者のための短編小説案内』の中で、この作品を「庄野潤三の代表作」として採りあげています。
1960年(昭和35年)、新潮社文学賞を受賞。
第3位『プールサイド小景』
酒場の女性のために会社の金を使いこんで、クビになった会社員の物語。突然、路頭に迷うことになった家族の生活が、若い夫婦の視点から描かれています。
1955年(昭和30年)、芥川龍之介賞を受賞。
▶庄野潤三『プールサイド小景』あらすじ・解説・詳細な考察を読む
第4位『絵合せ』
長女を嫁に出す父親の気持ちが、象徴的に描かれています。『夕べの雲』から続いてきた「五人家族の物語」のピークを示す作品として高い人気を誇ります。
1971年(昭和46年)、野間文芸賞を受賞。
第5位『明夫と良二』
上記『絵合せ』の続編的な長編小説。長女の結婚準備や新婚生活の様子を、二人の兄弟を主人公に据えて綴っています。「五人家族」から「四人家族」になった庄野家の記念碑的な作品です。
1972年(昭和47年)、毎日出版文化賞・赤い鳥文学賞を受賞。
第6位『紺野機業場』
家族以外の人々に取材して執筆された、いわゆる「聞き書き小説」の代表作。北陸の町で小さな織物工場を営む老主人・紺野友次を主人公に、地域や一族の歴史を描いています。
1970年(昭和45年)、芸術選奨文部大臣賞を受賞。
第7位『ザボンの花』
東京・石神井公園時代の庄野家をモデルにした家族小説の原点的作品。サラリーマンとして働きながら小説を書いていた時代の庄野潤三の暮らしが描かれています。
本好きのファッションモデル・菊池亜希子の愛読書として知られています。
第8位『ガンビア滞在記』
1959年(昭和34年)から1年間、アメリカのガンビア村へ滞在したときの記録を綴った作品。このアメリカ生活は、その後の庄野文学に大きな影響を与えることになりました。
▶庄野潤三『ガンビア滞在記』あらすじ・解説・詳細な考察を読む
第9位『さくらんぼジャム』
孫娘フーちゃんの成長を綴った「フーちゃん三部作」完結編。次男一家の転居に伴って、フーちゃんが離れていってしまう祖父母の喪失感を綴った名作です。
▶庄野潤三『さくらんぼジャム』あらすじ・解説・詳細な考察を読む
第10位『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』
妻と二人でイギリスのロンドンを訪れたときの旅行記。イギリスのエッセイスト、チャールズ・ラムの足跡をたどる文学紀行として、非常に優れた作品となっています。
▶庄野潤三『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』あらすじ・解説・詳細な考察を読む
【解説】庄野潤三の文学世界
① 庄野潤三の初期短編
初期における庄野潤三の文学テーマは、若い夫婦の危機と不安にありました。そのことの不安が、庄野潤三という作家の根源的なテーマでした。
▶ 庄野潤三の初期作品|『愛撫』から『静物』へ続く”夫婦の不安”の系譜
② 庄野潤三の家族小説
現在、庄野潤三は「家族小説」の作家として知られています。平凡な家族の平凡な幸福を、庄野潤三は追求しました。
▶ 庄野潤三の「家族小説」全14作品の系譜|『ザボンの花』から続く家庭小説の歴史
③ 庄野潤三の「夫婦の晩年シリーズ」
今や庄野潤三の代名詞ともなった「夫婦の晩年シリーズ」には、すべての日本人におすすめしたい名作が揃っています。幸福な晩年を過ごすことの意味が、この作品群には描かれてます。
▶ 庄野潤三の代表作「夫婦の晩年シリーズ」全11作品をまとめて解説
④ 庄野潤三の「フーちゃん三部作」
庄野潤三は、孫娘「フーちゃん」を主人公に据えた作品を、いくつも書きました。「フーちゃん三部作」と呼ばれる、これらの作品には、祖父母と幼い孫との心の交流が描かれています。
▶ 庄野潤三「フーちゃん三部作」まとめ|作品の時系列と孫娘モデルの考察
⑤ 庄野潤三の紀行文学
意外な感じがありますが、庄野潤三は優れた紀行文学の作家でもありました。アメリカ滞在の経験やイギリス旅行の体験は、それぞれ重要な作品として残されています。
▶ 庄野潤三の紀行文学|『ガンビア滞在記』からロンドンの旅まで
⑥ 庄野潤三の「聞き書き小説」
家族小説の世界を越えて、庄野潤三は無名の市民の歴史にも関心を見せました。取材の過程をそのまま小説化した「聞き書き小説」の世界は、庄野潤三を語る上で、決して忘れることのできないシリーズとなっています。
長篇『早春』は、知人の案内により神戸の歴史をまとめた作品。
⑦ 庄野潤三の随筆集
庄野潤三はエッセイの名手としても知られています。イギリスのエッセイ文学の影響を受けた庄野潤三は、師である井伏鱒二とともにエッセイを愛した作家でした。
▶ 庄野潤三の随筆集(全11冊)を全部紹介。現代社会に疲れたすべての人におすすしたい心の日光浴。
⑧ 庄野潤三の家族たち
庄野潤三は、とにかく「家族」を描く作家でした。家族への愛に支えられた文学が、つまり庄野文学だったのかもしれませんね。
▶ 庄野潤三の家族|妻・千壽子と子どもたちのモデルとなった「庄野家の人々」
⑨ 庄野潤三の仲間たち
家族と同じように、庄野潤三は文学仲間との交流についても、作品の中で積極的に綴りました。それは文壇交流というよりも、心の交流というべき付き合いだったかもしれません。
▶ 庄野潤三の仲間たち|井伏鱒二・小沼丹・阪田寛夫との文壇交友録
⑩ 庄野潤三の「静かなブーム」
「地味な人気作家」として亡くなった庄野潤三は、没後の今も地道に語られ続けています。全国紙での紹介や文学館での企画展。庄野潤三の「静かなブーム」は、今も続いているのかもしれませんね。
▶ 庄野潤三の「静かなブーム」|生誕100年・没後15年の報道と企画展まとめ
【参考資料】庄野潤三マニアのために
庄野潤三をメインテーマとする『時空標本』では、庄野潤三に関するマニアックな資料を収集しています。庄野潤三の世界を極めるための案内図としてご活用ください。
① 庄野潤三論|語られた伝説
「第三の新人」としてスタートした庄野潤三の小説は、多くの視点から語られてきました。庄野文学を論じた「庄野潤三論」については、次の記事で詳しく解説しています。
▶ 庄野潤三論|江藤淳「治者の文学」から読み解く文芸批評の系譜
② 庄野潤三の文学散歩│庄野文学の聖地巡礼
庄野文学の楽しみは、聖地巡礼にもあります。作品に登場する土地を訪ね、作者の食べた「うなぎ」を食べる。それもまた、文学の楽しみ方のひとつです。
▶ 庄野潤三の文学散歩|生田の「山の上の家」から聖地巡礼スポットを歩く
③ 庄野潤三の年表|作品とライフイベントを網羅する
庄野潤三の全作品から独自に作成したマニアックな年譜です。著作物の出版や作品の連載はもちろん、重要なライフイベントについても可能なかぎり掲載しています。
▶ 日本の小説家「庄野潤三」の超マニアックな年譜を作ってみました
④ 庄野潤三の全著作リスト│全作品タイトルを網羅
庄野潤三単独名義のみならず、アンソロジーや文学全集も含め、これまでに出版されたすべての著作物をリスト化しました。
▶ 庄野潤三の全著作リスト│短篇集の収録作品や長篇小説の章タイトルはここで確認
⑤ 庄野潤三のライフスタイル
庄野潤三の読者は、庄野潤三の生活について、もっと知りたいと思っています。以下の記事は、庄野文学をより深く理解するための視点から構成されています。
▶『魅惑のオペラ・アリア集』と『新しい少年少女の歌』~庄野潤三の小説に登場するレコードを聴く
▶ 大正生まれの作家・庄野潤三の愛読書について詳しく解説します
▶ 庄野潤三の人名録~親族や友人、文壇仲間、ご近所さん、読者まで
まとめ│庄野潤三の小説はどこで読めるのか?
現在、多くの作品は絶版や版元品切れなどにより入手困難な状態となっています。
安定的に購入できるのは、新潮文庫の『プールサイド小景・静物』くらいで、講談社文芸文庫や小学館P&D BOOKSシリーズの作品は、運が良ければ新刊書店で手に入るかもしれません。
多くの作品はメルカリやヤフオク、古書店などで古本を探すしかありませんが、署名本や初期の作品を除き、庄野潤三の著作はほぼ安価で入手可能。
いちばんのおすすめは、小学館の『庄野潤三電子全集』(全20巻)で、庄野潤三のほとんどの作品を読むことができます。
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文学ブログ『時空標本』では、庄野潤三をはじめ、昭和文学の紹介に力を入れています。
▶昭和文学のおすすめ名作30選│高校生に読んでほしい初期〜後期の小説を時代別に徹底解説
