庄野潤三の作品に欠かすことのできない素材。
それが「家族」だ。
庄野潤三は、その作品の中で、繰り返し「家族」について語った。
まるで「家族」を語るために小説を書こうとでもしているかのように。
本記事では、庄野潤三の作品に登場する「庄野家の人々」について解説していきたい。
なお、もっと広い庄野潤三をめぐる人物相関図(友人・文壇仲間・ご近所さんまで)を知りたい方は、別記事「庄野潤三の人名録~親族や友人、文壇仲間、ご近所さん、読者まで」をご覧ください。
庄野貞一|庄野潤三の父親
庄野潤三の父親が庄野貞一(しょうの・さだいち)である。
帝塚山学院の初代学院長であり、1948年(昭和23年)には大阪府教育委員に就任し、初代教育委員長にも選出されている。
厳格な父親像は、庄野潤三の作品の中にも反映されている。
庄野春慧|庄野潤三の母親
庄野潤三の母親・庄野春慧(しょうの・はるえ)は、庄野文学の中にも頻繁に登場している。
庄野潤三の代表作『夕べの雲』は、母親の危篤と死を扱った小説だったし、徳島の郷土料理「かきまぜ」が母から嫁へと伝えられたことも、庄野文学の中では繰り返し語られている。
短編「団欒」は、作家となった<私>(つまり作者である庄野潤三)が、母親孝行をしたときの体験を書いた物語だった。
本作「団欒」については、次の記事で詳しく解説しています。
▶ 庄野潤三「団欒」庄野文学における家族小説の原型とも言える名作短編
庄野千壽子│庄野潤三の妻
庄野文学を支えた最大の功労者。
長女・夏子は、母(千壽子)が常々「うちは家内制手工業なんだから」と語っていたことを明かしている。
庄野潤三の作品は、妻・千壽子との共同作業によって成立していたとさえ言えるかもしれない。
長女・夏子との手紙をまとめた書簡集『誕生日のアップルパイ』が、没後に発売された。
本作『誕生日のアップルパイ』については、次の記事で詳しく解説しています。
▶【文芸考察】庄野千寿子『誕生日のアップルパイ』庄野文学は「夫婦の共著」だったのか?
今村夏子(庄野夏子)│庄野潤三の長女
夏子は「庄野文学の主役」であり続けた庄野家のヒロインである。
幼少期は父親を見つめる一人の少女として、結婚後は3人の子どもたちの母親として、庄野文学を支え続けた。
高校時代、父親に関する作文を『週刊現代』に発表したことがある。
▶ 庄野夏子「お父さんッ子」庄野潤三の長女・今村夏子が高校1年生のときに書いた作文を発見
両親の没後は、庄野文学の語り部として講演活動を続けた。
実際に庄野夏子のトークイベントに参加したときの記録は、次の記事で詳しく解説しています。
▶ 庄野潤三展記念トークイベント「おとうくん、おかあくんの思い出」夫が描いた<主婦の文学>
庄野龍也|庄野潤三の長男
作品中では「たつや(たっさん)」として登場。
ヒルトンホテルに勤務するホテルマンだが、少年時代は弟(かずや)をいじめるやんちゃな兄として作品に登場している。
妻は「庄野敦子(あつこちゃん)」。
庄野和也|庄野潤三の次男
作品中では「かずや」として登場。
結婚後は読売ランド前(多摩美二丁目)の坂の上の二階家で暮らした。
庄野文学のアイドル・フーちゃん(庄野文子)の父親でもある。
妻は「庄野操(ミサヲちゃん)」。
癌(がん)により亡くなった。
庄野英二│庄野潤三の次兄
代表作『星の牧場』や『ロッテルダムの灯』などで知られる児童文学者・庄野英二は、庄野潤三にとって二番目の兄だった。
長兄(庄野鷗一)が早逝したあと、庄野家や帝塚山学院を支える。
病気で亡くなるまでの様子は、庄野潤三の作品の中に残されている。
庄野潤三の名作短篇「相客」は、兄・英二が戦犯として逮捕されたときの体験を描いた作品だった。
▶【深読み考察】庄野潤三「相客」<英二伯父ちゃんの薔薇>の贈り主が戦犯だった頃
自叙伝として『鶏冠詩人伝』がある。
本作『鶏冠詩人伝』については、次の記事で詳しく解説しています。
▶【文芸考察】庄野英二「鶏冠詩人伝」庄野潤三の兄で、名作『星の牧場』を残した児童文学者の自叙伝
『レニングラードの雀』は、ソビエトを訪ねたときの旅行記である。
▶ 庄野英二『レニングラードの雀』ソビエトひとり旅とロシア娘たちとの出会い
庄野至│庄野潤三の弟
庄野潤三の弟・庄野至はエッセイストとして知られている。
『三角屋根の古い家』に収録されている「真夜中の祝宴」は、庄野潤三が芥川賞を受賞した夜のことを綴った作品。
本作「真夜中の祝宴」については、次の記事で詳しく解説しています。
▶ 庄野至「真夜中の祝宴」兄の庄野潤三が芥川賞を受賞した夜のこと
まとめ│「庄野サーガ」という歴史物語
庄野文学は、庄野一族の歴史を綴った「庄野サーガ」とも言うべき壮大な物語でもあった。
家族を綴ることは、庄野潤三という作家にとって間違いなく重大な使命のひとつだったのだ。
一方、家族を描くことで庄野潤三は、その作家としてのポテンシャルを最大限に発揮することができたとも言える。
家族によって支えられた文学。
それが庄野文学という世界だったのかもしれない。
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文学ブログ『時空標本』では、庄野潤三の紹介に力を入れています。
詳細は、次の記事をご覧ください。
▶ 庄野潤三とは|芥川賞を”超えた”作家の魅力と代表作10選を徹底解説
