今回の青春ベストバイは、オリンパス・ペンです。
小学生でも安心して使うことのできたハーフサイズカメラ。
2000年代のカメラブームでも大人気でした。
昭和の修学旅行で活躍したハーフサイズカメラ
小学校の修学旅行へ出かけるとき、旅好きの祖母がカメラを貸してくれた。
フィルム一枚につき倍の枚数を撮影することができるハーフサイズカメラだ。
36枚撮りフィルムを入れると72枚の写真を撮影することができる。
写真撮影にあたり、細かな設定は不要で、気をつけることと言えば、被写体の距離に応じて調節するゾーンフォーカスくらい。
最初にフィルムのISO感度さえ合わせておけば、シャッターボタンを押すだけで、誰でも簡単に写真を撮ることができた(だから「バカチョンカメラ」と呼ばれた)。
コンパクトカメラの名前のとおり、ボディが小さいから、ボストンバッグの片隅に入れておいても邪魔にならないし、レンズが広角だから、記念写真を撮るときにも大人数を写せるので便利だった。
困るのは、暗い場所でシャッターボタンを押すと、ファインダー内に赤いベロが出て、シャッターを切ることができないことだ。
高感度のISO400フィルムを入れておいても、室内ではシャッターの切れない場合が多かった。
ちなみに、僕が修学旅行に行ったのは小学6年生のときで、1979年(昭和54年)ということになる。
修学旅行から帰った後も、僕は、このコンパクトカメラを使い続けた。
祖母が旅行に出かけるときだけ、カメラを返すということで、実質的な管理は僕に任されていたらしい。
といっても、昭和50年代、記念写真以外で写真を撮ることはほとんどなかった。
古いアルバムに残っている写真と言えば、子どもの節句の日に五段飾りの前で撮った写真とか、旅先で撮ったスナップ写真とか、どちらかというと、非日常風景が多いようだ。
ハーフサイズカメラの代表選手オリンパス・ペン
ということで、今回の青春ベストバイは、そんな昭和を写し続けたハーフサイズカメラの代表選手「オリンパス・ペン」である。
2000年代に謎のゆるカメラブームが訪れたとき、フィルムカメラの中でも、特にハーフサイズカメラに人気が集まった。
カメラ本体の値段が安かったということもあるけれど、ハーフサイズカメラ特有のゆるい描写感が、特に若い層に支持されたのではないだろうか。
もちろん、面倒な設定が不要という手軽さも大きかったには違いないが。
ブームに乗って、中古カメラ屋へ行ったとき、懐かしいカメラを見つけて感動したことを覚えている。
それは、小学生の頃、祖母からもらって使っていた、あのコンパクトカメラだった。
もちろん、オリンパスペンにもたくさんの種類があるから、自分が使っていた機種を正確に特定することはできない。
とりあえず、比較的状態の良かった「オリンパスPEN EE-3」を買った。
オリンパス・ペンEE-3は1973年(昭和48年)5月発売。
かなり長く売れた人気機種だったらしいから、僕が修学旅行へ持っていったカメラも、このペンEE-3であった可能性は高い。
「EE」というのは「Electric Eye システム(自動露出調節機構)」のことで、つまり、暗い所では赤ベロが出てシャッターを切ることができないという、セーフティネットのこと。
写真がちゃんと写らないような場面で、フィルムを無駄にすることがないよう配慮されている。
僕がフィルムカメラにハマったのは2000年代後半で、世の中全体に謎のフィルムカメラブームが来ていた。
まさか、大人になってから、小学生のときに使ったカメラで写真を撮るなんて想像さえもしなかったけれど、デジカメ時代に訪れた、このフィルムカメラブームは、非常に楽しいものだった。
何より、意味のない街の風景をスナップする楽しさは、大人になって初めて覚えた快感だったから、あの頃は随分と無駄にフィルムを消費したような気もする。
当時は、外国製のフィルムが、まだ安く手に入る時代で、コンビにでもDPEサービス(フィルム現像とプリント)をやっていたから、質にこだわりさえしなければ、本当に気軽にフィルム写真を楽しむことができた。
もちろん、質にこだわる人間は、ハーフサイズカメラで写真を撮ったりなんかしないけどね。
というか、あの低品質の写真こそが、フィルムカメラの醍醐味だったんだよなあ。
今から思うと、あの頃が、気軽にフィルム写真を撮ることのできた、最後の時代だった。
これからフィルムカメラを始めようと思ったら、フィルムの入手とか、現像・プリントサービスとか、考えることが多くて大変そうだと思う。
大体、お金がかかるだろうから、若い人たちにはつらいよね。