骨董品にも旬がある。
骨董市の夏に欠かせないのが、ガラスの器だ。
見た目にも涼しいガラスを器を用いることで、昔の人たちは、生活の中に涼を求めた。
そんな庶民の知恵が、骨董市の中で生き続けている。
戦前戦後のガラスコップは安価で入手可能
ガラスの器と言って真っ先に思い浮かぶのが、ガラス製のコップだろう。
骨董市に行くと、明治時代に作られた古いものから、昭和30年代のノベルティまで、実に様々なガラスコップに出会うことができる。
当たり前だけれど、100年以上昔の明治ガラスは、値段が高い。
それから、比較的近年のものであっても、企業のノベルティ製品はマニアも多く、プレミア的な価値が付いて高い。
結局、お買い求め安いのは、戦前から戦後にかけて生産され、一般家庭に流通した、普通のガラスコップということになる。
そして、日常の暮らしの中で、気兼ねなく実用できるのが、こうした昭和初期に生産されたガラスコップだ。
「戦前のガラスコップ」と聞くと、すごく古くて希少価値がありそうだが、意外と数が多いので、値段は安いことが多い。
フリーマーケットに行けば、500円程度で入手できることさえある。
お年寄りの家庭では、未だに古いコップが仕舞い込まれたままになっていたりするものだ。
だから、特別のこだわりがなければ、古いコップなんて、いくらでも安く買うことができる。
日常使いの雑器というところに、ガラスコップの価値があるのだろう。
大正~昭和初期は品質の良いものが多い
古いガラスと言うと、気泡とか異物混入とか歪みとか皺などの外見的な特徴に希少価値を見いだす場合が多い。
確かに、戦前のものでも、品質の低いものには、気泡や異物混入が多く見られるようである。
もっとも、品質が良くなると、現代の製品と、あまり変わらないようなものも出てくる。
一般に、大正~昭和初期の生産技術のレベルは高くて、戦中から戦後にかけて、原材料不足や技術者の不足なども手伝って、製品の品質は、かなり低下していったらしい。
だから、「時代の古い方が品質も良くない」と一概に考えるのは、時代を誤る原因となってしまう。
自分の場合、むしろ、品質が著しく悪くなった終戦前後に生産されたものに愛着を感じるが、流通の多かった戦前に比べて、終戦直後のものは、骨董市などでも、なかなか見つからないようである。
自分が、頻繁に骨董市へ通っていたのは、2000年代初め頃のことだが、当時は、とにかくガラスコップを中心に買い集めた。
バラよりも揃っているものが好きだから、箱のままで残っているものは、全部まとめて箱買いする。
同じものを6個買っても仕方ないのだが、箱のまま残っているという状態に、自分は惹かれたらしい。
だから、その頃に蒐集したガラスコップは、昔の箱に入ったままの状態で、いくつもクローゼットの中に仕舞い込んである。
今の会社を定年退職したら、若い頃に集めたガラクタを少しずつ売りさばこうと考えている。
「自称・骨董商」みたいな暮らしが、将来の夢みたいなものだろう。
アールデコ様式のグラス&ソーサ
写真は、ガラスコップとしては珍しいクロームの色合いを持ったグラス&ソーサである。
アールデコを意識した鋭角的なデザインや、気泡の入り方、ソーサ付きであることなどを考えると、昭和初期あたりに生産されたものらしい。
流れるようなクロームの色彩と鋭角的なデザインが、いかにもモダンでクール、涼しい印象を与えている。
これは1客セット2,500円だったものを、まとめて3セット買ってきたもの。
近所に、古い食器を得意とするアンティーク・ショップがあって、この店では随分買い物をさせてもらった。
外箱がなかったため、仕舞い込むことなく、20年近くガラスケースの中で飾り続けている。
もちろん未使用品(いわゆるデッドストック)。
こういうガラスコップだったら、いくつあっても良いと思うけれど、残念ながら簡単に見
つかるものではない。
だから、骨董探しは楽しいんだけれどね。
10年後、メルカリに出ていると思うので、楽しみにしててください(笑)