2000年代の日本を襲った謎の切手ブーム。
なにしろ、あのオシャレ雑誌「ブルータス」までが切手を特集するくらいでしたから。
特集タイトルは「切手デザインをなめんなよ!」。
さすが、ブルータスって感じです。
ブルータスの「切手デザインをなめんなよ!」
ブルータスが切手デザインを特集したのは、2003年11月15日(No.537)。
特集タイトルの 「切手デザインをなめんなよ!」は、いかにもブルータスらしくて、ちょっと震えました。
つまり、どちらかというと、稀少性の側面から語られることの多かった切手を、純粋にデザインの面から語ってみようということ。
デザインにこだわりのあるブルータスらしい特集ですよね。
まあ、そのくらい、当時の日本は、切手で盛り上がっていたっていうことでもあるんですけどね。
ゼロ年代の切手ブーム
2000年代の切手ブームの特徴は、切手が、まるで雑貨のように扱われていたっていうことです。
それまで、切手蒐集というのは、カタログ片手に記念切手をコンプリートするマニアックな趣味というイメージがありましたが、2000年前後から、かわいい切手を集める若い女性が多くなりました。
珍しい切手ではなく、かわいい切手を集める価値観が生まれたんですね。
彼女たちに人気のあったのは、1960年代から1970年代にかけての、ちょっとレトロな雰囲気のある切手で、蒐集の対象は日本国内の切手ばかりでなく、外国の切手にまで広がっていきました。
特に、レトロ感の強い東欧モノは、雑貨感覚が強くて人気が高かったようです。
オシャレな雑貨を扱うショップでも、東ヨーロッパの切手を扱い始めて、切手は雑貨としての価値観を、どんどん向上させていきます。
若い女性を対象とする切手関係の書籍も、この時期、いろいろと出版されていました。
切手コミック『切手な北古賀』(2006)の著者・木下綾乃さんなど、切手派文化系女子の活躍ぶりも目覚ましい時代だったんですよね。
そんな時代、「ブルータス」は、どんな切手特集を紹介してくれたのでしょうか。
早速、当時の誌面をご紹介してみたいと思います。
カルティエ×切手広告
表紙をめくると、最初のページにあるのがカルティエの広告なんですが、なんと、この広告、切手のデザインになっています(ちゃんと目打ちまである)。
1847年から2003年までのカルティエの歴史を、デザインの面から振り返っているもので、カルティエのファンでなくても、これは欲しくなってしまいますよね。
切手は、アート&デザインの教科書だ!
見開きの特集タイトルページには「切手は、アート&デザインの教科書だ!」のキャッチ・コピーがあります。
英語フレーズは「Art to be mailed」。
デザイン切手の実力、教えます。
さらにページをめくると、「デザイン切手の実力、教えます。」のメッセージ。
ブルータスがこだわっているのは、デザイン的に価値観の高い「デザイン切手」。
切手をデザイナーズアイテムとしてコレクトするという、ブルータスからの新しい提案でした。
大物デザイナーたちの切手デザイン
まずは正統派、デザイン界の大御所たちのデザイン切手から。
ランス・ワイマン、ジャン・ミッシェル・フォロン、亀倉雄策、レイモンド・サヴィニャック、レイモンド・ローウィ、ティモ・サルパネバらの名前が登場。
デザイン大国オランダのデザイン切手
デザイン大国オランダの切手は、当然、デザイナー天国でもあります。
オランダを代表するデザインオフィスのスーパースタジオ、ウィム・クローウェル、カレル・マルテンス、カス・オールトハイス、ユリアーン・スフローファー、ケイス・デ・ヨング、ウィレム・ディープラム&ヤン・ファン・トールン、レックス・ホルン、アレックス・スホーリング、ヤン・スロットハウダー&ウィレム・フラーツマ、ヴィクトー・レヴィー、ヘラルド・ハッダース、ロバート・ナカタ、スウィップ・ストロク、、、全部は並べられません!
切手は未知なるデザイナーとの出会い系ツール
お気に入りの切手のデザイナーを調べて、そのデザイナーがデザインした切手を探していくと、切手の世界がどんどん広がっていきます。
イタリアやスイスの切手にはクレジットが入っているので、デザイナーがすぐに分かります。
トラディショナルなトピカルコレクション
自分の趣味にぴったりのジャンル切手を集中的に集めていくトピカルコレクションは、切手蒐集の王道です。
いいデザインはいいデザイン
デザイナーが不明でも、好きなデザインの切手を集めて、コラージュ感覚でストックブックへ挿し込んでいく。
味出しのコツは、ポイントポイントでイマイチ冴えない切手を差し込んでいくことだそうです。
まるで一枚の絵のようで美しいですよね。
ディック・ブルーナも郵便好き?
日本の「ふみの日」切手でもおなじみのディック・ブルーナ。
切手以外に多くの郵便備品をデザインしているって知ってました?
郵便デザインに魅せられて、、、
海外旅行へ行くたびに、必ず郵便局へ立ち寄るという郵便マニア。
ラベルやシールなど、郵便局にはお宝がいっぱい。
名画12点、しめて793円なり!?
ミロにピカソ、シャガールにフランシス・ベーコン。
珠玉の名画コレクションも切手で揃います。
『イタリア・デザイン・シリーズ』
ミラノ・コレクションを取り上げる『イタリア・デザイン・シリーズ』は、全部欲しくなってしまいますね。
なんと、ジャンフランコ・フェレとジョルジョ・アルマーニがデザイン画を献上。
ブラジャー切手は、ドルチェ&ガッバーナの下着ライン<Inteimo>から。
クリツィアとプラダは、広告写真で参加しています。
『アメリカン・フォトの名作』
1850年から1971年までの有名フォトグラファーの作品が、なんと切手になった『アメリカン・フォトの名作』全20枚。
マン・レイやユージン・スミス、マイナー・ホワイトといった巨匠の作品がラインナップされています。
フランスからは『フランス人写真家の仕事』、イギリスからは『素敵な帽子』も。
『グローバル・シティ』シリーズ
切手先進国シンガポールは、企業から協賛金を募って、タイアップの切手シートを発行。
マクドナルドにコカコーラ、CNN、、、
スウォッチの切手は欲しいですね!
ブルータス発注の特別切手デザイン
ブルータスがアーチストに切手デザインを発注。
田名網敬一、佐藤可士和、村上隆、篠山紀信、信藤三雄、グルーヴィジョンズが参加。
篠山紀信、女性の陰毛のアップ写真がすごい!(そして美しいです)。
トピカル切手コレクション
世の中には、本当にいろいろな切手の集め方があるんですね。
クラシック音楽マニアは音楽切手を、理系男子は「電気の発明家」切手をコレクション。
究極の切手デザインとは?
独特の個性がある北朝鮮の切手から、切手デザインを読み解きます。
解説は、なんと郵便学者の内藤陽介さん。
一流の専門家を連れてくるあたり、ブルータスってやっぱりすごいですよね。
切手デザイナーは美女が多い?
オーレリー・バラスさんは、<美しすぎる>グラフィック・デザイナー。
フランス初のハート型切手も彼女の作品。
CD型のシャンソン切手もオシャレですね。
掟破りの「見返り美人」と「月に雁」
かつて、昭和の切手ブームでは、漫画『ドラえもん』にも登場した人気切手の「見返り美人」と「月に雁」。
なんとブルータスには、こんなに贅沢な郵便物が届くんですね!
切手が日本美術を教えてくれた
「夢の日本美術切手」「国宝シリーズ」「近代美術シリーズ」、日本美術を教えてくれたのは、もちろん切手でした。
ブルータスの日本美術切手の解説は永遠保存版です!
この数ページだけでも、絶対に読む価値あり。
ブルータスのカルチャー特集は本当にヤバいと思います。
もうムック本で出版しないともったいないですよっていうレベル。
最近、切手デザインが気になって、、、という若い方は、ぜひ古本で探してみてくださいね。
まとめ
ということで、以上、今回は「ブルータス」の切手特集『切手デザインをなめんなよ!』をご紹介しました。
知的に切手を楽しみたい方には、最高の特集ですよ!
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