読書体験

NHK「ハートカクテル カラフル(夏編)」ちょっとセンチな大人の青春物語

NHK「ハートカクテル カラフル(夏編)」ちょっとセンチな大人の青春物語

「ハートカクテル カラフル」(夏編)の放送が決定。

7/31(月)~8/4(金)  [総合] 夜11:45~11:50 (5夜連続)。

「ハートカクテル」には、夏が似合う。

ちょっとだけセンチメンタルな大人の青春物語

わたせせいぞう原作の漫画「ハートカクテル」。

その新作テレビアニメ「ハートカクテル カラフル」(夏篇)の放送が決まった。

ハートカクテル カラフル 夏編(♯6~10)
7/31(月)~8/4(金)  [総合] 夜11:45~11:50 (5夜連続)

「春編」も良かったけれど、「夏編」はやっぱり楽しみ。

「ハートカクテル」に似合うのは、やはり夏だからだ。

わたせせいぞうの「ハートカクテル」が始まったのは、1983年(昭和58年)。

東京ディズニーランドが開園し、任天堂はファミコンを発売、「平凡社」が「マガジンハウス」へと社名変更した年だ。

「新しい時代の予感」を感じさせる時代。

それが1983年という時代だった。

連載誌は講談社『モーニング』。

最初のコミックは「モーニング・オールカラー・コミックブック」として、1984年(昭和59年)12月に発売された。

帯には「ALL COLOR SHORT COMICS」の文字がある。

一番始めの「vol.1 バラホテル」は、わずか4ページ。

それが、1980年代を代表する「ハートカクテル」という物語の世界だった。

登場人物は、大抵の場合、大人だ。

掲載誌が『モーニング』だったから。

彼らは、結婚していたり、離婚していたり、これから結婚しようとしていたり、これから離婚しようとしていたりした。

大人の男と大人の女たち。

ハッピーな物語があれば、ブルーな物語がある。

でも、ちょっとだけセンチメンタルな物語というのが、「ハートカクテル」のイメージだったような気がする。

まるで、ビターテイストなビールの味わいのように。

そう、「ハートカクテル」は、大人の物語だったのだ。

青春の終わりを告げる世代に向けて贈られた、青春の物語。

「ハートカクテル」には夏が似合う

「ハートカクテル」は、季節感を大切にする漫画だ。

どの季節にも、男と女のドラマがある。

だけど「ハートカクテル」が一番似合う季節は夏だ。

1980年代に夏が似合うように、「ハートカクテル」には夏が似合う。

だから、わたせせいぞう自選集『ハートカクテル~サマーストーリーズ~』が出たとき、わざわざ発売日に買った。

「ハートカクテルと夏」という、最高の組み合わせに心が踊ったから。

もちろん、当時のコミックは全巻揃えて持っている。

著者のサインが入った本だってある。

「ハートカクテル」は、80年代のマスターピースだ。

でも、2021年の『ハートカクテル~サマーストーリーズ~』も悪くない。

なにより、カラーのイラストが素晴らしくきれいだ。

好きな作品は「’84──夏」。

避暑地の別荘で知り合った女の子との出会いと別れ。

新しい恋は生まれなかったけれど、夏の思い出は残った。

そんなほろ苦い味わいが、「ハートカクテル」にはよく似合う。

「ハートカクテル」が理想の世界だった時代

テレビアニメ「たばこ1本のストーリー ハートカクテル」の放映開始は1986年(昭和61年)。

NTTの株式公開に日本列島が沸騰し、カルロス・トシキの1986オメガトライブが「君は1000%」を歌った、バブル景気元年。

僕は大学一年生で、若者たちは「たばこ1本のストーリー」の世界に憧れていた。

それは「時代がオシャレになった」と、はっきり分かる時代だった。

4月に『FINEBOYS』、5月に『メンズノンノ』が創刊。

「ハートカクテル」のお洒落な世界は、幻想ではなくリアルな世界だったのだ(と誰もが思った)。

専売公社は、1985年に「日本たばこ産業」へと生まれ変わり、1988年から「JT」と名乗り始める。

時代が、凄い勢いで走り続けていた。

そんなことは、大学生の僕らでも実感できることだった。

金曜日の夜、ネキ君の部屋へ行くと、必ず「ハートカクテル」を観ていた。

「ハートカクテル」こそ、彼の理想の世界だったのだろう。

だからこそ、大学を卒業した年、彼は「JT」に入社するのだ。

想像さえ絶する痛ましい未来が、すぐそこに待っているとも知らずに。

「ハートカクテル」のテレビアニメと言うと、僕はすぐにあの頃を思い出す。

大学を卒業すれば「ハートカクテル」みたいな世界があるんだと、本気で信じていた、あの頃のことを。

40年後の「ハートカクテル」

今年の夏も、僕は「ハートカクテル」を読むだろう。

懐かしき80年代の青春。

あれから40年も経ってしまったなんて、まるで嘘みたいだけど。

ハートカクテル カラフル 春編(♯1~5)再放送
7/27(木)  [総合] 夜11:45~0:10 (5本一挙放送)

 

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みづほ
バブル世代の文化系ビジネスマン。札幌を拠点に、チープ&レトロなカルチャーライフを満喫しています。