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読売新聞「庄野潤三 静かなブーム」生誕100年を迎えて~現在も入手可能な庄野文学作品

読売新聞「庄野潤三 静かなブーム」生誕100年を迎えて~現在も入手可能な庄野文学作品

庄野潤三は、1921年2月9日生まれで、2021年は生誕100年に当たる。

誕生日前日の2月8日、読売新聞夕刊には「庄野潤三 静かなブーム」の見出しが付いた記事が掲載された。

記事には「2009年に88歳で亡くなった後も温かな作風が愛され、新しい文庫本が出るほか、川崎市多摩区の自宅の一般開放が行われるなど、静かなブームが続いている」とある。

講談社文芸文庫の庄野潤三作品

講談社文芸文庫は10日、脳内出血で倒れた64歳の庄野さんが家族に支えられ、回復する姿をユーモアを交えて描く闘病記「世をへだてて」を刊行。同文庫の庄野さんの著作計7冊に、本人の写真をあしらった帯をつけ、PRする。(「読売新聞」2021/2/8/夕刊)

決してベストセラー作家というわけではないのに、死後10年以上経つ今も、庄野潤三の一部の著作は、新刊で入手可能である。

移り変わりの激しい現代において、これは凄いことだ。

ましてや、未だに新刊が発行されるというのは尋常ではないだろう(作家本人が亡くなっているので、当然、過去に発表された作品の文庫化であるとしても)。

読売新聞の記事によると、講談社文芸文庫では「同文庫の庄野さんの著作計7冊に、本人の写真をあしらった帯をつけ、PRする」とある。

ちなみに、これまでに講談社文芸文庫から刊行された庄野潤三の作品は、「夕べの雲」「絵合せ」「紺野機業場」「インド綿の服」「ピアノの音」「自分の羽根」「愛撫・静物」「野菜讃歌」「野鴨」「陽気なクラウン・オフィス・ロウ」「鳥の水浴び」「星に願いを」「ザボンの花」「明夫と良二」「庭の山の木」に、今月新刊で出る「世をへだてて」を加えた16作品である。

このうち、「夕べの雲」「ザボンの花」「鳥の水浴び」「星に願いを」「明夫と良二」「庭の山の木」「世をへだてて」の7作品は、現在でも入手可能で、「庄野さんの写真をあしらった帯をつけて」書店に並ぶことになる。

夏葉社の「山の上の家」

作風から、庄野さんの生活自体に興味を持つ読者も多い。2018年には、多くの小説の舞台となった自宅の写真なども収めた「山の上の家」(夏葉社)が刊行。同年9月、初めて自宅の一般開放が行われ、300人近いファンが集まった。(「読売新聞」2021/2/8/夕刊)

夏葉社の「山の上の家」は、作家・庄野潤三読本とも言うべき充実の内容で、単行本未収録の短篇小説を掲載するほか、全書籍リスト、全短編リスト、全随筆リストなど、資料的価値も高いので、庄野文学のファンとしては必携の書籍である。

現在も入手可能なので、これから庄野潤三の小説を読みたいという方は、まず、この「山の上の家」から入門しても良い。

小学館「P+D BOOKS」の庄野潤三作品

読売新聞の記事にはないが、小学館のペーパーバック「P+D BOOKS」でも、庄野潤三の作品が刊行されている。

昨年までに「前途」「水の都」「エイヴォン記」「鉛筆印のトレーナー」「さくらんぼジャム」の5作品が出ているほか、2021年1月には「貝がらと海の音」が刊行され、計6作品が現在でも入手可能。

新潮文庫の庄野潤三作品

定番の新潮文庫からは、これまでに多くの作品が文庫化されているが、現在でも入手可能となっているのは「プールサイド小景・静物」のみ。

これは、1965年から発売され続けているロングセラー作品だ(ただし、現在発売されているのは2002年に改版されたものだが)。

講談社文芸文庫やP+D BOOKSと合わせると、現在でも相当数の庄野作品を、新刊で入手することができる。

生誕100年の機会に、戦後昭和の純文学を代表する庄野潤三作品に触れてみてはいかがだろうか。

ABOUT ME
みづほ
バブル世代の文化系ビジネスマン。札幌を拠点に、チープ&レトロなカルチャーライフを満喫しています。