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「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」一人の作家が生きた歴史を辿る

「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」一人の作家が生きた歴史を辿る

東京都練馬区立石神井公園ふるさと文化館で、特別展「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」が開催されている。

練馬区居住期を中心に、作家の生原稿や書簡、書籍、写真などを紹介する展覧会で、予想以上に見応えのある展示内容となっている。

僕はかなり最近になってからの読者で、庄野さんの作品を読み始めてから、まだ一年半にしかならない。

その代わり、この一年半の間に、庄野潤三のすべての著作を集めて読破し、庄野さんについて書かれた文章も、目に付く限り読むようにしている(このブログは、そのための記録だ)。

全著作を読み終えた現在も、庄野さんの作品を読む日常は続いており、既に二回、三回と繰り返している作品も少なくない。

コロナ禍になってからの一年半という時間は、僕にとって庄野文学漬けの時間だったと言ってもいい。

庄野さんの作品で紹介されている文学作品は手に入る限り読んだし、庄野さんの読書体験を追体験することで、庄野文学をもっと深く理解したいと思っている。

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そんな読書生活をしている僕にとって、今回の「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」は本当に楽しみな企画だった。

生原稿、写真、書籍、手紙、、、展示のどこを見ても、庄野さんの姿が思い浮かんで来るものばかりだ。

あまりの感動で、懐かしさのあまり胸が押し潰されそうになったほど(どうして「懐かしい」だなんて感じたのか不思議だが)。

一番驚いたことは、ガンビア村滞在中の親友だったエディノワラ・ミノーと一緒に写った写真があったこと。

僕の中でミノーはもっとインドっぽいイメージをしていたのだけれど、写真で見るミノーはめっちゃ好青年のイケメンである。

ニコディム夫人の住んでいる「数学者の城」は、さすがはアメリカの豪邸といった感じで、ガンビア時代の一連の写真を見ることができて本当に良かった。

ちょうど今『シェリー酒と楓の葉』を読んでいるところなので、ガンビア時代の展示物には特に注意を惹かれてしまう。

『シェリー酒と楓の葉』の中で、アウターを持って行かなかった庄野さんは、現地でツイードコートを買うのだが、そのツイードコートもある。

「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」のパンフレット「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」のパンフレット

日本経済新聞に連載された『ザボンの花』の切抜きは、庄野さんのお母さんが毎日切り抜いて取っておいてくれたもの。

神奈川県生田の自宅を新築した際の宴会の様子も写真で見ることができる。

井伏鱒二や河上徹太郎、小沼丹、村上菊一郎、阪田寛夫などが集まったときのもので、千壽子夫人のほかに長女・夏子さんも写真には写っている。

自宅周辺で撮影された写真は、それにしても「何もない野中の一軒家」という感じである。

『ザボンの花』の様子をビジュアルで感じることのできる写真だ。

子どもたちが小さかった頃に家族で聴いていたレコードもある。

阪田さんの「新しい少年少女の歌」やオペラのアリア集などは、『絵合せ』前後の庄野文学の一場面をすぐに思い起こさせてくれる。

夫婦の晩年シリーズでは「おともだーち」というエピソードで登場している、あのアリアのレコードだろう。

「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」「生誕100年記念 作家・庄野潤三展――日常という特別」

圧巻は庄野一族が勢揃いしているお正月の記念写真で、庄野一族総勢15名が写っている。

フーちゃん、けい子ちゃん、ミサヲちゃん、、、

「夫婦の晩年シリーズ」が好きな人だったら、全員の名前を当てることができるかもしれない。

庄野さんはもちろん「山田さん」が編んでくれたカーディガンを着ている。

ここまで来たら、『絵合せ』に登場している「絵合せカード」の実物も見てみたかった

さすがの庄野さんも「絵合せカード」までは残しておかなかったんだろうな。

書名:特別展「生誕100年記念 作家・庄野潤三展―日常という特別」図録
発行日:2022/1/15
発行:東京都練馬区立石神井公園 ふるさと文化館

ABOUT ME
みづほ
バブル世代の文化系ビジネスマン。札幌を拠点に、チープ&レトロなカルチャーライフを満喫しています。