冬のビジネス・スタイルはツイードが基本。
なにしろ、暖かいし、クラシックなビジュアルもいい。
スーツ・カンパニーのジャケットなら、コスト・パフォーマンスも高い。
村上春樹はツイード・ジャケットが好きだった
村上春樹『1Q84』に、ツイードのジャケットが好きな編集者が出てくる。
おそらく服装なんぞに興味がないことを世界に示すためだろう、常に似たような服しか着ない。ツイードのジャケットに、白のオックスフォード綿のシャツか淡いグレーのポロシャツ、ネクタイはなし、グレーのズボン、スエードの靴、それがユニフォームのようなものだ。色と生地と柄の大きさがそれぞれわずかに異なるツイードの三つボタンジャケットが半ダースばかり、丁寧にブラシをかけられ、自宅のクローゼットに吊されている光景が目に浮かぶ。(村上春樹「1Q84」)
「色と生地と柄の大きさがそれぞれわずかに異なるツイードの三つボタンジャケットが半ダースばかり」というところがいい。
編集者(小松さん)は、「私服の制服化」に早くから取り組んでいたのかもしれない。
そして、ツイード好き編集者の原風景は、作者である村上春樹自身から派生しているものと思われる。
「僕らが若い頃は、〈ヴァンヂャケット〉とかアイビーリーガースタイルが全盛だったので、当時のアメリカ映画で勉強しましたよね。『ティファニーで朝食を』のジョージ・ペパードとか、『動く標的』のポール・ニューマンを真似して、ツイードのジャケットにボタンダウンシャツにタイを締めたり」(ユニクロ「村上春樹に26の質問」/『 LifeWear magazine』所収)
ユニクロのインタビューでも、ツイード・シャケット好きが、顔を覗かせている。
そして、そんな村上春樹の小説を愛読している僕も、ツイード・ジャケット好きの一人だ。
もしかすると、ツイード・ジャケットは、文化系の男性に似合うファッションなのではないだろうか。
ロールモデルは、古い洋画の大学教授
僕が、ツイード・ジャケットを愛する理由のひとつに、クラシックなビジュアルがある。
古い洋画に登場するお年寄りの大学教授みたいな貫禄が、ツイード・ジャケットにはある。
僕にとってファッションのロールモデルは、古い洋画に登場するお年寄りの大学教授だ。
知的で、オシャレで、人生の経験を積み重ねた高齢の大学教授には、ツイードのジャケットが似合う。
そんな学者先生みたいになりたいと、服を買うときにはいつも思う(そして、専門分野を持たない僕は決して大学教授にはなれない)。
北海道の酷寒の冬はツイード・ジャケットで乗り越える
僕がツイード・ジャケットを好んで着る最大の理由は、何よりも暖かいからだ。
寒がりなのに、北海道の冬が大好きな僕は、人並み以上に防寒にこだわる。
真冬の北海道の寒さは半端ではない(当たり前だが)。
防寒着は、人の健康を左右する重要な問題なのだ(ゴーゴリ『外套』の主人公(アカーキー)と同じように)。
北海道の凍るような冬を乗り越えるために、僕は、ツイードのジャケットを愛好していると言ってもいい。
ウールをたっぷりと織り込んだツイード・ジャケットは、間違いなく暖かい。
肩にずっしりと重いツイードのジャケットを着込んだときの安心感に勝るものはない。
北海道のビジネスマンは、実用本位の立場から、ツイード・ジャケットを選んでいるのだ(たぶん)。
スーツ・カンパニーはコスパが高い
我が家のツイード・ジャケットは、スーツ・カンパニーで買うことが多い。
4プラ(「4丁目プラザ」というファッションビル)の解体に伴い、スーツ・カンパニー札幌店は、現在、日の出ビルに入っている(地下鉄「大通駅」直結)。
スーツ・カンパニーの製品は、コスパがいい。
この冬買った「MOON」のジャケット(ハウンドトゥース柄)は、3万円ちょっとだった。
洋服にばかりお金をかけられないサラリーマンには、ちょっとありがたい価格帯である(本音を言えば、もっと高級なジャケットも欲しいけれど、我が家では、洋服代よりも書籍代を優先することになっている)。
生地ブランドが「ABRAHAM MOON(アブラハム・ムーン)」というところもいい。
一般に、ツイード・ブランドと言えば「ハリスツイード」が有名だけれど、我が家のツイード製品には、圧倒的にMOON社のものが多い。
僕の「ツイード偏愛」は、「MOON偏愛」でもあるのだ。
スーツ・カンパニーでは、毎年のように、MOON社の生地を使ったジャケットやスーツを発売されている。
冬が近づくたびに、僕は、スーツ・カンパニーから発売されるであろうMOON社の製品情報を、注意深く見守っているのだ(北海道の冬を乗り越えるためにも)。
スーツ・カンパニーのジャケットは、小回りが利くところもいい。
つまり、小さなサイズ展開も豊富なのだ。
僕は背が低いから、ジャケット選びには苦労する。
ジャスト・サイズが求められるビジネス・シーンにおいて、オーバー・サイズのジャケットを着ることほどカッコ悪いものはない(いわゆる、ダブダブのスーツ)。
ビジネス・ファッションでは、大が小を兼ねることはない(むしろ、小さめサイズの方がスマートに見える)。
その点、スーツ・カンパニーでは、一般的な製品も、小さなサイズから用意されているので、低身長の男性でも困ることがない(これは、本当にすごいことだと思う)。
ただし、小さなサイズは、早い時期に品切れになる可能性が高いので、できればシーズン初めに買った方がいい。
ちなみに、特に重要なビジネス・シーンに使うスーツは、スーツ・カンパニーのオーダー・スーツを愛用(ツイード・ジャケットはカジュアルすぎるので)。
スーツ・カンパニーのオーダー・シャツは、真面目にコスパが高くて重宝する。
冬のビジネス・ファッションは、防寒が大きな目的になっているので、ジレがセットになっているものは、3ピースで購入するのが基本。
小さなジレ一枚で、本当に防寒の意味を知ることがある。
ただし、暖房のしっかりした室内では、逆に暑すぎることにもなりかねないことに注意が必要(自分は「寒いよりマシ」だと考えているが、仕事中に汗をかくのも困る)。
デザインは、圧倒的にヘリンボーン柄がいい(クラシックだから)。
古い洋画には、随所にヘリンボーン柄を着た男たちが登場している。
ちなみに、ヘリンボーン柄の靴下(ビジネス・ソックス)は、アルマーニで買うことが多い(ヘリンボーン柄のビジネス・ソックスは意外と少ないのだ)。
下がグレーのスラックスだったら、上は、ネイビーのツイード・ジャケットを合わせる。
ツイード・アイテムの組み合わせでも、意外とスタンダードなコーディネートは可能なのだ。
スーツ・カンパニーから、MOON社の生地を使ったネクタイが発売されたときは、グレー系の商品を一揃い買った。
僕のビジネス・ファッションは、ミディアム・グレーが基本となっているからだ(それとネイビー)。
部厚いツイードのネクタイは、はっきり言って結びにくいけれど、「首元が暖かい」という安心感がある(それにしても、なんて寒がりなんだろう)。
マフラーや手袋も、もちろん、ツイード生地のものを選ぶ。
ハリスツイードほど多くはないとは言え、MOON社のアイテムは、毎冬どこかのセレクト・ショップで売られている。
小柄な自分は、マフラーも大きすぎない方が、全体のバランスが取れる。
SHIPS(シップス)で見つけたツイードのマフラーは、小振りなサイズ感が気に入った。
ツイードのアウターは、J.PRESSとA.P.C.(アーペーセー)のものを愛用。
特に、アーペーセーのステンカラーコートは、フォックス・ウールを使ったお気に入り。
ただし、ツイードのスーツに、ツイードのコートは、やり過ぎ感があるので、あまり一緒に合わせることはない(モコモコ感もすごいし)。
お年寄りの大学教授としては、グレーのツイード・コートには、黒いタートルネック・セーターなんかを、さりげなくコーディネートしたい。
こうして、ツイードのファッション・アイテムは、僕の北海道ライフを、しっかりとサポートしてくれる存在となった。
僕が、北海道の冬を好きだと感じているのは、あるいは、ツイードのアイテムを心ゆくまで楽しむことができるせいかもしれないな。