ブレッド&バターにはたくさんのベストアルバムがある。
これからブレバタを聴きたいけれど、どのベスト盤を聴いたらいいのか、分からない?
大切なことは、それぞれのベストアルバムの特徴を理解することだ。
初めてのブレッド&バター
夏と言ったらブレッド&バター。
湘南サウンドと言ったらブレッド&バター。
海を感じるシティポップと言ったらブレッド&バター。
大人はやっぱりブレッド&バター。
ってことは分かったけれど、なにしろ、ブレバタはキャリアが長い。
デビューは1969年(昭和44年)。
シングル41枚、オリジナル・アルバム24枚。
どこから聴けばいいの?ってなる。
そんなときはベストアルバムでしょう。
まずは、代表曲を聴く。
そして、特に好きなところから深入りしていけばいい。
で、ブレッド&バターのベストアルバムって?
そう、長いキャリアの中、数々のレコード会社を渡り歩いてきたブレバタには、実にたくさんのベストアルバムがある。
その数、なんと22枚。
オリジナル・アルバムとほぼ同じ枚数のベストアルバムがあるのだ。
じゃあ、初心者は、どのベストアルバムから聴いたらいいの?
今回は、ブレッド&バターのベストアルバムの中で、特にお勧めのベストアルバムを紹介したい。
ブレッド&バターの歴史
最初に理解しておきたいのが、ブレッド&バターの歴史。
ブレバタは、アルバム2~3枚出してはレコード会社を変える、という歴史を繰り返している。
レコード会社が変われば、コンセプトも変わる。
コンセプトが変わると、サウンドも変わる。
ということで、ブレバタを聴くときはレコード会社に注目。
まず、デビューはフィリップス・レコード。
当時のコンセプトは「和製サイモン&ガーファンクル」だった。
シティポップというよりフォークソング。
そう言えば、NHK-BSの『フォーク大全集』にも出てたなあ(1994年12月)。
「傷だらけの軽井沢」や「マリエ」のヒット曲が生まれたものの、アルバムを出すまでには至らなかった。
次がポリドール・レコードだけど、シングル一枚出しただけ。
というのも、正規の活動は<シローとブレッド&バター>名義だったから。
人気曲「野生の馬」は<シローとブレッド&バター>で、後藤次利や林立夫、石川鷹彦らが参加していた。
そして、最大手の日本コロムビアへ移籍。
ここから、ちゃんとした仕事らしくなる。
「誰が好きなの」「ピンクシャドゥ」「夕暮れ」「ともしび」「セーリング・オン・ボード」と、シングルはみんな良い。
アルバムも『IMAGES』(1973)、『Barbecue』(1974)、『MAHAE(真南風)』(1975)の3枚をリリース。
ファーストアルバムのリリースが、ちょうど今から50年前か(笑)
サポートメンバーに細野晴臣、林立夫、鈴木茂、コーラスに白鳥恵美子(トワ・エ・モア)、山本潤子(赤い鳥)の名前が並ぶなど、クオリティも高い。
特に、1974年のシングル「ピンク・シャドゥ」は、山下達郎がカバーしたことで、非常に有名。
ちなみに、女性アイドルの三田寛子もカバーしている(なぜだ?)
1975年のシングル「ともしび」は、石立鉄男主演のテレビドラマ『おふくろさん』の主題歌。
ブレバタ史上で最高のセールスを記録するヒット曲となった。
このコロンビア期までが、初期のブレバタということになる。
この後、二人は音楽活動を休止して、湘南に<カフェ ブレッド&バター>をオープン。
次に、復活後のアルファレコード。
『Late Late Summer』(1979)、『MONDAY MORNING』(1980)、『Pacific』(1981)の、いわゆる<湘南三部作>と呼ばれるアルバムを出したのが、このアルファ期。
<イエロー・マジック・オーケストラ>(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)や<パラシュート>(松原正樹、井上鑑、林立夫など)のメンバーが、演奏に参加している。
シングルも「あの頃のまま」「ホテル・パシフィック」「トゥナイト愛して」「青い地平線 Blue Horizon」など代表曲が並ぶ。
「あの頃のまま」「ホテル・パシフィック」「タバコロード20」「ゆううつ」「SHONAN GIRL」など、ユーミン(呉田軽穂)からの楽曲提供も多かった。
「トゥナイト愛して」は、フュージョンバンドの<カシオペア>が参加。
ブレバタにはコラボ作品が多い。
いわゆる「ブレバタ」というと、この時期を思い浮かべる人も多いのでは?
次に、TDK RECORDS。
湘南三部作のようなガチガチのコンセプト・アルバムではなく、ある意味でブレバタらしい自由な雰囲気が感じられる。
アルバムは『Night Angel』(1982)と『FINE LINE』(1983)の2枚。
『Night Angel』は、移籍後、いきなりのハリウッド録音だった。
バックバンドも、外国人ミュージシャンが参加している。
垢抜けてオシャレなサウンド。
この時期の作品には、謎に隠れた名曲が多い。
次にFUN HOUSE(ファンハウス)。
1986年公開のアニメ映画『タッチ2 さよならの贈り物』の主題歌「さよならの贈り物」や、スティービー・ワンダー作曲「特別な気持ちで(I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU)」など、キャッチーな活動を見せたのは、この時期。
シングル12枚、アルバム4枚と充実の活躍期だ。
『タッチ2』でブレバタを聴いた人には懐かしい時代と言えるだろう。
後半の<ニューヨーク三部作>(「MISSING LINK」(1989)、「マリエ」(1989)、「水の記憶」(1991))は、かなり完成度が高い。
このあたりが、ブレッド&バターのキャリアの中で、ピークと言える時期だったのではないだろうか。
その後も、ブレバタは、ワーナーミュージック・ジャパン、ビクターエンタテイメント、Sony Music Direct/GT music、avex ioで、それぞれ1~2枚のアルバムを発表しているが、このあたりを後期と考えていいだろう。
ざっくり整理して、<コロムビア>までの初期、<アルファ・TDK・ファンハウス>の充実期、その後の後期と、大きく3つに分けると分かりやすいかもしれない。
以下、お勧めのベストアルバムを紹介していこう。
THE BEST OF BREAD & BUTTER
初期のブレバタに関しては、1994年発売の『THE BEST OF BREAD & BUTTER』が整っている。
「誰が好きなの」「マリエ」「傷だらけの軽井沢」「野生の馬」など、人気曲を収録。
フォークテイストのブレッド&バターを聴きたい人に。
BREAD & BUTTER PARTY
初期の名曲を集めた「BREAD & BUTTER PARTY」は、1981年発売のベスト盤。
「マリエ」「青い地平線ーブルー・ホライズン」などを収録。
「悲しみのソーニャ」「キープ・イット・アライヴ」は、このベストアルバムが初出。
現在も、このベストアルバムでしか聴くことができない。
「ピンク・シャドゥ」は、ベストアルバム用の新録音(原曲の権利は日本コロムビアが持っていたため)。
Sunday afternoon
アルファ期の湘南サウンドをしっかりと楽しむのにお勧めなのが、1984年発売の「Sunday afternoon」。
メンバー非公認のレコード会社企画盤だけど、名曲が揃っている。
「ともしび」「夕暮れ(つらい夜)」は未発表のリメイク版(編曲は松任谷正隆)。
「サ・ラスト・サマー」は、細野晴臣がコーラスに参加しているリミックス・バージョン。
湘南テイストのブレバタを聴きたい人におすすめ。
TWINS SUPER BEST OF BREAD & BUTTER
1997年にアルファミュージックからリリースされた2枚組ベスト盤『TWINS SUPER BEST OF BREAD & BUTTER』は、かなり充実している。
「あの頃のまま」「湘南ガール」「HOTEL PACIFIC」「タバコロード20」など、当時の人気曲をほぼ網羅。
シティポップの名曲「ピンク・シャドウ」や「JAPANESE WOMAN」など重要曲もフォロー。
ステーヴィー・ワンダー作曲の「特別な気持ちで(I JUST CALL TO SAY~)」「 リメンバーマイラブ」収録。
1982年のシングル「冬のハイビスカス」(ユーミン作曲)は、このベストアルバムでしか聴くことができない。
アルファ期までのブレバタを理解する上で、とてもおすすめ。
SURF CITY
TDK期のベストアルバムは、1984年の『SURF CITY』のみ。
都会的で洗練されたサウンドが心地良い。
「CITY SIDE」と「SURF SIDE」で構成されている。
ほぼ全曲、他のベスト盤と被らない(笑)
人気曲「FINE LINE」「YOU ARE MY ANGEL」収録。
隠れた名曲「やさしさの横顔」も。
マリエ ベスト・リメイク・アルバム
1989年の『マリエ』は、全曲が新録音のベストアルバム。
フィフス・アヴェニュー・バンドのピーター・ゴールウェイがプロデュースしており、演奏もフィフス・アヴェニュー・バンドのメンバーが参加しているニューヨーク録音。
いわゆる<ニューヨーク三部作>の二作目の作品だ。
ほとんど洋楽みたいなサウンドを楽しめる。
他のベストアルバムとは位置付けが異なるので、被る心配なし。
普通のブレバタに飽きたらこっちへ。
スーパーベスト2000
ファンハウスは、最もベストアルバムが多い。
それだけ活躍したということか。
どれも良いけれど、個人的には、1995年発売の『スーパーベスト2000』を推したい。
「マリエ」「ピンク・シャドゥ」は初期の名作。
「あの頃のまま」と「センチメンタル・フレンド」は<’92ベストアルバム・ヴァージョン>を収録。
サンスターのノベルティ盤「奇蹟のヴィーナス」のカップリング曲「ETERNAL FRIEND-その微笑みで-」や、1993年のシングル「僕の知らない夏」、1994年のシングル「London-Paris-New York-湘南」を収録しているのは、このベスト盤のみ。
マニアックな曲が多いところが好き。
ゴールデン☆ベスト ブレッド&バター
2005年に発売された『ゴールデン☆ベスト ブレッド&バター』は、「If」の日本語ヴァージョンを収録(このCDのみ)。
「ピンク・シャドウ」「あの頃のまま」「MONDAY MORNING」「Fine Line」「DANCING IN THE NIGHT」「マリエ」「BALLAD」は、1989年のニューヨーク録音バージョンを収録。
Silver Bread & Golden Butter ~ Early Best 1972-1981~
2008年に発売された2枚組ベスト『Silver Bread & Golden Butter ~ Early Best 1972-1981~』には、デビュー・アルバム『Moonlight』から『FINE LINE』までの音源からセレクトされた楽曲が収録されている。
「あの頃のまま」「ホテル・パシフィック」「ピンク・シャドゥ」など、代表曲をほぼ網羅。
ただし、アニメ映画『タッチ2 さよならの贈り物』で盛り上がっていたファンハウスの作品は入っていない。
そういう意味で「アーリー ブレッド&バター」を楽しむためのベスト盤と言えそうだ。
「バタフライ」は、1971年に<シローとブレッド&バター>名義で発表された、稀少なシングル曲。
1990年の西武百貨店キャンペーンソングで非売品だったクリスマスソング「SILENT SNOW」を聴けるのはここだけ。
幸矢と二弓 Essential B&B
2014年、ブレバタ45周年の節目に発売されたCD4枚組のオールタイム・ベスト盤が『幸矢と二弓 Essential B&B』。
岩沢幸矢・二弓の作詞作曲によるナンバーから、本人がセレクションした作品を収録。
なんといっても、充実のブックレットが必見。
メンバーへのインタビューのほか、全作品のディスコグラフィーが掲載されていて、これはまさに「カタログ」。
ブレバタの歴史を、しっかりと振り返ることができる。
収録曲の一曲一曲に参加ミュージシャンとエンジニアの名前が記されているのもすごい。
ヒット曲「さよならの贈り物」は、売野雅勇・芹澤廣明のチェッカーズコンビによる作詞作曲なので未収録。
ファンハウス期のヒット曲は、ほぼ入っていない。
一方、「夏の音符」は、2007年のオリジナル・アルバム『海岸へおいでよ』収録曲。
岩沢幸矢のソロアルバム『ベアフット』から「江ノ鎌」が入っているのもうれしい。
ブレバタ・マニアは必携の集大成盤。
まとめ
たくさんのベストアルバムが発売されている割には、そのアルバムだけでしか聴けない曲も多い。
聴きたい曲があるときは、その曲が収録されているか確認しよう。
そして、こんなにベストアルバムがあるのに、ベスト盤に収録されていない曲も、まだまだある。
ブレバタを極めるには、すべてのカタログを蒐集するしかないらしい。