『秀和レジデンス図鑑』なるマニア本が出版されるなど、最近とみに人気のビンテージマンション「秀和レジデンス」。
東京オリンピックの年(1964年)に発売された第1号「秀和青山レジデンス」から始まる秀和レジデンスは、札幌オリンピック直後の1974年(昭和49年)、初めての札幌進出を果たした(最初で最後)。
建築から50年目を迎えて、市電が走る電車通りに建つ「秀和レジデンス」は今も健在。
半世紀となる秀和レジデンスを目指して、久し振りに電車通りを歩いてみた。
電車通りの秀和レジデンス
秀和レジデンスは、高度経済成長期に誕生した、日本のマンション建築の先駆けで、設計は、駒沢オリンピック公園の体育館などで知られる建築家・芦原義信。
「青い屋根」と「白いうろこ壁」が特徴のビンテージマンションは、「一周まわってかわいい!」と、若い世代の注目を集めている。
2022年(令和4年)には、全国の秀和レジデンスの魅力を伝えるマニア本『秀和レジデンス図鑑』が出版されるなど、秀和は、とにかく今注目のビンテージマンションなのだ。
札幌に秀和レジデンスが誕生したのは、1972年(昭和47年)の札幌オリンピック直後の1974年(昭和49年)10月。
当時の札幌は、オリンピックを境に急激な成長を果たしており、南北線・東西線の市営地下鉄や、ポールタウン・オーロラタウンのさっぽろ地下街も、札幌オリンピックを契機に生まれたもの。
現在、建て替えが進んでいる市街地の商業ビルのほとんども、この時期に建築されたもので、そんな大規模な都市開発が進む時代に、札幌の秀和レジデンスも発売された。
札幌の秀和レジデンスは、札幌市電が走る電車通り(西線)に面して建築されていて、停留所では「西線6条」か「西線9条旭山公園通」が近い。
住所表示は、札幌市中央区南7条西15丁目または南8条西15丁目(市電西線は、西15丁目の通りのこと)。
ところで、札幌の秀和レジデンスは、「秀和南七条レジデンス」(RC11階建て)と「秀和南八条レジデンス」(RC10階建て)の2棟が、南北に並んで建っている。
似たようなうろこ壁のマンションだが、この2棟は意外と違う。
まず、どちらかというと目を引くのが、北側(中心部より・電停寄り)に建つ「秀和南七条レジデンス」。
1階にテナントが入る「秀和南七条レジデンス」は、1階部分に青い屋根が水平線を構築しているので、いやでも目に入ってしまうのだ。
現在、テナントは、パン屋(「ル・ランジュリーアンジュール」)と美容室(「スイング美容室2」)の2店舗で、秀和レジデンス内部に足を踏み入れてみたいという人は、テナントを利用すればいい。
特に、パン屋の「ル・ランジュリーアンジュール」は、かなりの人気店で、営業開始の午前9時から客が行列を作っている(日曜日は定休日)。
ビンテージマンション鑑賞しながら、美味しいパンを買うことができるので、一粒で二度おいしい。
テナントから南側の路地へ入ると、白いうろこ壁と、青い屋根を間近で鑑賞することができて、テンションが爆上がりすること間違いなし。
さらに、路地を進むと、東側に低層階マンションがある(3階建て)。
電車通りの裏側に、こんなオシャレな低層階マンションがあるなんて、意外と知られていないのではないだろうか。
ただし、雪の多い札幌では、積雪期に路地へ入るのは、かなりリスクが高いので、購入や賃貸を考えている人は、冬の除雪状況をしっかりと確認した方がいい。
大雪が降った日に見学するのが、一番おすすめ。
除雪体制が整っている電車通りに対し、路地は、自動車の乗り入れが大変な場合も少なくないので。
札幌の秀和レジデンスの物件情報
路地を挟んで南側に建つのが「秀和南八条レジデンス」。
こちらは、テナントがない分、外観はかなりシンプルで、離れないと「青い屋根」も見ることができない。
1階住居に面して、ブロックガラスの目隠しや防犯用の柵が設置されている。
不動産情報を確認してみると、中古マンションの販売価格は、950万円から1,180万円と、1,000万円前後が相場みたいだ。
建築から50年が経つとは言え、電停まで徒歩2分と利便性が高く、その気になれば散歩しながら大通公園まで移動することも可能(地下鉄駅なら「西18丁目」まで徒歩圏内)。
手入れされたビンテージマンションということで、きっと人気も高いのだろう。
気になる「秀和南七条レジデンス」の低層階部分でも販売物件があり、3階建ての3階部分が1,180万円。
68.04平米の2LDKだが、停年退職後の隠居夫婦が二人で住むには、ちょうど良さそう。
ポイントは、占有スペースとなるルーフバルコニーで、バルコニー面積が66.45平米と、居住空間とほぼ同じというのもすごい。
ちなみに、高層階が好きな人には、「秀和南七条レジデンス」の8階が950万円で売りに出ている(11階建て)。
「秀和南八条レジデンス」では、10階建て5階部分で680万円という販売物件あり。
リフォーム歴がないため、この金額らしいが、自分好みに手を入れたい人には、むしろ狙い目かもしれない。
秀和レジデンスが並ぶ電車通り(西線)は、治安も落ち着いていて、中心部までの利便性も高いので、子育て世代や高齢者にもおすすめできる地域だ(札幌医大が近いので病院も多い)。
新築マンションの高騰化で、中古マンションに注目が集まる今、信頼できるビンテージマンションも、選択肢のひとつに入ってくるのではないだろうか。