今回は、オシャレで懐かしい和製AORの名曲をご紹介します。
1980年前後に作られたJ.POPには、洋楽の影響を感じさせる楽曲がたくさんあるんですよ。
大人の余裕を感じさせる音楽「AOR」
1980年頃、毒にも薬にもならないような、妙にかったるくて、ちょっとオシャレな雰囲気の音楽が流行っていました。
それが「AOR」というジャンルの音楽だということを知ったのは、ずっと後のことです。
なにしろ、1980年、僕はまだ中学1年生で、音楽的な知識もほとんどなかったから。
その後、中学・高校・大学と80年代を過ごす中で、AOR(あるいはAORに影響を受けた音楽)は、常に僕の周りにありましたが、あの妙にかったるくて、シャキッとしない音楽を、僕はなかなか好きになることができませんでした。
硬派のロックファンや硬派のフォークファンとは相容れない音楽。
それが「AOR」という音楽だったのだと思います。
あれから長い時間が経過して、僕も大人になった頃、なぜか、あの頃のAORが好きだと思うようになりました。
かったるいと思えた音楽が「大人の余裕」を感じさせる音楽へと変化したのは、僕自身の成長によるものだったのかもしれません。
今、僕は、1980年前後の日本のポップ・ミュージックを聴きながら、改めて、AORという音楽と向き合っています。
AORとは音楽のジャンルではなく傾向のこと
AORというジャンルの音楽は存在しません。
AORは音楽のスタイルであり、雰囲気であり、ひとつの傾向を表す言葉に過ぎないからです。
言葉の意味として、AORは「アダルト・オリエンテッド・ロック(Adult-Oriented Rock)」の略称だと言われています。
日本語に訳すと「アダルト志向のロック」で、一般的には「大人向きのロック」を全般にAORと呼ぶことが多いようです。
なんだかよくわかりませんが、AORと呼ばれる音楽の持つ傾向を知ることはできます。
リズム的には、速すぎないこと。
いわゆる「横ノリ」の音楽ではなく、横に揺れるような音楽が、AORには多いです。
それも、規則的に揺れるのではなく、まるで波に揺られているような心地良い揺れです。
つまり、グルーヴのある音楽ということですね。
AORでは、このグルーヴ感が、大切な要素のひとつとなります。
ロックをベースとしながら、ソウルやジャズの要素を採り入れることで、グルーブ感を醸し出す手法は、AORでは普通に見られるようです。
メロディ的には、ウェットになりすぎないこと。
フォークやニューミュージックで重視されるウェット感は、AORでは不要で、むしろ、ドライな感覚が、AORでは重視されます。
熱すぎるのもNGで、AORではクールなスタンスが求められます。
これが「大人の余裕」です。
歌のテーマとしては、変にメッセージ性が強くないこと。
AORではサウンドが大切なので、「♪人間なんてラララ~」とか「♪悩み多き者よ~」なんて難しいことには触れず、「♪君が好きだよ、アイ・ラブ・ユー~」なんてラブソングを歌っておけば十分です。
さらに、モチーフとして「都会」や「リゾート」が大切です。
お墓参りに行って、婚約者の死んだお母さんに「僕にまかせてください」とか報告するようなものは、AOR向きではありません(お墓参りもエモいけど)。
全体の雰囲気として絶対に必要なものはオシャレであることという雰囲気です。
歌詞とメロディとアレンジの融合によって、オシャレな音楽を作り上げる。
そこれこそが「AOR」という音楽なのです。
AORをキーワードで探る
おしゃれ、かっこいい。
クール、ドライ。
洗練されている、都会的、大人っぽい。
アーバン、アーベイン、ソフィストケイトされている。
ソフト&メロウ、甘ったるい、優しい、ライト感覚。
そんな感じのする音楽が、つまり「AOR」という音楽です。
AORとシティ・ポップとの違い
AORはシティ・ポップですが、すべてのシティポップがAORだというわけではありません。
なぜなら、AORには「大人のゆとり」というものが求められるからです。
チャカチャカとしたノリだけのシティポップは、AORとは呼べません。
30歳になってようやく分かる音楽、それがAORです。
アイドル・ソングにAORが少ないのは、大人の余裕を表現するだけの力量を身に着けていないからです。
もちろん、ただオジサンくさいだけの音楽は、シティポップでさえありません。
大人の色気を感じることができたら、それは立派なAORと呼ぶことができるでしょう。
和製AOR 100選
最近、僕は、日本のAORを一生懸命に聴いています。
これまで、別ジャンルのものだと考えていたミュージシャンも、AORという基準でひとつのプレイリストにまとめると、これが意外とつながったりしてびっくりします。
今回は、僕が個人的に楽しんでいる日本のAORを一挙公開。
シングル・アルバム取り交ぜて、年代順に並べてみました。
きっと新しい発見があると思いますよ。
中央フリーウェイ / 荒井由実
1976年発売のアルバム『14番目の月』収録曲。
日本のAOR黎明期を彩るのは、ユーミンの歴史的名曲「中央フリーウェイ」でしょう。
アルバム『14番目の月』は、オリコンチャート1位を獲得している名盤です。
松任谷正隆がユーミンを初めてプロデュースした作品としても有名(二人はこの後、結婚します)。
ジェームス・テイラーのバックでベースを弾いていたリーランド・スカラーのほか、ドラムにはマイク・ベアードを起用。
日本のAORは、ここから始まった!
天気雨 / 荒井由実
1976年のアルバム『14番目の月』収録曲からもう一曲。
ユーミン初期のサーフソングで、グルーブ感のある松任谷正隆のピアノが、めちゃくちゃカッコいいです。
ラテン・ナンバー「避暑地の出来事」も素晴らしい!
風の街 / ハイ・ファイ・セット
1977年発売のシングル曲。
ロサンゼルス録音で、演奏には現地のフュージョン系ミュージシャンが参加しました。
作詞に松本隆を起用、和製フリー・ソウルの名曲としても人気があります。
オン・エニイ・サンデイ / ハイ・ファイ・セット
1977年発売のサード・アルバム『ラブ・コレクション』収録曲。
この曲「オン・エニイ・サンディ」は、オリコンチャート1位を獲得した大ヒットアルバムのオープニングを飾っています。
原曲は、映画『栄光のライダー』の主題歌でした。
雨のステイション / ハイ・ファイ・セット
1977年発売の『ラブ・コレクション』からもう一曲。
ユーミン作詞作曲の「雨のステイション」は、雨の日のレイジーな雰囲気が秀逸なシティ・ポップでした。
『ラブ・コレクション』には、同じくユーミンの「中央フリーウェイ」も収録されています。
サンシャイン・スーパーマン / 岸田智史
1977年発売のセカンド・アルバム『シ・ト・ロ・ン』収録のソフト&メロウなナンバーです。
とにかく甘いボーカルが魅力だった岸田智史。
都会的なカッティング・ギターとマッチしています。
紅雀 / 松任谷由実
1978年発売のアルバム『紅雀』タイトル曲。
『紅雀』は、ユーミン結婚後、初めてリリースされたアルバムです。
和製サンバの名曲「私なしでも」「罪と罰」も収録されています。
埠頭を渡る風 / 松任谷由実
1978年発売のシングル曲。
オリコンチャートでは71位に入っています。
当時の国産AORを代表するアーバン・グルーヴなディスコ・チューン。
美しいメロディラインと松任谷正隆のアレンジ、都会的な歌詞の世界、どれを取ってもオシャレで大人向きの音楽に仕上がっています。
アルバムでは、1978年発売の名盤『流線形’80』に収録。
別れ話は最後に / サザンオールスターズ
1978年発売のアルバム『熱い胸さわぎ』収録のボサノヴァ・テイストのポップ・チューン。
AOR全盛期、一時はデビューシングル候補にもなったと言われるほどの名曲です。
派手なラテン・ロックで注目を集めがちなサザンですが、大人向けのAORにも良い曲がたくさんありますね。
ライフ・パートナー / ばんばひろふみ&ホットスタッフ
1978年発売のアルバム『Starshi Radio Station』収録曲。
当時、アメリカの最前線を走っていたAOR路線を強く意識した、アダルト・チューンです。
フォークからロックへの転向を試みた<ばんばひろふみ&ホットスタッフ>名義のファースト・アルバムでした。
最終フライト05便 / ばんばひろふみ&ホットスタッフ
1978年発売のアルバム『Starship Radio Station』からもう一曲。
筒美京平作曲、<バンバン>からソロ活動を始めた際のファースト・シングルでした。
日本の歌謡AORの原点です。
ピッツア・ハウス22時 / 太田裕美
1978年発売のアルバム『ELEGANCE』収録。
ニューミュージック歌謡から語られることの多い太田裕美ですが、国産AORとしても良い作品があります。
君のひとみは10000ボルト / 堀内孝雄
1978年発売のシングルヒットで、オリコンチャート週間で1位を獲得しています(年間4位)。
資生堂CMソング。
アリスの重たさが感じられない、爽やかなAOR路線が、ヒットの秘密だったのでしょうか。
PAPER DOLL / 山下達郎
1978年発売のアルバム『GO AHEAD!』収録曲。
2022年6月25日放送のNHK-FM『今日は一日 ”山下達郎” 三昧 2022』の中で、星野源さんが「好きな曲のひとつ」として挙げていました。
グルーブ感たっぷり、ライブの定番曲です。
ツバメのように / 松任谷由実
1979年発売のアルバム『OLIVE』収録。
歌詞の重たさを考えると、爽やかさが売りのAORに含めてしまうのは、極めて不謹慎だと承知した上でのチョイスです。
「若い女性の自殺」という深刻なテーマなのに、どうして、こんなに聴きこんでしまうのだろう?
名曲の詰まったアルバム『OLIVE』は、70年代ユーミンの中で一番好きな作品です。
ミス・ロンリー・ハート / 浜田省吾
1979年発売のアルバム『君が人生の時…』収録。
当時の浜田省吾にはAORの影響が色濃くて、このアルバムでは、AOR的な浜田省吾をたっぷりと味わうことができます。
アコースティック・タッチで、女の子に翻弄される情けないバンドマンを歌った名曲です。
ロックスターになる前の浜田省吾は良かった!
渚に行こう / ブレッド&バター
1979年発売のシングル「あの頃のまま」のカップリング曲。
ユーミン作詞作曲の「あの頃のまま」に比べるとウェット感が少ない分だけ、AOR的な雰囲気があります。
歌詞もシンプルな方が、AORとしてはいいようです。
ちなみに、歌詞は伊達歩(作家の伊集院静)で、編曲は細野晴臣と鈴木茂。
アルバムでは、アルファレコード移籍第一弾、<湘南三部作>の一作目となる「レイト・レイト・サマー」(1978年)に入っています。
演奏には、小原礼(ギター)、林立夫(ドラム)、佐藤博(キーボード)のほか、イエロー・マジック・オーケストラのメンバー(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)などが参加していました。
LOVIN’ / 堀内孝雄
1979年発売のアルバム『Song Forever』収録のミディアム・ナンバー。
アメリカ・ナッシュビル録音作品。
演奏も現地のミュージシャンが参加しています。
L・A・NITE / 堀内孝雄
1979年発売のアルバム『Song Forever』からもう一曲。
「エル・エー・ナイト」と歌っています(笑)
虹とスニーカーの頃 / チューリップ
1979年発売のシングル曲。
オリコンチャート6位まで上昇するビッグヒットとなったサマー・チューンです。
チューリップの代表曲ですが、当時のオリジナル・アルバムでは未収録でした。
思い出のフリスビー / チューリップ
1979年発売のアルバム『Someday Somewhere』収録曲。
初代ドラマーの上田雅利がリード・ボーカルを取っています。
チューリップらしい、爽やかなソフト・ロック・ナンバーです。
入江にて / 郷ひろみ
1979年発売のアルバム『SUPER DRIVE』収録曲。
ニューヨーク録音のこのアルバムは、郷ひろみ初の海外レコーディング作品でした。
演奏には<The 24th Street Band(24丁目バンド)>のメンバーが参加。
非常にレベルの高いAORに仕上がっています。
Tokyo City Girl / ばんばひろふみ
1979年発売のアルバム『ひとり海へ還る』収録曲。
大ヒットシングル「SASHIKO」が収録されたこのアルバム、実はかなりのオシャレ和製AORでした。
キャリア・ウーマンを撃て / ばんばひろふみ
1979年発売のアルバム『ひとり海へ還る』からもう一曲。
「Tokyo City Girl」にしても「キャリア・ウーマンを撃て」にしても、タイトルが分かってますね。
影になって / 松任谷由実
1979年発売のアルバム『悲しいほどお天気』収録。
松原正樹のギターが光るグルーヴィーなアーバン・メロウで、地味な作品ながら、ユーミンの楽曲のレベルの高さを感じさせられます。
改めて、松任谷正隆のアレンジの凄さにもびっくり。
SUMMER BLUE / ブレッド&バター
1980年発売のシングル「青い地平線 Blue Horizon」のカップリング曲。
筒美京平作曲のキャッチーで印象的な「青い地平線 Blue Horizon」に比べるて、フラットなメロディラインがAORっぽい。
流行とは言え、AORをシングル曲のA面として売り出すのは、アイドル歌謡が主流の日本音楽界では、なかなかハードルが高かったようです。
涙のアベニュー / サザンオールスターズ
1980年発売のシングル曲。
オリコンチャートでは16位まで上昇しました。
ムーディーな横浜チューンですが、歌詞は「♪ちょいと程よくな、漂うだけの街~」のようにサザン・テイストたっぷり。
真正AORの世界に入るよりも、AORをサザンの世界に引き入れてしまうあたり、さすが。
Japanese Woman / ブレッド&バター
1980年発売のシングル曲。
日本を代表するAORデュオによるアーバン・ディスコ・チューンで、当時の邦楽のレベルの高さを感じさせてくれます。
作曲した岩沢幸矢(兄)によると、ドラマー・林立夫のアルバム『スパー・パーカッション Vol.1』を聴きながら、コードとメロディを付けた作品だそうです。
日本女性の名前を連呼するダンサブルなコーラスにも注目。
アルバムでは、<湘南三部作>の二作目となる「マンデイ・モーニング」(1980年)に収録されています。
YMOが自分たちの活動で忙しくなったため、このアルバムから松原正樹がアレンジャーとして参加するようになります。
また、バッキングも、林立夫の<パラシュート>が中心となりました。
Yes-No / オフコース
1980年発売のシングル曲。
オリコンチャートで8位を記録するなど、当時のオフコース人気を物語るヒット曲です。
この曲が収録されているアルバム『We are』は、日本のAORの名盤としてあまりにも有名な一枚。
時に愛は / オフコース
1980年発売のアルバム『We are』からのシングルカット曲。
オリコンチャートで35位まで上昇したヒット曲です。
アルバム『We are』のミックス・ダウンはアメリカで行われました。
ミキサーのビル・シュネーは、<TOTO><ボズ・スキャッグス><スティーリー・ダン>など、多くのAOR関連ミュージシャンのプロデュースやミキシングを手掛けたエンジニアです。
車を止めて / 松山千春
1980年発売のアルバム『浪漫』収録曲。
フォークからニューミュージックの文脈で語られることの多い松山千春ですが、AOR色の強いこのアルバムは、かなりおすすめです。
あくまでニューミュージックの側に立ちながら、トレンドのAORを上手に採り入れているといった感じ。
ミルク・レディ / 五十嵐浩晃
1980年発売のセカンド・シングル。
デビュー曲「愛は風まかせ」に比べて、よりポップな部分を全面に出して、新しい時代の日本のAORを感じさせました。
ペガサスの朝 / 五十嵐浩晃
1980年発売のサード・シングルで、オリコンチャート3位を獲得する、大ヒット曲となりました。
アレンジは鈴木茂。
明るくて健康的なポップ・ミュージックは、70年代から続くニューミュージックとは明らかに異なる、新しい流れの登場を感じさせました。
日本のAORを代表する名曲です。
こんな曲を書き続けてほしかった、、、
ブリージー・ナイト / 五十嵐浩晃
1980年発売のセカンド・アルバム『ナチュラル・ロード』収録曲。
爽やかなリゾート・ナンバーで、アルバム全体の編曲を担当した鈴木茂の力が、いかんなく発揮されています。
ドラムス・林立夫、ベース・後藤次利、ギター・鈴木茂。
コーラスとしてラジも参加しています。
さりげなく「ムーンライト・セレナーデ」(グレン・ミラー)のサンプリングが挿入されていたりと、アレンジへのこだわりが感じられます。
流星群 / 五十嵐浩晃
1980年発売のアルバム『ナチュラル・ロード』からもう一曲。
名曲「ペガサスの朝」を含む、このアルバムは、日本のAORの絶対的名盤としてお勧めです。
Morning Glory / 竹内まりや
1980年発売のアルバム『Miss M』収録曲。
シングル「Sweetest Music」のカップリング曲でもありました。
アルバム『Miss M』のA面はロサンゼルス録音で、デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが全面参加しています(AORユニット<エアプレイ>のメンバー)。
演奏には、ジェフ・ポーカロ、スティーブ・ルカサー、デヴィッド・ハンゲイトら <TOTO>のメンバーが参加。
ほとんど<エアプレイ>のアルバムみたいな仕上がりになっています。
アルバム『Miss M』は、
<エアプレイ>好きな人は必聴のアルバムです。
ビューティフル・エネルギー / 甲斐バンド
1980年発売のCMヒット曲で、オリコンチャートでは最高9位にランクインしました。
ボーカル&作曲はドラムスの松藤英男で、オリジナル・アルバムでは未収録となっています。
ブルース色の強い甲斐バンドとしては、爽やかすぎるAORが特徴。
夕凪海岸 / 岩崎宏美
1980年発売のアルバム『Wish』収録曲。
このアルバムは、岩崎宏美にとって、初めてとなるロサンゼルス録音の作品です。
作曲は筒美京平。
間奏のテナーサックスがオシャレすぎです。
ロス録音の『Wish』には、「STREET DANCER」「ROSE」など、AORの名曲がたくさん収録されていますよ。
RIDE ON TIME / 山下達郎
1980年発売のシングルで、オリコンチャートで3位を獲得したという大ヒット曲です。
80年代タツローを代表する、大人のサマー・チューン。
アルバムでは、1980年発売の『RIDE ON TIME』に収録されています。
ちなみに、アルバム『RIDE ON TIME』は、オリコンでナンバーワン・ヒットとなりました。
Welcome To My Love / ばんばひろふみ
1980年発売のアルバム『COAST』収録曲。
70年代後半から、ひたすらにAOR路線を走り続けてきたばんばひろふみの、ひとつの集大成となったアルバムが『COAST』でした。
ロサンゼルス録音作品。
アメリカ西海岸の青い空のように爽やかなポップ・ナンバーです。
COAST / ばんばひろふみ
1980年発売のアルバム『COAST』タイトル曲。
今にして考えてみると、1980年というのは、和製AORがブレイクした年だったのかもしれませんね。
名曲が多すぎます!
蜃気楼 / クリスタルキング
1980年発売のセカンド・シングル。
「大都会」で衝撃のデビューを飾ったクリキンですが、実はアーバン・ポップな作品を得意としていました。
オリコンチャートで2位まで上昇した、大ヒット曲です。
サード・シングル「処女航海」もおすすめ。
恋人はサンタクロース / 松任谷由実
1980年発売のアルバム『SURF&SNOW』収録のクリスマス・チューン。
山下達郎「クリスマス・イブ」と並んで、日本のクリスマス・ソングのスタンダード・ナンバーになりました。
40年以上昔の曲なのに全然古くないって、すごくないですか?
いまのキミはピカピカに光って / 斉藤哲夫
1980年の大ヒットシングルで、オリコンチャートでは最高9位まで上昇しました。
アルバムでは『PIKA PIKA』(1980年発売のミニアルバム)に収録されています。
作曲編曲は鈴木慶一(ムーンライダーズ)。
南回帰線 / 滝ともはる&堀内孝雄
1980年発売のシングルヒット曲で、オリコンチャートで最高4位まで上がりました。
サントリービールのCMソングとして知られています。
グッドタイムズ&バッドタイムズ / 佐野元春
1980年発売のデビュー・アルバム『BACK TO THE STREET』収録曲。
ギルバート・オサリバン「アローン・アゲイン」へのオマージュが感じられる、ミディアム・ポップです。
佐野元春は、洋楽を吸収するのが本当に上手なミュージシャンでした。
ステレオ太陽族 / サザンオールスターズ
1981年発売のアルバム『ステレオ太陽族』収録のタイトル曲。
ショートナンバーの中に、AORに対する桑田佳祐の思いが詰まった名曲です。
ちょっと、ジェイムス・テイラーの「Her Town Too」を感じさせます。
国産AORを代表する一曲として、決して忘れることはできない一曲ですね。
このアルバム以降、サザンオールスターズは急速にAOR色を強めていきました。
Hello My Love / サザンオールスターズ
1981年発売のアルバム『ステレオ太陽族』収録のディスコ・チューン。
「勝手にシンドバッド」のように全身で弾ける曲と違って、ノリを加減したドライ・タッチなグルーヴ感が大人向きでした。
素顔で踊らせて / サザンオールスターズ
1981年発売のアルバム『ステレオ太陽族』収録のミディアム・バラード。
「いとしのエリー」のような派手さがない分、しっとりクールにAORしている感があります。
「♪Lady oh ! Let’s talk about 胸元には そっと指先で~」のように、英語と日本語の絶妙な組み合わせが、サザンの魅力でしたね。
とにかく、大人の恋愛を歌ったら無敵のサザンでした。
モダンガール / 浜田省吾
1981年のアルバム『愛の世代の前に』収録の和製ファンク。
都会の女性に翻弄される情けない男性像が、とんでもなくAORです。
彼女を寝盗られているのに悲壮感なんか全然なくて、ビッチな恋人を明るく歌えるところがすごい。
寝盗られソングの代表曲「あいつの部屋には男がいる」(吉田拓郎)のベタベタした感じとは全然違いますね。
裏切り小僧 / 野口五郎
1981年発表のシングル曲。
作曲は宇崎竜童で、洋楽の影響をたっぷりと受けた歌謡曲という「歌謡AOR」の名曲に仕上がっています。
AOR全盛期とはいえ、アイドル全盛の日本の歌謡界で、ここまでAORをやるのはさすが。野口五郎の作品の中でも、特に好きな曲です。
街角のペシミスト / 松任谷由実
1981年発売のアルバム『昨晩お会いしましょう』収録。
ソフト&メロウなアーバン・ポップで、オシャレな女子はユーミンが大好きだったという理由が理解できるような気がします。
グルーブ感が最高のディスコ・チューンです。
和製AORを聴きたかったら、1980年前後の松任谷由実から探す、というのが鉄則です。
俺をよろしく / 沖田浩之
1981年発売のシングル曲。
オリコンチャートでは32位まで上昇しています。
筒美京平作曲のアーバン・ファンクで、洋楽志向の強いヒロ君らしい作品です。
アイドル歌謡全盛期とあって、デビュー曲「E気持ち」ほどには浸透しませんでしたが、現代でも通用するのは、こちらではないでしょうか。
風のシーズン / 吉田拓郎
1981年発売のアルバム『無人島で…。』収録曲。
真青な波の写真をジャケットに起用した『無人島で…。』は、1981年の「夏のサウンドトラック」でした。
爽やかな吉田拓郎も悪くないと思います。
アルバムのラストを締めくくる「白い部屋」もおすすめ。
Easy Drive / 来生たかお
1981年発売のアルバム『Sparkle』収録のドライブ・チューン。
1981年は、とにかく誰もが爽やかで都会的な時代でした。
アルバム『Sparkle』では「窓辺の女(ひと)」もおすすめ。
愛の中へ / オフコース
1981年発売のシングル曲。
アルバム『over』と同時発売で、シングル「愛の中へ」はオリコンチャートで23位を記録しました(アルバム『over』はオリコン1位を獲得)。
『We are』に続いて、ビル・シュネーがミックス・ダウンを行っています。
シャッポ / サザンオールスターズ
1982年発売のシングル「Ya Ya(あの時代を忘れない)」のカップリング曲。
意外と知られていませんが、ブラック・コンテンポラリー感覚たっぷりな、和製ディスコの名曲です。
この頃のサザンオールスターズのシングルは、B面に注目したい。
Dancing In The Night / ブレッド&バター
1982年発売のシングル曲で、ブレバタらしい爽快感のあるダンス・ナンバー。
TDKレコード移籍後、最初のアルバム『Night Angel』(1982)に収録されました。
ハリウッドのチェロキー・スタジオで録音された、このアルバムの編曲はジェイ・ウィンディング、弦編曲はジミー・ハスケル(サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」で有名)。
ジェイ・ウィンディング(キーボード)のほか、ポール・ジャクソン・Jr(ギター)、スチュワート・グラハム(ギター)、デニス・ペルフィールド(ベース)、カルロル・ヴェガ(ドラム)などが、演奏に参加しています。
ちなみに、アルバムのシャケット写真はモッシャ・ブラッカ(ボズ・スキャッグスのシャケットを担当していた)。
ブレバタ充実のAOR期のアルバムです。
■YOU ARE MY ANGEL / ブレッド&バター
1982年のアルバム『Night Angel』からもう一曲。
リード・トラックで、アルバムのオープニングを飾る「YOU ARE MY ANGEL」は、オシャレなライトなディスコ・チューンです。
長崎小夜曲(NAGASAKI-CITY SERENADE) / さだまさし
1982年発売のシングル曲。
さだまさしの作品としては、貴重なAORナンバーですね。
明るく、爽やか、健康的で、疾走感さえ感じさせる長崎チューンは最高。
LOVELAND, ISLAND / 山下達郎
1982年発売のアルバム『FOR YOU』収録のリゾート・チューン。
当時の「夏だ、海だ、タツローだ!」というキャッチコピーを体現するような、南国のリズムが心地良い。
アルバム『FOR YOU』のジャケット・デザインは鈴木英人。
あまく危険な香り/ 山下達郎
1982年発売のシングル曲。
間奏に入る低音なピアノ演奏がかっこいい。
ジャケットに鈴木英人の作品を起用するなど、AORっぽさが際立つ作品です。
おまえにチェックイン / 沢田研二
1982年発売のシングル曲。
作曲・大沢誉志幸、編曲・伊藤銀二で、2人と一緒にコーラスには佐野元春も参加しています。
WHY OH WHY / 沢田研二
1982年発売のアルバム『A WONDERFUL TIME』収録曲。
作詞作曲が佐野元春、編曲が伊藤銀二という作品です。
アルバム全体にAOR色が強い中、この「WHY OH WHY」は、最もバランスの良いシテ・ロックとしておすすめ。
midnight cruisin’ / 濱田金吾
1982年発売のアルバム『midnight cruisin’』タイトル曲。
ジャパニーズAORを代表する濱田金吾でしたが、スプリングスティーン路線の浜田省吾には勝てませんでした。
今、聴いてもやっぱりオシャレなアーバン・メロウ。
「都会の夜のサウンド・トラック」と言われた理由も分かります。
横顔のタクシードライバー / 濱田金吾
1982年発売のアルバム『midnight cruisin’』オープニング曲。
ソフィストケイトされた都会の生活を、グルーヴ感漂わせて歌い上げたミッドナイト・チューンです。
このアルバムでは「街のドルフィン」もおすすめ。
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素敵な気持ち / 岩崎宏美
1983年発売のシングル曲。
作曲は筒美京平で、岩崎宏美らしい歌謡AORとして完成度の高い作品に仕上がっています。
アルバムでは、1983年のアルバム『私・的・空・間』に収録されました。
二人の午後に / 岩崎宏美
1983年のアルバム『私・的・空・間』からもう一曲。
「素敵な気持ち」と同じく筒美京平作曲のメロディが美しい、シティ・バラードです。
夏は知っている / 南こうせつ
1983年発売のアルバム『SEASIDE STORY』オープニング曲。
四畳半フォークの神様さえも、この時期は、AOR寄りのアプローチを見せていたんですね。
爽やかなライト・メロウのサマー・チューンです。
アルバム全体に夏が溢れていますが、ジャパニーズ・レゲエ「Love You Forever」もおすすめ。
恋はFeeling / 南こうせつ
1983年発売のアルバム『SEASIDE STORY』からもう一曲。
疾走感さえ感じる軽快なソフト・ロック・チューンです。
おいちゃん、逆切れしちゃったのかと思えるくらい、乗りまくっています。
内気なジュリエット / 杉真理
1983年発売のシングル曲。
ソフト&メロウなポップン・ロールは、杉真理の得意とするところでした。
ビートルズをAOR寄りに解釈している感じ。
OH CANDY / 杉真理
1983年発売のアルバム『STARGAZER』収録曲。
古き良き時代のアメリカン・ポップスを感じさせてくれる甘いメロディは、さすがに杉真理という感じでした。
海風通信 / 杉山清貴&オメガトライブ
1983年発売のデビュー・アルバム『AQUA CITY』収録曲。
オメガトライブは、シティポップかAORかといったあたりで、分類の難しいグループなのですが、シングルのヒット曲よりもアルバムの中の曲に、よりAORっぽいものがあります。
なにより、都会的で洗練された大人のサマー・チューンといった雰囲気が、オメガトライブの魅力でしたね。
この曲は、幻のデビュー曲と言われる名曲です。
アルバムの中では「LIGHT MORNING」もおすすめ。
雨の舗道 / 松山千春
1983年発売のアルバム『今、失われたものを求めて』収録曲。
森進一に「待たせたね」を提供していた頃の、松山千春らしいAOR路線がオシャレでした。
大人のラブソング「この世の果てまで」もおすすめ。
夏のクラクション / 稲垣潤一
1983年発売のシングル曲。
作曲は筒美京平、編曲は井上鑑、オリコンチャートで25位に入るヒット曲となりました。
当時の稲垣潤一といえば、夏のイメージの濃いAOR男の一人でしたね。
高気圧ガール / 山下達郎
1983年発売のシングル曲で、オリコンチャート17位まで上昇しました。
80年代のヤマタツを代表するリゾート・チューンとして、現在も高い人気を誇ります。
サビに入るところで入る気怠い女性のため息は竹内まりや。
アルバムでは『MELODIES』(1983年)に収録されています。
オープニングを飾る「悲しみのJODY (She Was Crying)」も名曲。
夕方 Hold On Me / サザンオールスターズ
1984年発売のアルバム『人気者で行こう』収録のディスコ・ナンバー。
「夕方」は「You’ve gotta」という意味を持っていて、後のNHKの名番組「夕方クインテット」へと繋がっていきます。
ラテン・ナンバーのイメ-ジが強いサザンですが、AORという視点では、70年代ファンクへのオマージュたっぷりなファンキー・サザンもおすすめ。
女のカッパ / サザンオールスターズ
1984年発売のアルバム『人気者で行こう』収録。
ジャズ・ミュージックの要素をうまく採り入れて、都会的なナンバーに仕上げています。
海 / サザンオールスターズ
1984年発売のアルバム『人気者で行こう』収録曲。
サザンを代表するサマー・チューンです。
夏で、海で、恋愛でと、AORの鏡のようなリゾート・ポップは、やっぱり、サザンの得意とするところだったんでしょうね。
夏の午後、海辺のドライブには欠かせません。
旧友再会フォーエバーヤング / 吉田拓郎
1984年発売のシングル曲。
「過ぎ去りし想い」(シンディ・ローパー)を思い出させるイントロにやられました。
歌詞がフォークで、AORとしては微妙ですが、好きな曲であることに間違いありません。
スイート・リップス / 山本達彦
1984年発売のアルバム『Music』収録曲。
「80年代AORの旗手」と呼ばれた山本達彦は、女子大生に大人気のアーチストでした。
女子大生からの支持率では、もう一人の<ヤマタツ>山下達郎を、確実に上回っていたはずです。
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Come Softly / 岩崎宏美
1984年発売のアルバム『I WON’T BREAK YOUR HEART』収録曲。
『Wish』以来、二度目となるロサンゼルス録音のアルバムで、ミュージシャンとして、デビッド・フォスターやスティーブ・ルカサーなどが参加しています。
これ、洋楽じゃないんですか?と思われる完成度の高さ。
Secret Eyes / 岩崎宏美
1984年のアルバム『I WON’T BREAK YOUR HEART』からもう一曲。
『I WON’T BREAK YOUR HEART』は名曲揃いなので、アルバム全体がお勧めです。
爽やかで都会的なサウンドに、岩崎宏美の透明感あるボーカルが溶け込んでいくかのよう。
「Could You Be The One」も素晴らしい。
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SECOND NATURE —もうひとりの私に― / 河合奈保子
1984年発売のアルバム『DAYDREAM COAST』収録曲。
アルバム『デイドリーム・コースト』は、河合奈保子初のロサンゼルス録音で、ジェフリー・トーマス・ポーカロやマイク・ポーカロ、スティーブ・ルカサーなどが演奏に参加しています(いずれもTOTOのメンバーだった)。
プロデューサーはデイヴィッド・フォスター。
デイヴィッド・フォスターは3曲目の「LIVE INSIDE YOUR LOVE ―あの夏をもう一度―」で、河合奈保子とデュエットもしています。
アルバムは、オリコンチャートで3位を獲得するヒット・アルバムとなりました。
最後のナイト・フライト / 杉山清貴&オメガトライブ
1984年発売のアルバム『RIVER’S ISLAND』収録曲。
明るいだけのシングル・ヒット曲と違って、大人の翳りを感じさせるブラック・コンテンポラリーなサウンドがカッコイイです。
アルバム全体にフュージョンへのオマージュが感じられます。
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眠れない / 松山千春
1985年発売のアルバム『風の歌がきこえる』収録曲。
イントロから、まるで杉山清貴&オメガトライブのようにAOR感が漂っています。
ALFAレコード移籍第2弾となったこのアルバムは、全体にソフト&メロウな路線を走っていました。
逢いたいすぐに / 松山千春
1985年のアルバム『風の歌がきこえる』からもう一曲。
今にして思うと、この頃の松山千春は、ビッグヒットこそないものの、大人の円熟味を感じさせる佳作を量産していました。
ぜひ、聴いてみてください!
プールサイド / 浜田省吾
1987年発売のミニアルバム『CLUB SURFBOUND』収録のサマーチューン。
結婚後3年目を迎える夫婦を歌った、まさしくアダルトナンバーです。
THE FUSEのメンバーだった江澤宏明のドライなベースラインがクールでナイス。
『CLUB SURFBOUND』では「曳航」もおすすめです。
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1970年代後半から1980年代前半に発売されたアルバムには、AORの強い影響を受けた作品が、ゴロゴロしています。
海外で録音されたアルバムや、外人ミュージシャンが演奏に参加している楽曲なんかも、要注目ですね。
まとめ
ということで、以上、今回は、和製AORの名曲50選をご紹介しました。
できるだけ1980年代のものを中心に、これまであまりAORの観点からは触れられていない作品も、個人的に好きなものは含めています。
この夏は、懐かしくて新しい和製AORを聴きながら、海岸線をドライブしてみませんか?