久しぶりに友部正人でも聴こうかと思ったら、レコードもCDもない。
引越しを繰り返すうちに処分してしまったらしい。
仕方がないので、新しくCDで揃え直すことにした。
友部正人オフィスからサイン入りCDを通信販売で購入
大学生の頃、友部正人が大好きで、レコードですべての作品を持っていた。
流行りの音楽を聴くよりも、時代遅れでも本当に良い音楽を聴きたいと思っていたのだ。
まして、友部さんは、札幌で暮らしたという経歴も持つ(ここが重要)。
なかでも『誰もぼくの絵を描けないだろう』というアルバムが好きだった。
これは、1975年(昭和50年)に発売された4枚目のアルバムだったけれど、一部の歌詞に問題があるということで再発されなかったということで、なかなか入手困難なレコードだった。
CBSソニーに移籍した後の友部正人のレコードは、歌詞に問題がある場合が多くて、とにかく入手困難なものが多かったのだ。
まあ、それだけ、友部正人が歌詞にこだわるミュージシャンだったということなんですが。
で、久しぶりに『誰もぼくの絵を描けないだろう』を買おうと思って、オフィシャルサイトをチェックしてみると、この作品はCDで入手可能だという。
しかも、事務所(友部正人オフィス)から直接購入すると、友部さんのサインも入れてくれるという。
今どき、直販っていうシステムが残っていたのかと感動。
早速、友部正人オフィスにCDを送ってもらうように注文する。
オーダーは郵便振替のみの取り扱いで、ウェブショップはもちろん、電子メールによるオーダーも受け付けていない。
まるで1970年代と変わっていないかのような通信販売のシステムが楽しい。
せっかく直販で買うのだから、友部さんのサインも入れてもらおう。
ライブ会場まで行かなくても、サイン入りのCDを買うことができるなんて、なんて素晴らしいサービスだろう。
郵便局から料金を送金してから数日後、商品は無事に僕の手元へ届いた。
封筒は、心のこもった手書きの宛先で、まるでメルカリで個人と取引しているかのようだった笑
1970年代におけるリアルな青春を歌った「悦子」
久しぶりに聴く『誰もぼくの絵を書けないだろう』は、やっぱり良かった。
ほとんどがアコースティックギター弾き語りなので、友部正人の魅力を、これでもかというくらいに味わうことができる。
まさに、日本のフォークシーンの絶対的な名盤だ。
一曲目のタイトル曲「誰もぼくの絵を書けないだろう」や最後の「あいてるドアから失礼しますよ」なんて、本当の名曲だと思うけれど、「悦子」のような私小説的な作品もいい。
君が苦しくて泣いた時
ぼくは君に全部話してごらんって言った
でも君が本当のことを話し出した時
ぼくは君を遠ざけるようになった
飾らずに自分をさらけ出すかのような歌詞は、心の奥の深いところまで突き刺さってくるかのようだ。
君と暮らしたあの部屋にゃ
もう君もいないし
もちろんぼくもいない
ただぼくと君のふたつのシミが
今もなかよくすわっているような気がする
切なくて文学的な歌詞は、西岸良平の「三丁目の夕日」を思わせる感傷的でロマンチックなものだ。
そして、こんなセンチメンリズムこそが、1970年代におけるリアルな青春だったのではないだろうか。
聴くたびに悲しくなるし、聴くたびに妄想を膨らませてくれる、まさしく名曲中の名曲だ。
<悦子さん>の、その後が気になります。
「♪あ~ また働かなくちゃ、ならないってことさ~」と繰り返す「金もないが悩みもない」もいい。
また働かなくっちゃならないって思うと、仕事へ行くことが本当に憂鬱になってくる笑
だけど、普通のサラリーマンは、働かないと給料がもらえないから、まあ、働くしかないんだけどね。