音楽

山下達郎「高気圧ガール」” 永遠の夏 ” への憧れを歌った青春讃歌

山下達郎「高気圧ガール」。

本作「高気圧ガール」は、1983年(昭和58年)4月に発売されたシングル曲である。

この年、山下達郎は30歳だった。

1983年 全日空リゾートピア沖縄(4/1〜6/30)キャンペーン・イメージソング。

アルバムとしては、1983年(昭和58年)6月に発売された『MELODIES』に収録されている。

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「高気圧ガール」の意味とは?

本作「高気圧ガール」は、山下達郎の代表作の一つであり、J.POPにおける真夏のサウンドトラックとして定着している定番曲でもある。

非常にメジャーな人気曲だが、その歌詞の意味は意外と謎に包まれている。

果たして、「高気圧ガール」とは何を意味しているのだろうか?

「高気圧ガール」は、高気圧を女の子に例えた比喩表現

はじめに、高気圧ガールとは、高気圧を女の子に例えた比喩表現である。

高気圧とは、周囲に比べて気圧の高い所を示す気象用語なので、可視化できるものではない。

高気圧ガールは、あくまでも気象現象を擬人化した表現なのだが、このように気象用語を擬人化した例は多くないだろう。

似たような表現として「雪女」や「雪男」があるが、いずれも伝説の中でビジュアル化された存在であるのに対し、高気圧ガールはビジュアル化することが難しい。

また、「雨女」や「雨男」の表現は、比喩表現というよりは、傾向を現わす言葉として用いられることが多い。

ここに高気圧ガールの特異さと解釈の難しさがある。

歌詞の上での特徴は、随所に多用されている暗喩である。

なめらかな 白い砂は 溜息の照り返し
しなやかな 南風は 舞い上がる 長い髪
2000マイル 飛び越えて 迎えに来たのさ
“Come With Me”
連れて行っておくれ
どこまでも高気圧ガール…

(山下達郎「高気圧ガール」)

「白い砂は 溜息の照り返し」「南風は 舞い上がる 長い髪」「くちづけの 虹をかける」などは、いずれも比喩表現であり、一つ一つの意味を具体的に説明することは難しい。

しかし、それらの比喩を総体としてまとめたときに浮かび上がってくるのが、高気圧ガールという謎の少女の姿である。

ビジュアル化できない高気圧ガールのイメージを読み取るヒントが、そこにある。

というか、そこにしかない。

「長い髪」だけが、ビジュアル化できる唯一の要素なのだ。

なお、厳密に言うと、「ガール(girl)」は未成年の少女の意味だが、高気圧ガールは20歳前後の女性だと思われる。

まあ、30歳の山下達郎を迎えに来たのが女子高生だったというのは、さすがにヤバいよね(笑)

「2000マイル飛び越えて」はミクロネシアあたりから?

「2000マイル飛び越えて 迎えに来た」のは、もちろん高気圧ガールである。

どこから来たのか明らかではないが、「2000マイル飛び越えて」というからには、少なくとも日本国内からではない。

ちなみに、東京〜沖縄間で1200マイル弱(約1900km)。

2000マイルは3000キロ以上になるから、ホノルルまでは行けないけれど、グアムよりは遠くに行けるくらいの感じ。

東京からだと、マニラやパラオあたりが、なんとなく2000マイルラインだろうか。

日本付近では太平洋高気圧が有名だから、高気圧ガールは、ミクロネシアのパラオあたりからやって来たのかもしれない。

終わりなき夏の色を 僕に
いつまでも変わらぬ 愛添えて
2000マイル飛び越えて 僕に囁くのさ
“Come With Me”
連れて行っておくれ
どこまでも高気圧ガール…

(山下達郎「高気圧ガール」)

「Come With Me(私と一緒に来て)」は、高気圧ガールのセリフ。

南太平洋からやって来た高気圧ガールが、「私と一緒に来て、、、」と囁いている。

そして、歌の主人公である<僕>も、「連れて行っておくれ」と高気圧ガールに囁いている。

それが本作「高気圧ガール」という歌の歌詞のストーリー。

「限りない夏の匂い」とか「終わりなき夏の色」などといった永遠の夏のイメージの出典は、やはり、ビーチボーイズのアルバム『Endless Summer(エンドレス・サマー)』なんだろうな。

「終わらない夏」なんていうものは気象学的にあり得ないけれど、青春の日には「夏は永遠だ」と信じたい幻想があるものだ。

たとえ夏が終わっても「心の中の夏に終わりはない」と信じたい。

そういう意味では、本作「高気圧ガール」も、永遠の夏という幻想を追い求めた、青春讃歌ということができるだろう。

なにしろ、「離さないよ君を もう二度と高気圧ガール」は、永遠の夏への憧れをメッセージにしたものなんだから。

高気圧ガールの正体はビジュアル化できないイメージの世界

本作「高気圧ガール」の成功要因の一つは、この歌が具体的な何かを示すことなく、イメージの提示のみに終始しているところだと思う。

「燃えろ、いい女。燃えろ、ナツコ」とか「夏女ソニア」などのように、より具体化された表現は、逆に定番として残りにくい気がする(そのときはヒットしても)。

高気圧ガールはいつの時代も高気圧ガールであり、1000人の心の中には1000通りもの高気圧ガールのイメージがある(あるいは何もない)。

ビジュアル化できない究極のイメージの世界っていうのが、高気圧ガールの正体なんだろうなあ。

さすがだなあと思うのは、この具現化が難しい高気圧ガールという存在を考え出した山下達郎のセンス。

歌詞は苦手だっていうけれど、文学的センスのない人に、この言葉は創造できないでしょう?

すごいよ、ほんと。

曲名:高気圧ガール
歌手:山下達郎
作詞:山下達郎
作曲:山下達郎
編曲:山下達郎
発売:1983年4月23日

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