長渕剛「夏の恋人」。
本作「夏の恋人」は、1981年(昭和56年)にリリースされたシングル曲である。
この年、長渕剛は25歳だった。
オリジナル・アルバムには未収録だが、『SINGLES Vol.1 (1978〜1982)』等のベストアルバムに収録されている。
純情童貞男子のナンパデビュー(失敗編)
初期の長渕剛というと、フォークかチンピラかの二択みたいに思えるけれど、こんなに爽やかなサマーポップも歌っていたのだ。
長い黒髪を 風になびかせている
浜辺に君 小麦色
遠くから僕は 視線をなげかけている
サーフボード 陰にかくれて
(長渕剛「夏の恋人」)
なにしろ、真夏のビーチである。
サーフボードである。
長渕剛がサーフミュージック?
似合わねー(笑)。
なんたってタイトルが「夏の恋人」だかんね。
全然似合わねー。
そう、全然似合わない。
長渕剛に「夏の恋人」は、全然似合わないのだ。
全然、似合わないんだけど、当時中学2年生だった僕は、この爽やかな長渕剛が大好きだった。
なにしろ、リアルで中二病だったからね。
中二病の現役時代。
大体、ビーチで見つけた良い女に声かけられなくてグズグズしてるっていうところがいい。
「燃えろ、いい女〜!」とか、指差し確認なんかできないよ。
「君は1000%!」とか、夜道で待ち伏せなんかできないよ。
純情童貞男子のナンパデビュー(失敗編)みたいな歌。
いいね。
激しく共感できる(笑)
こういう歌を、もっと歌ってくれても良かったのに。
長渕剛的には、本道ではなかったんだろうなあ。
チンピラとサーフミュージック、似合わないもんね。
目指す路線が違い過ぎるから。
女々しい割に、やたら強がり
結局、この歌の男の子は、最後まで女の子に声をかけることもできない。
言葉もかわさずに 実るはずもないけど
ぬれたビーチサンダル 想いをつのらせ
ときめくこの胸を うちあけられなくて
強がりの口笛 君にきこえるかい
(長渕剛「夏の恋人」)
でも、このモジモジした長渕剛は、ある意味ですごく長渕剛らしい気もする。
「強がりの口笛吹いて、君に聞こえるかい?」なんて心の中で投げかけたりするあたり、いかにも長渕剛である。
女々しい割に、やたら強がり。
こんな虚勢を張ってるところからこそ、長渕剛の人間らしさが伝わってくるのだ。
三流チンピラとしてイキがるようになってからも、長渕剛の基本的な部分は変わっていないんじゃないかな。
よく知らんけど。
サウンドは、AOR寄りのニューミュージック。
でも、シティポップにまで振り切れていない。
この辺もやっぱり長渕剛だよね。
ちなみに、この曲は、作詞作曲とも長渕剛・藤岡孝章・山梨鐐平による共作となっている。
藤岡孝章は「ブスにもブスの生き方がある」のまりちゃんズのメンバーだった人。
山梨鐐平は、キュティー鈴木「大人になりたい」(懐かしい)など、ソングライティングで有名なミュージシャンらしい。
アレンジャーの瀬尾一三は、中島みゆきの作品で有名。
もう一度、あの頃みたいに爽やかなサマーポップを歌ってくれないものか。
曲名:長渕剛
歌手:夏の恋人
作詞:長渕剛・藤岡孝章・山梨鐐平
作曲:長渕剛・藤岡孝章・山梨鐐平
編曲:瀬尾一三
発売:1981年5月5日