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大塚博堂「春は横顔」都会的で爽やかだった1981年の日本製AORで謎にハラハラ悶々しよう。

大塚博堂「春は横顔」都会的で爽やかだった1981年の日本製AORで謎にハラハラ悶々しよう。

今回の青春ベストバイは、大塚博堂の「春は横顔」です。

毎年、春が近くなると、このレコードを聴いて、1980年代を懐かしく思い出しています。

爽やかな日本のAORが大好きなんですよね。

爽やかで都会的なサウンドが魅力的だった日本の80年代AOR

大塚博堂といえば「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」だけれど、僕の中の大塚博堂は、いつだって「春は横顔」だ。

1981年(昭和56年)2月に発売された「春は横顔」は、化粧品のCMソングで、僕はテレビコマーシャルを観て、大塚博堂というミュージシャンを知った。

そのとき、僕は中学1年生で、4月から2年生になろうという、そんな1981年の春だった。

今「春は横顔」を聴くと、1980年6月に発売された斉藤哲夫の「いまのキミはピカピカに光って」と、かなり雰囲気が似ているような気がする。

J.POPもAORの全盛時代で、こういう爽やかで都会的なサウンドが、社会的にも歓迎されていたのだろう。

五十嵐浩晃の「ペガサスの朝」とか、滝ともはる&堀内孝雄の「南回帰線」とか、みんなこの時代の爽やかなジャパニーズAORだ(と僕は考えている)。

そして、そんな時代に中学生だった僕らの世代は、感受性の高い思春期に良質の音楽を聴いて育った世代ということになるのかもしれない。

春が近くなると、こんな日本のAORを聴きたくなるのも、「春は横顔」の影響が大きいのだろうと、僕は考えている。

阿久悠の意味不明の歌詞と、大塚博堂の美しいメロディ

もっとも、「いまのキミはピカピカに光って」と同じように、「春は横顔」の歌詞は、「
はらはら悶々」とか、とりとめのない内容でしかない。

またしても季節は春になり
華やかな舞台をつくり上げ
大人しい女でいたひとを
きらめきのスターにしてしまう

ぼくは只のファンに戻って
群れから見つめているしかない

春は横顔 読みきれない
謎に悶々 はらはら また悶々
春は横顔 読みきれない
謎に悶々 はらはら また悶々

大塚博堂「春は横顔」

とにかく、ポイントはサビの「謎に悶々、はらはら、また悶々」で、阿久悠の書いた意味不明の歌詞に、美しいメロディを乗せた大塚博堂という人は、本当に天才だったんじゃないかと思う。

「♪春は横顔、読みきれない~」から始まるサビの部分は、CMで聴いて一回で覚えてしまったほどだ。

かっこいいミュージシャンが登場してきたと思っていたら、大塚博堂はその年の5月、あっという間に死んでしまった。

「♪春は横顔~」と口ずさむ季節が終わったのと、ほぼ同時に。

早逝のシンガーソングライターは伝説の存在となったが、歴史に残るのは「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」というデビュー曲の方だったらしい。

あれから40年。

それでも、僕は春が近づくたびに、大塚博堂の「春は横顔」を聴きながら、都会的で爽やかだった1981年の春を思い出している。

この曲、2001年に発売されたベストアルバム『ベストセレクション・博堂は風になった』で、ようやくCD化された。

早くCDを買おうと思いながら、それから既に20年の時が経ってしまったらしい。

なまじレコードを持っていると、CDを買うのが億劫になることってあるんだよね。

ということで、今回のベストバイは、大塚博堂のシングルレコード「春は横顔」。

CMソングということで、それなりにヒットしたらしくて、中古市場で簡単に見つけることができる。

ブックオフで200円かもしれないけれど、少年の日の思い出は、価格で価値が決まるわけじゃない。

今年も爽やかなサウンドで、80年代初頭の春を楽しもう。

ABOUT ME
みづほ
バブル世代の文化系ビジネスマン。札幌を拠点に、チープ&レトロなカルチャーライフを満喫しています。