ダ・ヴィンチ「カワイイ文化系女子としたい」。
本作「カワイイ文化系女子としたい」は、『ダ・ヴィンチ』2006年(平成18年)4月号の特集記事である。
「カワイイ文化系女子」代表が堀北真希だった
『ダ・ヴィンチ』の表紙を見て驚いた。
「カワイイ文化系女子としたい」と書かれていて、「したい」の後にはハートマークまで付いている。
なんだ、「カワイイ文化系女子としたい」って?
エロい話なのか?
2006年(平成18年)は、『CanCam』の蛯原友里と押切もえが、「カリスマモデル」として大いに注目を集めた時代だった。
テレビドラマは『のだめカンタービレ』、映画は『フラガール』。
ヒット曲はスガシカオの「午後のパレード」。
それが2006年(平成18年)という時代。
いや、それにしても、ひどすぎるだろ、「カワイイ文化系女子としたい」って。
明らかに文化系女子好き男子を狙った蟻地獄的企画。
文化系女子好き男子なめんなよって思いながら、とりあえず買った(笑)
文化系女子とは何なのか、きちんと知りたかったから、というのが、その理由。
もちろん、内容は全然たいしたことなかった。
学術的な考察も、専門家による分析もない。
まあ、ただの煽りだったんだよなあ。
とは言え、それでも買ってしまうところが、文化系女子好き男子の浅はかなところ。
だって「文化系女子はコトバでイク」だよ?
「文化系女子はときどき死にたくなる」だよ?
たとえば、ひとりの部屋で静かに本を読んでいる、たとえば、窓から夜空をながめ空想にふけっている、そんな文化系女子の薫りを漂わせる、堀北真希さん。堀北さん、そして文化系女子の過ごす夜をイメージして、豊島ミホさんがショートストーリーを書き下ろしてくれました。(ダ・ヴィンチ「カワイイ文化系女子のしたい」)
文化系女子代表として堀北真希が登場。
堀北真希だよ?
どうなんだろ、この人選は?
文化系女子=堀北真希?
いや、待て。
「カワイイ文化系女子」のイメージ。
それが、堀北真希だったっていうことなんだろうな。
ダ・ヴィンチ編集部的に言って。
文化系女子とは何なのか?という問題
そもそも「文化系女子」の定義ってなんだ?
生粋の文化系女子として登場するのは、ミュージシャン・未映子。
「文化系女子は生き過ぎなんですよ」と、彼女は言う。
<未映子>文化系女子って要するに自意識のバケモンやと思うんですよ。自意識が過剰。過剰すぎる。それこそ森羅万象、何にでも自分が飛び火するから自由になれないんです。(ダ・ヴィンチ「カワイイ文化系女子としたい」)
文化系女子とは、自意識過剰のバケモンのこと。
何だか分かるようで分からない。
文化系女子って、そんなに難解な存在だったのかな。
穂村弘と本谷有希子の対談も興味深い。
なにしろ、歌人・穂村弘は「数々の文化系女子を言葉でイカせてきた」文化系女子キラー(笑うな、これ)。
小説家の本谷有希子は「妄想型文化系女子」である。
<穂村弘>僕のなかの文化系女子というのは、「主体的な男性の夢破れたときに傍らにいて一緒に手首を切る係」をやることに違和感を強く持つタイプ。けれども自分がその男の役をやろうとは到底思えない人なんです。男性型の主体性も、傍らにいる役も拒否する。(ダ・ヴィンチ「カワイイ文化系女子としたい」)
さすが、穂村弘、よく分からないよ(笑)
「言葉でイク」とか「言葉でイカせる」みたいな表現に、そもそも無理があるのではないだろうか。
ちなみに、2006年(平成18年)当時、穂村弘は44歳。
2005年(平成17年)に『本当はちがうんだ日記 』(集英社)をヒットさせて、ノリにノッている時期だった。
おもしろかったな、この頃の穂村弘。
でも、文化系女子が何なのかという問題については、特集を全部読み終えても、結局ほとんど理解することができなかった。
よほど特異の存在だったらしい、文化系女子っていうやつは。
その後も、文化系女子に関する読み物は、いろいろあったけれど、ここまでインパクトを受けたキャッチフレーズは、まあ、なかったよね。
カワイイ文化系女子としたい──。
文化系女子を性的にとらえる時点で、何か違ったのかもしれない。
性的な視点からくくることが難しいもの。
それが「文化系女子」という存在なのだとしたら。
書名:ダ・ヴィンチ
発行:2006年4月